和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう

その地域の産物を使い、独自の調理方法で作られてきた郷土料理には、日本の食文化の素晴らしさがたくさん詰まっています。「和食とは何か?」に迫った和食シリーズ企画第一弾に続き、今回は、日本全国の郷土料理を通して、食卓の未来について考えます。本企画は、産経新聞社様のご協力により、過去に産経新聞料理面に掲載された郷土料理から一部をご紹介しています。その地域の産物を使い、独自の調理方法で作られてきた郷土料理には、日本の食文化の素晴らしさがたくさん詰まっています。「和食とは何か?」に迫った和食シリーズ企画第一弾に続き、今回は、日本全国の郷土料理を通して、食卓の未来について考えます。本企画は、産経新聞社様のご協力により、過去に産経新聞料理面に掲載された郷土料理から一部をご紹介しています。

和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう

食べ物を通して、その土地に想いを馳せる ~辺銀愛理さんインタビュー~食べ物を通して、その土地に想いを馳せる ~辺銀愛理さんインタビュー~

編集部
元祖・食べるラー油ともいわれる、辺銀さんご夫婦お手製の「辺銀食堂の石垣島ラー油(石ラー)」。ラー油作りはもともとおふたりの趣味だったとお聞きします。
辺銀さん(以下 敬称略)
はい。私も西安出身の夫・暁峰も、どちらが食事を作るかでケンカするほどの料理好きでして。そんなわが家の定番メニューは、ふたりで仲良く作れる餃子。餃子を作るとなると、当然ラー油も作りたくなるわけです。夫の実家でもそれが当たり前だったので、ふたりでいろんなラー油に挑戦しましたね。落花生を入れた「千葉ラー油」や、生わさびを入れた「伊豆ラー油」、ホタテの貝柱を使った「北海道ラー油」、山形味噌やクルミを入れた「山形ラー油」など、全国各地の食材でご当地ラー油を作って楽しんでいました。
編集部
石垣島のピパーチ(島胡椒)やウコンで石ラーを作るのは、ごく自然な流れだったのですね。そもそもおふたりが石垣島への移住を決意されたきっかけは?
辺銀
東京の百貨店でやっていた沖縄物産展で、バガス紙という石垣の和紙に出会ったのがはじまりですね。その紙にひとめぼれし、どんなところで作っているんだろうと夫婦で2週間沖縄を旅したんです。そこで運命ともいえるようなさまざまな出会いがあり、旅の終わりにはどちらからともなく「ここに住もうか」っていう話になって……。その3ヶ月後には、もう石垣島の住人になっていました(笑)
編集部
世界中のおいしいものを食べ歩き、研究されてきた辺銀さんが、沖縄に来てまず感銘を受けた食べ物は何でしょう?
辺銀
食べ物ではないんですが、西表島に行ったときに92歳のオバー(お婆さん)がさんぴん茶(沖縄のジャスミン茶)に、庭の茉莉花を摘んで入れてくれたんです。「昔はこうやって飲んでたんだよ」って。それがなんとも香り高くておいしくて。沖縄に住んでよかったなと思った瞬間です。また、驚いた料理でいえば、ヒージャー(山羊)汁ですね。沖縄ではお祝い事があると、山羊を一頭丸ごとつかった鍋を食べるという風習があるんですが、これがワイルドでなかなかにおいしい。琉球イノシシの刺身も、本州では決して食べられない珍味ですね。一度食べたらやみつきになります。
編集部
石垣に暮らして17年。「辺銀食堂」も経営され、沖縄の食通となった今、もっとも沖縄らしい郷土料理は何だと思われますか?
辺銀
ドゥルワカシーですね。これは田芋とその茎を茹でつぶし、豚バラ肉やしいたけなどの具材とダシで煮て練り合わせた沖縄の伝統料理。語源は「泥沸かし」から来ているようです。お店や家庭によっていろいろな味付けがあるのですが、私がいちばん感動したのは、琉球料理家の山本彩香さんのドゥルワカシー。想像を絶するおいしさで、泡盛にもよく合うんです。これが食べたくて彼女のお店(2012年に閉店した那覇「琉球料理乃山本彩香」)に通ううちに、家族のように可愛がっていただけるようになりました。私の沖縄料理の師匠でもあります。
編集部
辺銀さんが腕を振るう「辺銀食堂」では、どんなお料理が楽しめますか?
辺銀
「食は命薬(ぬちぐすい)」をモットーに島野菜や島豆腐、もろみ豚、石垣牛などの地元食材を使ったシンプルな料理をご提供しています。基本は沖縄のオジーやオバーから教わった家庭料理にアレンジを加えたもの、それに義母譲りの西安料理も加えています。私たちはウチナーンチュ(沖縄人)ではないので、沖縄の食材や調理法を用いながらも、どこかで自分たちのアイデンティティを表現したいんですよね。
編集部
辺銀さんにとっての郷土や郷土料理とは、どこに根ざすものなのでしょう?
辺銀
私たちはあるときから日本人とか中国人という意識は捨てて、「地球人」という言い方をしています。結婚して3年目にふたりで南極に行った際、圧倒的な大自然にノックアウトされて気づいたんです。どこの国にも属さない雄大な大地を前に、「これからは地球人でいいよね」って。また、昔ネイティブアメリカンの方から、「土地のものを食べたら、その土地の一部になる」という考え方を学びました。たとえば山形の山菜を食べたら、そのおいしさへの感謝とともに、山形を大切に想う気持ちが生まれる。そう考えると、何を食べても郷土料理になるんです。そのためにも、自分が食べるものがどこから来たのかをきちんと知らなくてはいけません。息子にも、いつもそう教えています。これが、辺銀流「地球人の心得」ですね。

辺銀愛理(ぺんぎん あいり)さん

東京生まれ。小学生の頃から山形に通い詰め、スキーや山菜採りに夢中に。高校生の時にアメリカに留学。帰国後、旅雑誌の編集者としてキャリアをスタート。93年中国・西安出身の崔暁峰(さい ぎょうほう)さんと結婚し、99年沖縄県・石垣島に移住。夫の帰化に伴い、名字を日本で唯一の「辺銀」とする。趣味で作った「辺銀食堂の石垣島ラー油(石ラー)」が大ヒットし、食べるラー油ブームの先駆けに。現在は「辺銀食堂」「石垣ペンギン」「ぺんぎん食堂デリ」を経営しながら、「辺銀食堂の石垣島ラー油」を製造販売中。

第五回 沖縄 沖縄の郷土料理を作ってみよう! ~三菱調理家電による再現レシピ~第五回 沖縄 沖縄の郷土料理を作ってみよう! ~三菱調理家電による再現レシピ~