Small World Project
BOP層の暮らしに向けた研究開発の取組

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Small World Project 
BOP層の暮らしに向けた研究開発の取組
  • BOP層:Base of the economic Pyramidの略。主に開発途上国の低所得層を指す。

Small World Projectとは

世界の人口の70%以上が“BOP層”と呼ばれる低所得層に属すると言われています。このプロジェクトは、三菱電機の製品やテクノロジーを、一部の先進国のためだけでなく、世界に暮らす多くの人々の生活や社会のために活用したいという想いをもとに、三菱電機デザイン研究所から生まれました。

現地に赴き、BOP層の人々とのコミュニケーションや体験を通じた課題抽出や解決へのアプローチを行いながら、世界の人々の暮らしの改善に貢献します。

魚売りのための小さな冷蔵庫

大小様々な島で構成されるインドネシアでは、海から獲れる魚は、主要な食糧源であり、多くの人が魚を販売することで日々の生計を立てています。しかし、炎天下で販売する魚はすぐに傷んでしまい、販売価格の低下や売れ残りを引き起こし、収入を不安定にさせていました。また、傷んだ魚を食べることによって食中毒になるといった衛生上の課題もありました。現地の調査にてこのような課題に触れ、その解決に向けた小さな冷蔵庫の研究開発を、本プロジェクトの一つとして行っています。

貢献できる主なSDGs

  • 目標1 貧困をなくそう
  • 新鮮な状態で長時間・遠方での魚の販売が可能になる。販売価格の低下や売れ残りを減らすことで、収入の安定・向上につながる。
  • 目標3 すべての人に健康と福祉を
  • 魚の腐敗によって引き起こされていた食中毒を防ぐ。また、無電化地域へのワクチンの輸送など、温度管理が必要な用途への適用が期待できる。
  • ※SDGs・・・持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)
魚売りの収入向上のための小さな冷蔵庫
BOP層の暮らしを向上させるには、収入を向上させることが大切です。そのために、「バイクの電源で動く小さな冷蔵庫」の開発にとどまらず、収入向上に繋げるための効果的な使い方から、新しいワークスタイルの確立まで、現地の人々と一緒に考えながら、事業化を目指しています。
バイク電源で動く小さな冷蔵庫の試作機バイク電源で動く小さな冷蔵庫の試作機

現地のライフスタイルに目を凝らす

プロジェクトをすすめるにあたり、現地に幅広いネットワークを持つNPO法人「コペルニク」に協力いただき、無電化地域の村や家庭、学校、診療所、役場などの様々な場所を巡り、日々の生活の観察やインタビュー調査を行いました。その中で、漁港や、離れた村にやってくる魚売りとの出会いから、課題への気づきや、解決に向けたアイデアが生まれました。
バイクに乗った魚売り
傷んだ魚の様子
バイクに乗った魚売りと傷んだ魚の様子

漁港から離れた村でリサーチをしていると、バイクに乗った魚売りが村の家々を回っている様子を目にすることがありました。しかし、バケツに入れられただけの魚はすでに傷んだ状態でした。魚売りに話を聞くと、暑さによって魚はすぐに傷んでしまい、これによって販売価格の低下や売れ残りが発生し、収入が安定しないとのことでした。また、村の人の話からは、傷んだ魚を食べることによる食中毒も頻繁に発生していることが分かりました。

もし、バイクでの移動販売時に、魚を新鮮な状態に保つことができれば、長い時間、より遠方での販売が可能になり、売れ残りも減らすことができます。このような気づきや仮説から、バイクの電源で動く小さな冷蔵庫の開発がスタートしました。

現地の漁港の様子
現地の漁港の様子
現地の漁港の様子
現地の漁港の様子

冷蔵庫を全く使ったことがない人々に、まずは「冷やす」ことの価値を体感してもらうため、実際にバイクの電源で動く試作機を製作し、現地の方に使用テストに協力いただき、理解を深めていただきました。

一方、使用テストでは、直射日光や雨季のスコールの影響、バイクのバッテリーの電力で安定した冷却性能を出すことの困難さなど、ハードウェアとしての課題も浮かび上がってきました。それらの課題を解決すべく、最新の試作機では、冷却性能の向上はもちろん、日射のあたる天面の面積を抑えるとともに、雨などが自然と流れ落ちる形状とし、持ち運びや清掃性なども考慮して改良をしています。また、バイクへの取り付けにおいても、現地で容易に手に入る素材で簡単に固定できるよう工夫しています。

試作機の変遷(初代)
試作機の変遷(二代目)
試作機の変遷(最新機)
試作機の変遷(左:初代、中央:二代目、右:最新機)

現地に暮らす人々と“共に”作り上げる。

ただモノを提案して終わりではなく、どうやったら収入が向上するかを、現地の人々と一緒に考えていくことも、本取組において重要です。冷蔵庫によって魚を販売できる時間が長くなったとしても、それを購入する人がいなければ収入は向上しません。そこで、午後や夕方に魚の販売テストを行ったところ、「午前中に魚売りが来たことに気付かなかった」などの理由で、多くの人が魚を買い逃していることがわかりました。

また、長い時間販売できることで魚の販売量が増えるだけでなく、市街地では冷蔵した魚が好まれ、3割近くも高く売れるケースもありました。試作機はもちろん、ときには紙で作ったモデルなども用い、現地の人々の反応や効果を見定めながら、丁寧に調査しています。

試作機での販売テストを行う現地の方々とのミーティングの様子 試作機での販売テストを行う現地の方々とのミーティングの様子
魚の販売テストの様子
魚の販売テストの様子
魚の販売テストの様子

コミュニティの皆様の声

試作機を使っているオマさんの家にて 試作機を使っているオマさんの家にて
  魚売りの声 魚を買う側の声
主なコメント
  • 魚を長い時間保存できるので、夕方まで売ることができるようになった。また、これまでよりも遠くまで売りに行けるようになった。
  • お客様は冷蔵した魚を好んで買ってくれる。
  • お客様は通常のものよりも冷蔵した魚の方を、高く買ってくれる。
  • 新鮮な魚は安心して購入できる。
  • 以前、古い魚を買って食中毒になったことがあった。冷蔵された魚を積極的に選びたい。
  • 魚売りのバイクが来たことに気付かず、買い逃してしまうことがあるので、午前以外でも新鮮な魚が買えるのは嬉しい。
今後の期待・要望
  • もう少し温度が冷えると良い。
  • バイクのバッテリーへの負荷が心配なので、より少ない電力で使えると良い。
  • 多少金額が高くても、冷蔵した安全な魚を買いたい。

2つの異なるシーンを、1つのデザインでつなぐ

魚売りのための「バイクの電源で動く小さな冷蔵庫」の他に、リビングやベッドルームのためのモデルも考案しています。これらは同じ形状で構成されており、ほぼ同一の生産設備で製造することを想定しています。
リビングやベッドルームのためのモデル
リビングやベッドルームのためのモデル

暑い日差しや突然のスコールといった環境の中を走るバイクの上と、先進国のリビングのソファのそば。このようなまったく別のシーンを1つのデザインが結びつけることで、金型を始めとした生産設備が共通化でき、生産台数が増えることで1台あたりのコストも大きく下げることができます。

デザインの力で途上国と先進国の人々の暮らしのシーンをつなぐ。そんな世界を目指して「Small World Project」の挑戦は続きます。


開発者の声

  • 三菱電機デザイン研究所
プロダクトデザイナー
松山祥樹
  • 三菱電機デザイン研究所
    プロダクトデザイナー
    松山祥樹

このプロジェクトでは、調査や実験を通して出会った、インドネシアの農村・漁村に暮らすたくさんの人々の協力によって、今日に至ることができました。試作機を用いたテストを始め、ヒアリングやインタビューに快く応じてくれた彼らの温和で優しい人柄や、人懐っこい性格。そして何より、今の暮らしをより良くしたいという前向きで素直な想いに、大変感謝しています。

今回の活動のみならず、水や食料、エネルギー、医療、教育など、BOP層の暮らしや社会の課題に対してアプローチできることは、まだまだたくさんあると思います。Small World Projectでは、企業の持つ製品や技術を軸に、これからも人々の暮らしに寄り添って、新しい価値を生み出せるよう活動を続けていきたいと思っています。

現地の子どもたちとの交流
現地の子どもたちとの交流
現地の子どもたちとの交流
プロジェクトメンバー 左から齊川義則、松山祥樹、橋本孝康
プロジェクトメンバー 左から齊川義則、松山祥樹、橋本孝康

協働パートナーの声

  • 米国NPO法人
コペルニク共同創設者兼CEO
中村俊裕
  • 米国NPO法人
    コペルニク共同創設者兼CEO
    中村俊裕
コペルニクは、ラストマイル(最も支援の届きにくい地域や人々)の課題に対し、民間企業、公的機関、市民団体などと連携しながら、効果的な解決策を見つけ、促進する活動を行っています。インドネシアの魚売りの人々は仕入れた魚を常温で保存・販売しているため、魚の鮮度の劣化が早く、低収入の一因となっています。そこで魚売りの生活や仕事のスタイルを丁寧に観察した上で、バイク用冷蔵庫のテストと試作品の改良を重ねてきました。その結果、魚の鮮度を長く保てるため、販売時間の延長や販売価格の上昇による収入増加の可能性が見え始めています。今後は、販売チャネルの開拓やビジネスモデルの構築、魚の保存に留まらない冷蔵庫の活用の可能性の検討も含めて、ご一緒していきたいと思っています。

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