『 泣き虫しょったんの奇跡』
試写会に行ってきたのは…
編集部員M(女性)
今年の夏はあまりの暑さに、室内でも楽しめる趣味を見つけようとウクレレを始めました。大人になってから何か新しいことを始めるのも楽しいですね。来年の夏は数曲弾けるようになっている予定です。
編集部員S(女性)
以前から欲しかった一眼レフの購入を迷っていたら、レンタルで試せることを知り、一週間借りてみました。シャッター音やずっしりとした重さにプロっぽさを感じて、それだけで心がしびれます。まだまだ腕がついていかないので、購入はちょっと先になりそうです。
M今回の試写会レポートは、9月7日(金)より公開の『泣き虫しょったんの奇跡』です。
S豊田利晃監督が監督生活20年の節目に選んだのは、史上初となる「奨励会退会からのプロ編入」という偉業を成し遂げた瀬川唱司五段の自伝的作品です。
M近ごろ藤井聡太七段の活躍や、加藤一二三さんなど何かと将棋界が注目を集めていますね。豊田監督自身も、実は過去に奨励会に入っていてプロ棋士を目指していたことがあるそうです。そんな今話題の将棋界を舞台にした映画のあらすじを、早速ご紹介しましょう。
生まれてから小学5年生まで、何かに熱を入れることもなく日々を過ごしていた“しょったん”こと瀬川晶司(松田龍平)。ある日、プロ棋士という職業があることを知り、隣家に住む鈴木悠野(野田洋次郎)と共に将棋の世界へとのめり込んでいく。めきめきと上達したしょったんは、中学3年生で奨励会に合格。ところが、奨励会には26歳の誕生日までに四段になれなければ退会という鉄のおきてがあった。しかし、そのプレッシャーに耐え切れず、棋士仲間と遊び回っていたしょったんは、チャンスを逃しプロへの道が断たれてしまう。一度はサラリーマンとして新たな道を歩み始めるものの、ある日思いがけず将棋の楽しさを再び味わったしょったんは、仲間たちに支えられ、プロ棋士へ再挑戦することを決意するのだった。
M実は私、将棋のルールを全くと言っていいほど知りませんでした。将棋というと地味で難しいというイメージが先行し、あまり興味を持てずにいましたが、今回この映画を観て印象がだいぶ変わりました。Sさんは将棋について詳しい方ですか?
S挟み将棋ぐらいしか経験がありません。最近でこそ将棋が注目されるようになりましたが、それまではあまり馴染みがなくプロ棋士になるのには26歳という年齢制限があることすら知りませんでした。伝統を重んじる世界なだけに、改革を起こすのは並大抵なものではなかったのだろうなと思いますね。
Mそうですよね。その年齢制限も元々は、プロになれなかった場合に、次の人生を将棋以外の世界でも歩めるように、と考えられた規則だったそうですよ。
Sなるほど。それがいつの間にか、“死に等しい年齢制限”と恐怖を抱かせるまでの規則へと変わっていってしまった、ということですね。
Mはい。追い詰められていく“しょったん”(松田龍平)が、静かな将棋のイメージとは対極に、全身全霊で将棋に挑む姿にとてつもなく熱い思いを感じました。
Sこの映画は、将棋シーンが印象的ですが、実は全ての対局シーンで一度も同じように撮っているものは無いそうで、奨励会館も実際の場所をロケ地として使用していたそうですよ。随所にプロ棋士を目指していた豊田監督ならではのこだわりを感じますね。
Mそれを聞いたら、もう一度全ての対局シーンを見直したくなりました(笑)
Sそれとこの映画の凄いところは、俳優陣がとても豪華だということ。主役級の俳優さんが脇役だったり、ワンシーンのみの出演もされているところでしょうか。
Mそれには私も驚きました!中でもイッセー尾形さんや小林薫さんの演技には感動しました。皆がしょったんを思う温かい感情には胸を打たれるものがありますね。
S主役の松田龍平さんも、感情をあまり表に出さない主人公を見事に表現されていましたよね。どうやら原作者の瀬川さんもとても温厚な方だそうですよ。監督は瀬川さんにお会いした時の感想を、「いい人グランプリ」でベスト3に入り、彼の人格があってこそプロ編入という奇跡が生まれた、ともおっしゃっていたそうです。
Mそれは相当「いい人」ですね!そういえば、映画の中でもしょったんの人柄は将棋の指し方にも出ていると言われていましたよね。将棋にはその人の人格までもが出てしまうのだとか…。勝ち負けだけではない将棋の奥深さを感じました。
Sこのサクセスストーリーは、そんな彼の人間性、将棋に対する姿勢、とてつもない努力、それと周りの人の想いがあってこその奇跡なのだと思いました。
Mはい。派手ではありませんが、いくつになっても諦めない先に希望があることをあらためて感じさせてくれる映画だと思います。皆様も是非、奇跡の実話を劇場でご覧になってください。
2018.09.12