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製造現場の“リアル”がひと目で見える!(前編)

シナジーコラム 「監視カメラ×FA」前編シナジーコラム 「監視カメラ×FA」前編

製造業ではICT化やAI導入などによる省力化が進んでいるが、大規模な投資には限界がある。そこで注目されるのが既存の設備を活用した省力化だ。
ソフトウェア「ミランダVR」は、多くの工場にすでに導入されている監視カメラとシーケンサを連携させ、映像とデータを同期して記録・再生できるようにする。これにより省力化だけでなくトラブル発生時の原因究明、品質管理や生産効率アップなど、多くの成果をあげることができる。「ミランダVR」は一般的なパソコンでの操作が可能で、多くの機器や監視カメラに対応しており、環境を選ばず、使い勝手がいい点も高評価を得ている。

INDEX

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  • 製造現場の“リアル”がひと目で見える!「ミランダVR」の実力とは?
  • 人手不足を解消する製造現場の“次の一手”
  • 2つのデータを“同期”して見える化
  • 状況がひと目でわかる!「ミランダVR」の実力
  • さまざまな環境に対応できるのも魅力
三菱電機コントロールソフトウェア株式会社
トータルソリューション事業所 営業部
林孝士さん

山口県生まれ。1988年の入社以来、鉄鋼プラントの制御システムエンジニアリングと制御コントローラ開発に従事。「新人の頃、搬送設備の調整方法がわからず、機械メーカーの技術者に『そんなことも知らずによく現場にくるな』とあきれられながらも親切に教えてもらい、無事に立ち上げられた」という経験がある。2004年より営業部門で各種製造業向けのFAシステムや、三菱電機製シーケンサ「MELSEC」対応のパッケージソフトウェアの販売を担当する。趣味のゴルフでは練習や道具探しに励むが、今ひとつ上達しないのが悩み。

製造現場の“リアル”がひと目で見える!
「ミランダVR」の実力とは?

人手不足を解消する製造現場の“次の一手”

景気がゆるやかに回復するにつれて、雇用情勢は改善傾向にある。内閣府の発表によると、
製造業では4割以上の企業で人手が不足している(グラフ1)。

グラフ1:人手が不足している企業の割合(2017年)
グラフ出典:内閣府「人手不足感の高まりについて」(平成30年3月発表)より

とはいえこのグラフを見ると、製造業の人手不足はもっとも深刻というほどではないようだ。その理由のひとつに考えられるのが「省力化投資」。いうまでもなく、製造業は機械化を主とする省力化投資と相性のよい分野だ。すでに省力化投資を行った(一部、今後行う考えの企業を含む)企業の割合は、ほかの業種と比べてとくに高い(グラフ2)。

グラフ2:人手不足に対応するための取り組み(2017年)より、省力化投資を行った(あるいは省力化に取り組む考えの)企業の割合
出典:労働政策研究・研修機構「人材(人手)不足の現状等に関する調査より」(2016年)

しかし、ロボットやAIの導入をはじめとする省力化には限界もあり、大規模になればそれだけコストがふくらむ。そこで期待されるのが、「既存の設備を活用した省力化」だ。いくつかの生産現場では、すでにこうした取り組みを実行中。人手不足解消ばかりか、品質管理や生産効率アップなど、期待以上の成果を上げつつあるという。

今回は、このような省力化を実現するソフトウェア「Miranda-VR新しいウインドウが開きます(以下、ミランダVR新しいウインドウが開きます )」について、開発元である三菱電機コントロールソフトウェア株式会社(MCR)に取材した。

2つのデータを“同期”して見える化

工場には実際にモノづくりをする機械のほかに、それぞれの機械をプログラムどおりに制御し、動かすための「シーケンサ(※1)」という機械がある。モノづくりの機械がサッカーのプレイヤーだとしたら、シーケンサは監督の指示通りにプレイヤーを動かすチームの司令塔といったところだ。

林:機械はいつも正確に動くと思われがちですが、実はそうでもありません。工場では多くの機械が同時に稼働し、製造プロセスも非常に複雑ですから、小さなトラブルは日常茶飯事です。

と、MCRの林孝士さんは話す。

三菱電機コントロールソフトウェア株式会社 トータルソリューション事業所 営業部長 林孝士さん
三菱電機コントロールソフトウェア株式会社 トータルソリューション事業所
営業部長 林孝士さん

トラブルが発生するとアラームが出る。それを受けて担当者はまず応急処置を行う。その後、過去にさかのぼってトラブル発生の瞬間のデータを探し、原因を解明するという作業に多大な時間と手間がかかっていた。

この作業を一気に効率化したのが、ソフトウェア「Miranda-VR新しいウインドウが開きます 」だ。

ミランダVR新しいウインドウが開きます

林:工場では、モノが動くとスイッチやセンサーが反応して信号を発します。この信号をキャッチして情報処理し、次の製造プロセスに進めるのがシーケンサの役割です。『ミランダ』とはシーケンサのデータ収集ソフトウェアで、『ミランダVR新しいウインドウが開きます 』は、それと同時に工場内に設置された監視カメラ(=ネットワークカメラ)からも映像データを引っ張ってくる。そして、2種類のデータ連携して表示することにより、トラブル発生時の状況を、映像とシーケンサデータで同時に確認できるため、スムーズに原因究明ができるのです。
※1 シーケンサは三菱電機の呼称。一般には「PLC/プログラマブル・ロジック・コントローラー」などと呼ばれる。

状況がひと目でわかる!
「ミランダVR」の実力

シーケンサと監視カメラを連携させる。その意義が体感できるようにと、林さんは会議室に「ミランダVR新しいウインドウが開きます 」を用意してくれた。

監視カメラを会議室の奥に設置
実際に工場でも使われる監視カメラを会議室の奥に設置。「ミランダVR新しいウインドウが開きます 」を搭載したパソコンから、監視カメラの方向を変えたり、ズームしたりといった操作もできる。左のカメラの下にある録画・配信サーバー「ネカ録*新しいウインドウが開きます 」はカメラの映像を記録しつつ、「ミランダVR新しいウインドウが開きます」に配信する。
ネカ録新しいウインドウが開きます は、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社の登録商標です。
監視カメラが林さんの背中越しに撮影した会議室の様子
監視カメラが林さんの背中越しに撮影した会議室の様子。
「ミランダVR」と接続したモニターの画像
ミランダVR新しいウインドウが開きます 」と接続したモニターの画像。左側には監視カメラの映像が、右側にはシーケンサのデータがリアルタイムで表示される。

映像の解像度はかなり高く、モニターには会議室の様子がはっきり映し出されている。グラフもシンプルで見やすい。私たちが入室した時間をダブルクリックしたところ、すぐにそのときの様子が映し出された。

林:工場には以前から監視カメラが入っていますし、データ収集をするための装置もありました。単独で働いていた両者のデータを重ね合わせて見せるのが『ミランダVR新しいウインドウが開きます』の特長です。

ちなみに「ミランダ」という名は、天王星の第5衛星ミランダの名をとって開発メンバーがつけたもの。天王星の衛星の名はすべて戯曲の登場人物からとられていて、ミランダはシェイクスピアの戯曲『テンペスト』の主人公の娘。星と文学作品にちなむとは、かなりロマンティックな名前だ。

林:星の名前は多くの製品に使われていて、いい名前を探すのに苦労したようです。ミランダという響きがきれいですよね。一応、『Manufacturing Information Recording AND Analysis/製造情報記録分析』の頭文字でもありまして、硬い意味も持っているのですが(笑)

さまざまな環境に対応できるのも魅力

「ミランダ」シリーズが発売されたのは2006年。その第4弾となる『ミランダVR新しいウインドウが開きます 』がデビューしたのは2012年だが、2017年度には出荷パッケージ数は累計1000本を突破し、過去最高売上を記録した。すでに製鉄、自動車、電子機器、製紙、衣料、食品など、幅広い業種の製造現場で「ミランダVR新しいウインドウが開きます 」が稼働している。

林:人気の理由のひとつは汎用性の高さにあると考えています。『ミランダ』シリーズをはじめとする弊社の製品はマイクロソフト社の標準的なOSに対応しているため、産業用のコンピューターではなく、一般的なパソコンで運用できます。また、ほとんどの機種の監視カメラやPLCと接続できます。

製造業には海外に生産拠点をもつ企業も多いが、昨今の人手不足のために技術者や熟練工を海外に派遣すると、国内工場が立ち行かなくなるという問題に悩まされていた。しかし「ミランダVR新しいウインドウが開きます」を活用すれば、海外工場のデータを日本で解析できるため、海外に派遣する人数や期間を削減できる。

林:映像だけ、データだけ見ていてもわからないことはたくさんあります。映像とデータ相互に重なり合うことでシナジーが生まれ、新たなソリューションとして提案できるのです。

市原淳子の写真
取材・文/市原淳子
雑誌の編集者・記者を経て独立。食やヘルスケア、医療・介護から最前線のビジネスフィールドまで幅広いジャンルにわたり、Webメディア、雑誌、新聞、また単行本の企画・構成などを手がける。企業人や職人、アーティストへのインタビュー多数。発信者と読者をつなぐ、わかりやすくて面白いメディア作りの達人。
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