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和食シリーズ企画第3弾

これからの和食を考える。

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。

第13回 かぶ
旬のかぶには
心が喜ぶ
おいしさがあります

築地御厨 内田悟さん

野菜の目利きとして、数々の調理人が絶大なる信頼を寄せる築地御厨の内田悟さん。
知られざるかぶの魅力や店頭での選び方について伺いました。

かぶには絹のような舌触りがある

編集部
みそ汁にごま和え、浅漬けに鍋など、使い勝手のいいかぶ。いまや一年中店頭で見かけますが、本来の旬というのはいつなんでしょうか。
内田さん
(以下 敬称略)
本来、かぶはいまごろ――秋から冬にかけておいしくなる野菜なんです。そもそもかぶは地中海あたりで生まれた野菜ですから、地中海気候――朝晩冷え込んで雨が降らないような環境での生育に向いている。つまり、日本の気候で言うと秋から冬。
編集部
日本にやってきたのはいつごろですか。
内田
かぶは大根と並んで早くに日本へと入ってきた野菜で、弥生時代から奈良時代頃と言われています。日本書紀にも「唐から渡ってきた」というふうに書かれていますしね。地中海からシルクロードを経て、大阪のあたりにたどりつき、皇室に献上されるようになった。絹のような舌触りが宮中でも珍重される高貴な野菜だったんです。
編集部
その頃はどういう食べ方をしていたんでしょう。
内田
当時はまだ油のない頃ですから、調理法と言えば「煮る」「焼く」「蒸す」くらい。あとは漬け物でしょうね。
編集部
かぶの漬け物というと、大きな聖護院かぶを使った千枚漬けが思い浮かびます。
内田
もともとは、保存のために塩を振って浅漬けで食べていたんでしょう。それに昆布を加えて漬け込んだのが千枚漬け。あとはやっぱり煮物、蒸し物ですね。かぶら蒸しとか。
編集部
すりおろしたかぶと白身の魚を合わせて蒸す料理ですね。
内田
要するにみぞれ煮ですよね。魚をかぶや大根と一緒に加熱するとくさみが取れて、やわらかくもなる。アワビのようにかたい貝でも、みぞれ煮にするとやわらかくなりやすいですね。
編集部
みぞれ煮にしたかぶは、ほっとするようなやさしい味がします。
内田
火を通すと、絹のような舌触りが際立ちますよね。食感がいいから、昔は和食でよくすり流しにもしていました。今で言うとスープとかポタージュのような汁物。ああいう食べ方も、京都ならではですね。ちなみに京都で千枚漬けにする聖護院かぶは、もともと大阪の天王寺かぶが原種ですが、かぶという野菜は、同じ種を蒔いても土地によって実の形や大きさが変わる。土地や気候の影響を受けやすい野菜なんです。茨城でも天王寺系の大きなかぶが育てられていますが、姿形は変わりますね。

おいしいものの喜びが人の命をつないできた

編集部
ふつうの小さなかぶも含め、いま生産量が多いのはどのあたりですか。
内田
千葉、茨城、群馬あたりですね。関東ローム層の粘土質を含めた赤土がかぶの生育に適しているんです。あとは青森や北海道。やはり冷涼な地域ですね。それぞれの地域にそれぞれのかぶがあります。
編集部
かぶの可食部、この白い部分は実ですか? それとも根ですか?
内田
実……というか、正確に言うと胚軸と言われる部分ですね。根は先端から生えているちょろっとした部分。野菜って実の部分は地中に入っていきません。かぶも上のほうは潜らずに浮いてくる。部位が違うから、根の部分を食べる大根とは調理のアプローチも変わるんです。
編集部
店頭で、いいかぶはどう見分ければいいのでしょう。
内田
かぶのように球体になっている野菜は、下から見てきれいな真円になっているか、横から見て左右対称になっているかを見ます。これで栽培がわかります。ていねいな土作りをする生産者のかぶは丸くなるんです。葉がついているものなら、葉の色が鮮やかで瑞々しいものを選びたいですね。ちょっとくらいのキズは包丁でそこだけ取れば大丈夫。本来の旬は秋から冬ですが、品種改良で春が旬となっているかぶもあります。
編集部
旬を感じながら料理をし、旬の味をまるごといただくと心躍るような気分になります。
内田
そう。食材を通じて、季節を感じるのはとても豊かなことなんです。紀元前からの長い歴史のなかで食文化が連綿と綴られたものであるとするならば、その根源には喜びがあるはず。旬のおいしいものがもたらす心の喜びには、人間の命をつなぐひとつの役目があったんじゃないでしょうか。

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