『沈黙‐サイレンス‐』
試写会に行ってきたのは…
編集部員 W(男性)
映画を見に行く時は人から勧められた作品を見に行くことが多いです。
一人よりも友人と一緒に見に行くようにしているので映画の内容と共にその友人の事を覚えています。
昔は、メッセージ性の強い映画ばかりでしたが、最近は流行りものを見に行っています。
編集部員 O(女性)
見逃しを防ぐため、映画はなるべく公開日、もしくは翌日には観に行きたい派。一番観たいときに、観に行くのがやっぱり盛り上がると思います。もちろん、映画の後のお茶も楽しみの1つです。
O今回の試写会レポートは、1月21日(土)より公開中のマーティン・スコセッシ監督作品『沈黙‐サイレンス‐』です。
W原作は遠藤周作の『沈黙』ですね。17世紀、江戸時代初期の日本の史実に基いて創作された小説で、“戦後日本文学の代表作”ともいわれ、海外でも高い評価を得ています。
O『沈黙』は私も読みました。キリシタン弾圧下の長崎を舞台にしたこの小説を「ディパーテッド」「タクシードライバー」で知られる巨匠マーティン・スコセッシ監督がどのように描くのか楽しみです。
17世紀、イエズス会の高名な神学者、クリストヴァン・フェレイラが、キリシタン弾圧によって棄教したとの知らせが入る。その知らせを受けた若き宣教師のロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)とガルペは、真相を確かめるため日本を目指す。2人は旅の途中のマカオで、キチジロー(窪塚洋介)という日本人と出会い、長崎へと導かれ、隠れキリシタンたちに歓迎されるが、やがて存在が長崎奉行所へ知られてしまい追われてしまう―。
O3時間近い大作でしたが、最後まで長さを感じませんでした。Wさんはいかがでしたか?
Wやっぱりマーティン・スコセッシ監督はすごいですよね。細かいカットの連続でめまぐるしく場面のかわっていく昨今の映画とは違って、物語の描き方はとても静か。ですが、非常に力強くて圧倒されました。
Oはい、久しぶりに落ち着いて重厚なテーマの映画を観た感じがします。
W 今回、外国人の監督が江戸時代初期の日本を描くということだったので、なんちゃってニッポンみたいになってしまわないか不安でしたが、当時の日本の風景や農民の生活など、ある意味日本人が作るよりリアリティがあるように思いました。
Oそうですね。スコセッシゆかりのスタッフによる徹底したリサーチに加え、時代考証や美術では日本人チームも参加して実現したのだとか。冒頭、3人の司祭が教会の石畳を整然と歩くのを俯瞰したシーンから一転して、舞台が日本へ移ると波や草むら、雨、ぬかるみなど、時に荒々しく美しい日本の自然が迫力ある映像美で描かれていましたね。
W主演の人気若手俳優アンドリュー・ガーフィールドや名優リーアム・ニーソンのほか、日本の俳優陣も非常に丁寧な演技で作品に一層の深みをもたらしていました。窪塚洋介、浅野忠信をはじめ、各世代の実力者が出演していますが特にイッセー尾形は、怪演でした。
Oはい、口調は穏やかだけど、狡猾でしたたかでほんのわずかにユーモアさえ感じさせる井上筑後守のキャラクターがぴったりはまってました。私は、窪塚洋介さんの演ずるキチジローが良かったと思います。
W理想に燃え、正しいキリスト教徒として信仰を守ろうとする宣教者ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)と対照的でしたね。
O貧しさと厳しい弾圧の下で必死に信仰を守り、殉教する人たちもいるのに、キチジローは何回も棄教して、そのたびに告解でゆるしを乞う姿はなんだかとても弱い人間に見えます。でも、厳しい時代で、奇跡もおきないし、一体、どうすればいいというのか‥。彼の「弱い者の生きる場はないのか。」という叫びにも似た問いかけは作品のひとつのテーマですね。
Wそう、そしてロドリゴも、自分が棄教しない限り拷問される人たちを目の当たりにして、激しく葛藤し、究極の選択をせまられる。日本人を救うつもりできたのに、自分たちが信仰を広めることでかえって弾圧に苦しむ人々がいる現実は耐え難いよね。宗教とは本来人々にとってどうあるべきなのかあらためて考えさせられました。
O人間にとって、何がいちばん大切なのか、強いことなのか、正しいことなのか、それとも‥と観た後、色々と思いを巡らせました。歴史は正しいもの成功したものが残していく記録ですが、その外で苦しみながらも善くあろうとした人たちを描き、救い出すのって映画や小説だからこそなし得ることかもしれませんね。
Wスコセッシ監督の信念を感じる映画でしたね。ちょっとつらいシーンもあるけれど、皆さんにも、ぜひ映画館で観ていただきたいなと思います。
次回もお楽しみに!