和食シリーズ企画第3弾

これからの和食を考える。

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。

第9回 海苔
それぞれの海苔に
合わせた、匠の焼き技

工場長も「最高です」という焼きたての海苔。
ていねいな焼きを心がける丸山海苔店は
最上の味わいになるよう、とても繊細に調整されています。
私たちの口に入る海苔は、こんなふうに焼かれていました。

湿度と焼き加減の精妙なコントロール

現在、丸山海苔店の一大生産拠点となっているのは茨城県のつくば工場。ここに北は宮城県石巻から、南は鹿児島まで全国から海苔が集まります。その数、なんと年間数千万枚(!)。その海苔を状態や品質に合わせて一枚一枚、ていねいに焼いていく。それが海苔屋の仕事なのです。

海苔は産地、生産者、等級でわけられて3600枚入りの大箱で丸山海苔店の倉庫にやってきます。その数、年間なんと8000~1万箱。しかも高額なものになると1箱数十万の値がつく海苔もあるのだとか。買いつけられた海苔は、湿度と温度がコントロールされた倉庫に運び込まれます。そして低温から高温に二段階に分け、合計7時間かけてしっかりと水分を抜いていきます。ちなみに検証系のテレビ番組が水分を測ったときには「測定不能」なほどしっかりと乾燥されていたとか。

産地や生産者に合わせた最適な焼き

100枚単位でまとめられた海苔は、ひとつずつ海苔の厚みや質に応じて焼きの温度が決定されます。10メートルほどのラインに焼くためのヒーターは3か所。海苔の品質や気温、湿度に合わせ、少しずつ温度を変えながら焼き上げていきます。厚い海苔ならばラインを通す時間を長く取り、薄いものなら短めに。同じ温度でもラインを通す時間が数秒伸びただけで、驚くほど味わいは変わります。

鮮やかな緑色がおいしさの印

右が焼く前、左が焼き上げた後。完全に水分が抜けた海苔は、焼き方によっては焦げにもつながりかねない繊細なもの。しかも天候や気温、湿度に海苔の状態などは無限に変わります。熟練の職人だからこそ、試し焼きは欠かしません。最適な温度と時間を微細に調整してから、本番の焼きに入ります。

細かなオーダーにも応えます

軍艦巻きや細巻き、太巻きなど多種多様な海苔を扱うすし店や、たくさんのおにぎりを扱うスーパーからの要望に応じて、焼きからカットまで「一点もの」の要望にも応えます。すし店によってはカットの向きまで指定されることもあるのだそう。細か過ぎると思えるほどの希望にもピタリと応える。丸山海苔店の工場には、そんなプロの仕事がありました。

2017.07.06