Project​

プロジェクト​

開発者インタビュー​

準天頂衛星を使用して高精度化を実現​三菱電機独自の技術が
自動運転の未来を変える

自動運転の実現へ向け、正確な自車位置情報を検知する高精度なロケータが求められている。そこで三菱電機は、準天頂衛星からの補強信号を用いて高精度化を実現したロケータ(HDL: high-definition locator)を開発した。加えて、本来なら莫大なサイズとなる高精度地図データを、独自の圧縮技術でコンパクトなものとすることに成功した。これらを実現するに至ったポイントを開発メンバーが語った。

  • 江口 貴明
    自動車機器事業本部
    三田製作所 カーマルチメディアシステム部
    江口 貴明えぐち たかはる

    HDL開発責任者​。
    1993年よりカーマルチメディア製品設計に従事。​2019年からカーマルチメディアシステム部長に就任しHDLの技術開発を推進。​​

  • 小高 康志
    自動車機器事業本部
    三田製作所 カーマルチメディアシステム部 技術第一グループ
    小高 康志こだか やすし

    HDLの地図データベースの設計開発担当​。
    2005年よりカーナビゲーションの地図データ開発を担当。2014年よりHDL向け高精度地図データの開発に従事。​地図サプライヤとも連携し高精度地図データの開発や独自の圧縮技術を用いた地図フォーマットを開発。​​

  • 藤井 将智
    自動車機器事業本部
    三田製作所 カーマルチメディアシステム部 技術第一グループ
    藤井 将智ふじい まさとし

    HDL位置推定機能設計開発リーダー。​
    2000年よりカーナビゲーションの位置推定機能開発を担当。2014年よりHDL向け高精度位置推定機能の開発に従事。​高精度地図データとの照合機能やカメラ連携機能のアルゴリズムを開発。​​

  • 石上 忠富
    情報技術総合研究所地区
    情報技術総合研究所 /
    三田製作所 カーマルチメディアシステム部 先行開発グループ
    石上 忠富いしがみ ただとみ

    HDL衛星測位機能設計開発リーダー。
    1987年よりカーナビゲーションの位置推定機能開発を担当。2014年よりHDL向け高精度位置推定機能の開発に従事。​GNSS高精度測位アルゴリズム開発、さらに自律航法を連携させた複合測位アルゴリズムを開発。

※所属・役割は、2021年3月時点の情報です

独自の測位アルゴリズムにより、高精度な状態を高い確率で実現。
設置角度を問わないため、
自由な配置設計が可能に。

藤井従来のカーナビで実現していた測位精度は、およそ10mでした。それを高度な測位技術と準天頂衛星からの測位補強信号を用いることで、平均25cm程度にまで向上させています。さらに、独自の測位アルゴリズムによって、95%以上の確率で誤差50cm以下を実現しています。また、従来のカーナビでは制約の多かった設置角度も、高精度測位を用いた独自の姿勢検知技術によって、どんな角度にも柔軟に対応できるようになったのもポイントです。この技術により、お客様は、機器の配置設計をこれまでと比較して容易に行うことができます。 ※準天頂衛星システムは内閣府のプロジェクトで、三菱電機が衛星システムの設計・製造を担当しています。

測位精度/精度確率​

設置姿勢検知​​

地図の精度は“道路レベル”から
“レーンレベル”へ向上​
自動運転にも活用できる高精細な地図データへと大幅に進化

小高従来、カーナビで使用していた地図では、道路に複数の車線があってもデータは1本で表現していました。それを高精度地図では、測量技術を適用することにより、誤差数十cm以下の精度で車線一本一本の形状まで細かくデータ化します。これにより、例えば道路の分岐の始まりから終わりまで、詳細に表現できるようになります。高精度な地図と測位を組み合わせることで、高精度地図を高度な自動運転において使用する判断材料の一つとして、活用できるようにしました。その結果、自動車専用道路では、カーブや料金所に近づくと速度をコントロールできるようになります。また、走行車線と区画線の情報を基に車線移動のアシストも可能になります。

HDLの特徴

地図の高精度化に伴い、地図を自動運転に活用可能​

自車位置推定機能

地図データ出力機能​​

莫大なサイズの高精度地図データ
曲線の表現を関数化することで縮小

小高地図データはもともと、測量で取得されたレーザー点群データを基にして作られた、高精細なものです。これをそのまま搭載した場合で試算すると、地図データは日本全国の高速道路および自動車専用道路だけでも約6GBという大きさになり、限られたCPUやメモリリソースで十分な性能を出すことが困難でした。さらに、限られた通信帯域で地図の更新を行うにはサイズが大きすぎるという課題がありました。そこで当社では、カーブの曲線の表現を関数化する手法により、曲線を構成する点の数を削減しています。もちろん、元の地図との解離は発生しますが、元の地図でも誤差は含まれていますので、その精度の範囲内で間引くことで実用上は問題ないレベルとしています。その結果、高精度地図データのサイズを約40MBにまで小さくしています。

高精度地図データ

衛星のマルチパスに対応するため​
良質な信号だけを選べる独自アルゴリズムを採用​

石上準天頂衛星の補強情報を利用することによってGNSS測位の精度向上は期待できますが、電波という性質上、建物などに反射して電波の到着が遅れるマルチパスという現象を避けられません。特に受信環境が絶えず変化するクルマにおいては、マルチパスを受信した状況では補強情報を利用しても正確に測位することは難しく、cm級の精度どころか、数mの誤差を生むこともあるのです。そこで個々の信号をチェックし、良質な信号だけを選べるアルゴリズムを開発しました。また、どうしても精度が低下したり、誤差が大きいと判断される場合には、高度運転支援での利用を控える事ができるように考慮し、安全性を確保しています。

藤井マルチパスにより衛星測位の状況が不安定な場合は、自律航法から算出された情報とGNSS測位を複合して位置精度を確保します。この後、高精度地図に対して照合を行っています。路面状況が把握できない雪上などでも正確に走行レーンを検知することが可能なのは、こうした技術の掛け合わせによるものであり、当社HDLの大きな特徴です。

自車位置を求め、前方地図データを
AD/ADAS活用するための専用ユニット

測位と外部センサーなどを
組み合わせた複合測位で
更なる精度アップを目指す​​

江口当社では、高速道路において、HDL単独での測位による1.5m級の精度から、準天頂衛星とその補強情報を用いた0.5m級の精度へと高精度化を実現してきました。今後、カメラなどのセンサーや5Gによる路車間通信等の活用により、一般道においても0.5mの精度を実現する計画です。

準天頂衛星のcm級補強信号を活用して
50cm精度を実現

HDLが自動運転に必要なセンサーへ​
グローバルで進む高精度地図活用に高い技術力で
対応していく​

江口こうした取り組みは、国内外のいろいろな会社から引き合いをいただいているところです。自動運転レベル2以上に向け、各社ともHDLをセンサーの一つとして検討していただく流れとなっています。お客様のご要望に応えるため、当社としては、国内外の多くの地図会社にも対応できる高い技術力を有しています。

小高欧米でもcm級の精度を実現するための補強情報を配信するサービスが存在しており、その情報を使用することで、高精度測位を実現できます。高精度地図についても、海外地図サプライヤーが高速道路を中心に整備を進めてきました。それらを利用することにより、グローバルにHDLを活用することが可能です。

MaaSへの展開​
様々な社会課題や業界ニーズに対して、高精度位置情報を活用したデータサービスの提供を検討中​​

江口自治体様や道路管理事業者様がインフラ維持・管理を効率化・高度化できるようなデータを提供することを目指し、道路の損傷や劣化等の画像解析結果に高精度位置情報を付加する取り組みを行っています。​
これはあくまで一つの事例ですが、こういった取り組みを通じ、HDLなどの各種車載機器で収集したビッグデータをクラウド上で分析・加工し、幅広い業界に提供することを目的とした「車両情報データサービス」のプラットフォームを提供していきたいと考えています。​
MaaSへの活用も見据えたプラットフォームを提供することで、社会全体の安全やエコ、業務効率化等に寄与するサービスを実現していきたいです。

車両情報データサービスの
プラットフォーム構築​

事例:道路劣化情報サービス​

2021年3月には自動運転レベル3を実現するクルマが登場しました。このクルマにも高精度なロケータが搭載されています。高精度測位の重要性は高まっているものの、未だ課題も多く残っています、これに対し、これまで積み重ねてきた測位技術とアルゴリズム、高精度地図を無駄なく使用する独自の圧縮技術を駆使し三菱電機として解決に向けて取り組んだのがHDLです。自動運転だけではなく、車両情報データサービスのプラットフォームを提供し、様々な社会問題や業界ニーズを解決していきます。

​​三菱電機HDLの注目ポイント​​​​

  • 独自の測位アルゴリズムにより、高い確率で高精度な位置精度を実現​​
  • マルチパスへの対応と自律航法との組み合わせにより、様々な状況下でも位置精度を確保​
  • データ圧縮技術を活用によりデータサイズを縮小し、高精度地図を実用レベルに
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