ごく普通の映画好き編集部員による試写会レポート

第38回
『花戦さ』

試写会に行ってきたのは…

編集部員 Y(男性)

歴史モノの映画は割りと好きです。知られていない人物やいつもは敵役になる人物の視点で描かれていると、一般的な史実と異なる見方もあるのかと驚かされます。

編集部員 S(女性)

映画やドラマを観ると、そのロケ地が気になり、行ってみたくなります。この映画は、風情ある町並みが多く残る京都が舞台なだけに、興味をそそられます。

S今回の試写会レポートは6月3日(土)より公開の『花戦さ』です。

Y戦国時代を描いた作品は、数多くありますが、華道に焦点を当てた映画は珍しいですね。

S華道という日本の伝統的文化が、戦国時代を背景にどのように描かれるのか楽しみでした。では、早速あらすじをご紹介します。

あらすじ

16世紀後半、織田信長(中井貴一)が本能寺で倒れたのち、天下人の座は豊臣秀吉(市川猿之助)へ引き継がれ、戦乱の時代が終わりを告げようとしていた。だが秀吉の圧政は次第に人々を苦しめていく。そんな中、町衆の先頭に立ち、秀吉に真っ向から戦いを挑んだ僧がいた。その名を池坊専好(野村萬斎)。華道池坊の歴史に名を連ねる花僧たちの中、ひときわ名手の誉れ高い専好が天下人に対して武器としたのは、刃ではなく、“命ある花の美しさ”だった—。

(C) 2017「花戦さ」製作委員会

S役者陣が豪華でしたね。狂言・歌舞伎・映画と様々なジャンルのトップが大集合。それも意外性があるキャスティングだなと思ったのですが、いかがですか?

Yそうですね。最初は、この人が信長?えっ?この人が秀吉?って思いましたけど、見終わってみたら、それぞれの個性が生かされてように思います。主人公の池坊専好を演じた野村萬斎は、狂言師ということで、なにげない所作も美しく、どこか品がありますね。

S映画に登場する200点を越えるいけばなも豪華!池坊の監修というだけあって、見ごたえありました。池坊専好は、織田信長や豊臣秀吉という当時の天下人と関わりがあり、千利休とも親交があったという、いけばなの名手。ところで、Yさんは、池坊専好ってご存知でしたか?

Y知りませんでした。実在の人物なんですね。いけばなの歴史も今回の映画で、はじめて知ったので、勉強になりました。

S私もです。ここで、いけばなの源流となった「池坊」について少しご紹介しておきましょう。聖徳太子が建立したと伝えられる六角堂(紫雲山頂法寺)。この池のほとりに小野妹子を始祖とする僧侶が住んでいたことから「池坊」と呼ばれるようになり、僧侶たちは、朝夕仏前に花を供えていたそうです。これがいつしか美しいと評判になって、いけばなの源流になったと言われてます。

Y池坊専好は実在の人物ということで、いくつものエピソードが残されているそうです。実際、織田信長にも一目置かれるほどの腕前だったとか…。今回は、そのエピソードのいくつかがモチーフとなってストーリーが展開していきます。

S天下人となった豊臣秀吉は、権勢を誇っていたのですが、愛息・鶴松を亡くすと正気を失ってしまい、暴政をふるい、自分に異を唱える者をことごとく惨殺していきます。死に追いやられた者の中には、専好と親しかった茶人・千利休や専好を慕う町衆たちも含まれていました。

Yそれに心を痛め、時の権力に立ち向かおうとする専好ですが、秀吉を相手に一世一代の勝負に出た時、彼が手にしたのは、刃ではなく、なんと花!

S武力(=権力)に花で立ち向かう!その名も“花戦さ”!その戦いには、現代にも通じるいけばなの精神が生きているんですよね。

Yそう、最初のシーンで信長が秀吉に「茶と花と人の心を大事にせよ」という一言が重要な鍵になります。

Sいけばなの精神を読み解くことで、観る人に気づきを与える…そんな映画ではないでしょうか。ロケ地も京都の随所で敢行されたとのことで、美しい映像美も必見。みなさんもぜひ劇場でご覧ください。

次回もお楽しみに!

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