倉庫や工場内におけるIoT化の動きが加速している。従来は単独運転していた現場の末端装置においても、近年は急速にネットワークへの接続要求が高まっている。そうした装置の制御に用いられる三菱電機のMELSEC iQ-Fシリーズは、このような動きに対応し大幅に機能強化した。
現場設備のネットワーク化による
全体最適へ
物流倉庫や工場などの施設を全体として管理したい、トータルな最適化を目指したい――。IoTの導入を検討する企業が増える中で、そのようなニーズが高まっている。例えば、工場内で部品などを運ぶAGV(無人搬送車)である。
「これまでAGVは単独運転が主流でしたが、最近はネットワークにつないで情報を共有し、工場全体のモノの流れの最適化を図る企業が増えています。物流倉庫では、各種設備を統合的に管理して、稼働状況を監視しつつメンテナンスの質向上や効率化を目指す取り組みも目立ちます」と語るのは、三菱電機の磯部倫明。いずれも、IoT活用の本格化を示す動きと言える。
三菱電機は「e-F@ctory」というコンセプトのもと、2003年より多くの企業に対してFAとITを活用したものづくりの最適化を提案してきた。そこには、制御機器やメカトロニクス製品群をはじめ多様な製品群が含まれ、倉庫や工場のスマート化を牽引する役割を果たしてきた。
スマート化に欠かせない、頭脳として装置や設備の制御を担うのがシーケンサと呼ばれる機器であり、その普及モデルとして三菱電機から販売されているのがMELSEC iQ-Fシリーズである。低価格帯で「コンパクトで簡単に、すぐに使える」という特徴を持つ同シリーズが、2018年8月に「Reborn」と題して生まれ変わり、現場のスマート化実現を支援する機能を大幅に強化したのだ。
三菱電機のマイクロシーケンサは発売以来全世界で累計販売台数1500万台を達成しており、その実績が示すとおり用途も様々だ。倉庫業務への今後の適用例として、磯部氏は次のような例を示す。
「ECの成長に伴い増えている大型倉庫では、少人数で広いエリアを管理しています。そのためには、多様な機器の動きなどを効率よく監視する仕組みが必要です。新しいMELSEC iQ-FシリーズのWebサーバ機能を活用すれば、スマホやタブレットなどを使ってWebブラウザからリモートで現状を把握できます。問題が発生すれば、すぐに現場に駆け付け、対処することが可能になったのです」
例えば、AGVの運行では、稼働ログ(距離、ルート、搬送重量、稼働率等)を収集し、上位システムに送信、分析することで工場全体の最適化につながる。MELSEC iQ-Fと上位システムの連携で、こうした革新が多様な現場で起ころうとしている。
MELSEC iQ-Fシリーズはデータが生成される生産現場に置かれる制御機器だが、e-F@ctoryはその上位に位置するエッジ層、あるいは工場全体を統括するソリューションまでをカバーするコンセプトである。上位層から生産現場の末端まで幅広い製品群を用意していることも、三菱電機の大きな強みである。
※この記事は日経ビジネスオンラインSPECIALからの2次転載です。