どんどん進化するプラスチックリサイクル

ポイント① X線を使って異物が含まれたプラスチックを取り除けるようになった!

エコチェンジ研究所のティ・タンソ博士

プラスチックリサイクルの効率を高めるには、より純度の高いプラスチック素材を生み出すことが重要なんじゃ。細かく砕いたプラスチックを種類ごとに選別できることはすでに説明した通りじゃが、実はプラスチックにはいろんな異物が含まれておる。

その一つが「臭素系難燃剤」と言われるもので、ヨーロッパ(EU)で現在は使用制限されているんじゃな。リサイクル工場に集められた使用済み家電製品の使用年数は当然ながら異なっておるから、かなり昔の製品のプラスチックには、これが含まれている場合がある。それらを取り除くのにX線を使っているわけじゃ。X線を当てて透過画像から「臭素系難燃剤」が含まれているプラスチック片を見つけてエアガンで吹き飛ばすんじゃよ。この技術は2009年に開発し、2010年度の「環境賞環境大臣賞優秀賞」を受賞したぞ。

臭素含有プラスチック除去装置

臭素含有プラスチック除去装置
(X線選別装置)

黒く映っているのが臭素系難燃剤を含んだプラスチック

もう一つは「ガラス繊維」じゃ。ガラス繊維はプラスチックを丈夫にするために練り込まれているんじゃが、細くて小さなガラスが大量に混ざっておる。それを取り除くことは無理だと誰もが思っておったんじゃが、とうとうこれを分別する方法も開発して、2015年6月から再生プラスチックの量産ラインに導入しておるぞ。

繊維強化プラスチック

繊維強化プラスチック

どんな工夫をしたのかというと、これまでは1つだけ設置していた検出器を2つにすることで可能にしたんじゃ。実は、細かく砕かれたプラスチックには、いろんな厚みのものがあってな、厚みが違うとX線の透過率に差がでてしまうんじゃ。例えば、プラスチック片が薄い場合、ガラス繊維を含んでいても、含んでいないように見えてしまう。逆に、プラスチック片が厚い場合、ガラス繊維を含んでいなくても、含んでいるように見えてしまうんじゃ。こうしたことが誤検知の原因になってしまうんじゃが、X線の感度が異なる2つの検出器を使うことで、厚みの差があってもきちんと見分けられるんじゃな。

■ 異物検出システム

異物検出システム

ポイント② 赤外線を使って、99%の高精度でプラスチックの種類を識別できるようになった!

進化のポイントの二つ目は、赤外線を使った技術さ。「リサイクルプラスチック高精度素材識別技術」を搭載した識別装置をつくったんだ。プラスチックには、着色剤や添加剤が含まれているものがあって、それが厳密な選別の邪魔をすることがあるからなんだ。プラスチックを種類ごとに選別した後の純度管理検査で威力を発揮しているよ。

この装置のすごいところは、プラスチック片に赤外線を当てて、その反射のしかたを分析することで、着色剤・添加剤の含有量にかかわらず99%の高精度でプラスチックの種類を識別できるところなんだ。円盤状の装置を回転させながら、プラスチック片を一粒一粒整列させ、種類ごとに用意された回収箱にエアガンで飛ばすんだ。しかも1粒当たり、たった1秒という早業!この装置を使えば、工場で処理すべきプラスチックの構成比を予め特定できるから、リサイクル効率もグンとアップするんだ。

エコチェンジ研究所のジュン・カーン助手

■ プラスチック高精度素材識別装置概念図

プラスチック高精度素材識別装置概念図

本技術開発は、島津製作所と共同で、経済産業省平成23年度産業技術実用化開発事業費補助金(資源循環実証事業(プラスチックの高度素材識別技術及びリサイクル素材化技術))を受けて実施しました。