和食シリーズ企画第3弾

これからの和食を考える。

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。

第14回 大根
大根はデザートにも
なるんです

まさか大根がこんなメニューで
こんな味に!? 大根の魅力は
まだまだ奥深かった!

えっ。砂糖漬け!? 広がる大根の世界!

「大根のメニュー」について遠藤さんに相談したところ、「大根料理の基本」から「新しいメニュー」までいろいろと教えてくださいました。大根料理(保存方法も含む)、保存版です。

編集部
大根というと、もっとも身近なのは大根おろしでしょうか。
遠藤さん
(以下、敬称略)
大根おろしのポイントは「絞らず」「ゆでる」こと。
編集部
ゆでるんですか?
遠藤
そうです。大根はおろしただけでは特有のくさみが出やすいので、ゆでることでなめらかで穏やかな味にします。ザルにさらしやキッチンペーパーなどを広げ、おろした大根に水をさっとかけて自然に水が切れるのを待つ。水が切れたら、鍋にたっぷりの湯を沸かし、くらくらした状態で20~30分ゆでる。ふたたびザルにさらしやペーパーを広げて、鍋の大根おろしを入れる。流水でざっと洗いながら冷やし、自然に水を切ります。
編集部
おでんや煮物に使う大根の下ごしらえはいかがでしょう?
遠藤
「水に浸ける」ことが大切です。
編集部
下ゆでの前でしょうか。それとも後ですか?
遠藤
ていねいにやるなら両方です。まず切り分けた大根をしばらく水に浸ける。そのあと、米の研ぎ汁をたっぷりと入れ、ごはんも少量加えた鍋に水に浸けた大根を入れ、中火にかけ沸騰したら15分ほどゆでる。そのまま自然に冷まして一晩おく。水で表面を洗ったらさらに水に半日から1日さらします。
編集部
きちんと作るのは大変ですね。
遠藤
家庭では、米のとぎ汁とごはんで下ゆでした後、自然に冷ますだけでもずいぶん違いは実感できると思いますよ。例えば、下ゆでしたものを砂糖漬けにするとこんなものができます。おひとつどうぞ。
編集部
和菓子のような甘味が口に広がります。とても大根とは思えません。
遠藤
アハハハハ。間違いなく大根の砂糖漬けですよ。まずすべての基本となる大根の砂糖漬けの作り方ですが、切って下ゆでした大根をザルに上げて水気を切り、かぶるくらいのレモン汁に2~3日漬ける。漬かった大根は崩れやすいので、ていねいにザルにとって水分を切る。あとは、1枚ずつまんべんなく上白糖をまぶして2~3日置いて、水分を箸でぬぐう。その後、再び1枚ずつ上白糖をまぶす……というふうに、砂糖に漬ける作業を合計4回繰り返せば、できあがりです。
編集部
仕上がりまで、約10日かかるわけですね。次の3種類はどういうものでしょうか。
遠藤
基本を少しずつアレンジしたものですね。白(写真左上)は「流水」と言って、大根漬けを作る過程で砂糖汁の底に沈んだ砂糖をザルに上げて陰干しして固めた大根糖。その下の赤いもの(同下)は「流水」に赤しそのエキスを入れたもの。もうひとつの赤いもの(同右上)が砂糖漬けの「茜」です。切り方をなた割にして、基本の砂糖漬けの3回めで引き上げた大根を赤しそ梅酒に10分ほど漬けて風干しにしています。淡い梅の香りと赤み、もっちりした口当たりが特徴ですね。
編集部
いずれも味は和菓子そのものですね。かかる手間も「茜」などの「砂糖漬け」で1週間~10日、「大根糖」の「流水」でも3日くらいと本格的です。
遠藤
そうですね。でも大根おろしを使って、手軽にできるものもありますよ。大根おろしジュースです。
編集部
使うのは先にご紹介いただいた基本の大根おろしですか。
遠藤
そうです。ミキサーに基本の大根おろしと氷、炭酸水を入れ、その合計量の36%の上白糖を加えてミキサーにかけるんです。それだけで驚くほどおいしい大根ジュースができあがります!
編集部
ちなみに使いきれなかった大根の保存はどうするのがいいですか?
遠藤
とにかく葉や茎を切り落としておくこと。野菜には成長するための「芯」のようなものがあります。ここを取ってしまえば成長は止まり、日持ちもよくなります。白菜などにも共通する法則ですね。

2017.12.05