一段高い活動レベルを目指して

三菱電機グループはかねてから、全事業所で「緑の質の向上」を推進してきました。すべての社員が生物多様性にかかわる問題を「身近なもの」としてとらえ、積極的かつ自発的に行動するようにすることが狙いです。近年は、取組がある程度浸透してきたことから、継続的に活動をレベルアップしていく仕組みづくりにシフトしています。

生物多様性から私たちが受けている様々な恩恵を「生態系サービス」といい、

  • 食料や資源を供給する「供給サービス」
  • 気候の調整などを行う「調整サービス」
  • 自然景観による癒しなどを与える、などの「文化的サービス」
  • 土壌の形成などの「基盤サービス」があります。

生物多様性の保全は私たち人類が存続する上で不可欠であり、「環境問題の本質」であると言えます。

生物多様性の維持・向上には多くの年月がかかるため、継続的な取組が必要です。このためSDGs※1への貢献といった他の課題とともに、生物多様性への取組を事業活動の一部ととらえて進めていきます。これらの取組により、地域の生態系保全に一層貢献するとともに、地域社会からの評価・信頼を得て、さらなる企業価値向上にもつなげたいと考えています。

※1SDGs:(Sustainable Development Goals)
2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に含まれる、2030年までの「持続可能な開発目標」

3つの方向性に沿って「緑の質」を向上

三菱電機グループは、各事業所における「行動」の指針として、「生きものへの負の影響を低減する」「生きものとのより豊かな共生を目指す」「働く中で社員が自然との関係を取り戻す」の3つの方向性(大項目)と7つの分野(中項目)を定めています。それぞれの拠点で、地域固有種の保全や外来種の管理、周辺の生態系を考慮した緑地の整備などを行動計画に掲げ、各事業で着実に取組が進んでいます。

活動の方向性
大項目 中項目 小項目
  • A 生きものへの
    負の影響を低減する
  • 1.「開発圧※1」「外来種圧※2」の抑制  ※3
  • (1)生きものに対する影響把握
  • (2)外来種管理
  • 2.「希少種」「固有種」への注意喚起と保全
  • (1)構内生物リストの公開
  • (2)希少種、固有種の保全
  • (3)周辺の保全課題への協力
  • 3.農薬影響の管理や、緑地・天然資源の保全
  • (1)生きもの殺傷の抑制
  • (2)水や土壌等の天然資源への配慮
  • B 生きものとの
    より豊かな共生を目指す
  • 4.機能緑地の設定
  • (1)緑地管理の体制
  • (2)飛翔性生物の利用地の整備
  • (3)「みどり+生きもの」優先地の整備
  • (4)事業所周辺への「みどりの連続性」の提供
  • (5)事務所周辺の生物多様性保全活動への貢献
  • 5.緑地の単純化、特定化など、産業的志向からの
    脱却
  • (1)植生の多様化・多層化
  • (2)植物などの特性に合致した緑地管理
  • (3)地域への貢献・配慮
  • C 働く中で社員が
    自然との関係を取り戻す
  • 6.生態系サービスの職場での積極的享受
    (休憩所、フロア)
  • (1)文化的サービスの享受・場づくり
  • (2)供給サービスの享受・場づくり
  • 7.「無関心」「無関係」状態から、
    「全員が関係ある」状態へ
  • (1)理解と行動促進の教育
  • (2)職場・業務での関係創出

※1開発圧:棲みかの破壊。事業拠点を新たに建設することや、天然資源の採取などのために開発が行われること(サプライチェーンでの開発を含めて)、などが該当。操業による水の使用が周辺地域や水源、ひいては生きものの生息環境に影響を与える場合などもこれに含まれると考えられる。

※2外来種圧:その地域にもともと存在しない生きものが、外構や建物の脇の緑地、生垣などをつくる際に地域の外から樹木や草木を導入することがある。何気なく行われる生きものの移動が、地域固有の種の生息を脅かしたり、遺伝的な汚染の原因となることがある。

※3外来生物法の「特定外来生物の飼育、栽培、保管又は運搬」に関する規定に則り活動を実施。

生物多様性ガイドライン
(チェックシート)に基づく定量評価

継続的な定量評価で活動実施レベルを着実に改善

三菱電機では、事業所の生物多様性への取組状況を定量評価して活動の着実な向上を図るべく、「生物多様性ガイドライン(チェックシート)」を2020年3月に策定しました。これは全事業所必須項目の5項目と上記「活動の方向性」に基づく7つの分野(中項目)で分けた186の推進項目により活動実施レベルを定量評価するものです。各事業所の担当者がこのチェックシートを活用して取組状況を自己診断し、強みや課題を活動実施レベルで把握できる仕組みとしています。

全事業所必須5項目
  • 生物多様性に関する取組を進めるための担当者・担当する部署及び業務を設定している
  • 生物多様性に活動を行なっていくための中期計画がある
  • 生物調査を実施している
  • 生物多様性に関する環境教育を毎年実施している
  • 中期計画に対するフィードバックをしている
2022年度の評価結果

2022年度の向上率

(7つの分野の向上率の平均値)

1.35

(2021年度の1.28から0.07ポイント向上)

基準年度に対する評点の比率を向上率と定義し、2022年度における各分野の活動実施レベルを評価しました。その結果、分野ごとの全社平均は下のレーダーチャートに示す結果となり、全分野の向上率の平均値は2021年度の1.28から1.35へ上昇しました。

前年度と同様に、「1.『開発圧』『外来種圧』の抑制」「3.農薬影響等の管理」「5.緑地の単純化、特定化など、産業的志向からの脱却」の3分野の向上率が増加しました。各事業所が3分野を継続的な課題として認識し、生物多様性保全の重要活動項目として取り組んだ成果と考えます。他の分野においても、特に「7.『無関心』『無関係』状態から、『全員が関係ある』状態へ」では、向上率が前年度比0.08ポイント伸長し、進展が見られました。各事業所が生物多様性保全活動の認知度向上のための教育や情報発信に努めた結果、徐々に従業員にも活動の重要度が浸透したと考えます。
引き続き、ガイドラインを活用しながら、生物多様性保全活動の活性化と継続的なレベルアップを図っていきます。

向上率=評価対象年度の評点÷基準年度の評点で算出、2019年度を基準年度とした

2022年度の向上率(7つの分野)