各事業所で、生きもの調査から
始まる自然との共生を推進

従業員による生きもの調査を継続するとともに地域在来種の保全にも注力

三田製作所では、2014年から、従業員が自ら生きもの調査を行い、その結果を製作所内の他の従業員に公表する取組を続けています。生きものに詳しくない従業員に、生きものへの興味を持ってもらいたいという考えによるものです。

また、専門家のアドバイスを参考に、地域在来のチガヤなどを植えた「自然観察エリア」を設置し、長期の経過観察を実施。手入れを行う場合と行わない場合とでどのような差が出るかを記録してきました。2022年にはこの取組を一旦終了し、エリア内を整地して、近隣の兵庫県立有馬富士公園、三田市皿池湿原、三田市須磨田から譲り受けた在来種の草花の育成を始めています。

事業所所在地

〒669-1513 兵庫県三田市三輪二丁目3番33号

主な取扱製品

カーマルチメディア機器(ナビゲーション、リアシートエンターテインメントシステム、カーオーディオ、BD、DVD、CD、TV他)、自動車用装備品(エアバッグコントロールユニット、LEDコントロールユニット他)、自動車用アクチュエーター・バルブ類、DVD・CDデッキ類

主な取組テーマ
  • 外来種管理 [A-1-(2)]
  • 社員が取り組む生きもの調査 [C-7-(1)] [C-7-(2)]
  • 圃場を設け、地域在来種を育成 [B-4-(3)] [B-4-(5)]
  • 活動に関与する社員の拡大 [C-7-(1)]

[ ] 内は取組テーマの分類を示します。詳細については以下を参照ください。

三田製作所の活動の方向性

取組の特徴
  • 担当の従業員が敷地内で見つけた生きものを記録し、その結果を定期的に他の従業員に向けて発信
  • 生きものに詳しい従業員を見つけ、参加を促すことで活動の輪を広げていく
  • 有馬富士公園周辺で生態系保全に取り組む方の協力のもと、製作所内で地域在来種を育成

三田製作所の活動テーマ

三田製作所では主に「従業員による生きもの調査」と「地域在来種の育成」の2つの取組に注力しています。また、従業員への情報発信にも継続的に取り組んでいます。

自ら行う生きもの調査

三田製作所では、生きもの調査を専門家に頼ることなく環境・施設管理課所属の従業員たちが実施・継続しています。それは「自分たちで調べないと、興味を持てない」「生物多様性という言葉が持つ専門的なイメージを払拭し、従業員に活動を身近に感じてもらいたい」という理由からです。活動初年度である2014年度の調査結果を「図鑑」として製作所内で公開したほか、その後も記録を継続。最新の状況についても地域交流イベントの際に展示するなどして、従業員や地域の方に発信してきました。

近年は新型コロナウイルス感染拡大の影響からイベントの実施回数が少なくなっていますが、発信の機会を逃さぬように取り組んでいます。今後は、新たに設けた地域在来種の圃場も活用し、従業員に植物を身近に感じてもらえるよう働きかけていきます。

カメラを持ち歩き、生きものを見つけて撮影カメラを持ち歩き、生きものを見つけて撮影

活動内容を地域交流イベントでも公開。構内でみつかった生きもの展示も活動内容を地域交流イベントでも公開。構内でみつかった生きもの展示も

図鑑の例。これまでに発行した図鑑は10号を数え、従業員とコミュニケーションする機会も生まれている図鑑の例。これまでに発行した図鑑は10号を数え、従業員とコミュニケーションする機会も生まれている

図鑑のほか、さくら、ツツジ、サツキの開花スポットが分かるMAPも作成し、様々な切り口で従業員の興味を喚起図鑑のほか、さくら、ツツジ、サツキの開花スポットが分かるMAPも作成し、様々な切り口で従業員の興味を喚起

池の水抜きプロジェクト、始動

三田製作所構内いこいの広場にある池の水を抜き、生息する水中生物の種類を調べるプロジェクトを進めています。

この池については2019年にも一度水を抜いて調査を実施していますが、非常用飲用水(災害時に浄化し、飲料水とする)であるために、そのときは3分の1ほどしか抜けませんでした。その後、安全面も考慮して第2回に向けた準備を進めてきました。

調査で水を抜くことで、水量だけでなく水温や酸素の状況も変化すると予測されます。なるべく生きものたちへの影響が少ない手順・時期を選び、2023年中に実施する予定です。

圃場での在来種苗の育成

自然観察エリア(整地前)自然観察エリア(整地前)

三田製作所では2015年12月に有識者ダイアログを開催し、いただいたご意見をもとに、在来種・チガヤを植えた「自然観察エリア」を設け、経過観察を続けてきました。エリア内にはあえて人の手を入れずに放置したことで、4年ほどで鳥や風に運ばれた種が芽吹き、外来種が侵入する様子なども観察できました。

しかし、その後ある程度状態が安定したこと、また外来種管理などの観点もあり、2022年度に観察を一度終了。エリア内を整地して圃場とし、近隣の有馬富士公園、皿池湿原、三田市須磨田から地域在来の草花の苗を譲り受けて育成を始めました。これらの地域には都市部では貴重となった湿原環境が広がっており、県のレッドリストに記載されている種の生息も確認されています。この保全活動を行う兵庫県有馬富士公園 自然の学校に三田製作所のOBが参加していることから、苗を譲り受けることができました。

公園の環境と連続していない製作所の敷地内で苗を守ることで、万一の環境変動などに備える一助とするほか、今後無事に苗が定着すれば株分けなども検討していきます。また、圃場は食堂の近くに立地していることから、従業員にも場所をアナウンスして立ち寄ってもらい、在来の植物に興味を持ってもらう場としても活用していきます。

譲り受けた苗を移植。種類は、オミナエシ、カワラナデシコ、スズサイコ、キキョウ、ウツボグサ、ヒヨドリバナの6種譲り受けた苗を移植。種類は、オミナエシ、カワラナデシコ、スズサイコ、キキョウ、ウツボグサ、ヒヨドリバナの6種

移植から3か月後の様子移植から3か月後の様子

カワラナデシコ(左)とヒヨドリバナ(右)、リンドウは初年度から花をつけたカワラナデシコ(左)とヒヨドリバナ(右)、リンドウは初年度から花をつけた

種を付けたヒヨドリバナ。植えた草花が冬を越し、きちんと春に芽吹くかが最初の関門種を付けたヒヨドリバナ。植えた草花が冬を越し、きちんと春に芽吹くかが最初の関門

三田市の自然に詳しいOBを講師に迎えて
「生物多様性活動講話会」を開催

2022年6月、地元の有識者とともに生態系の保全に力を注ぐ当製作所のOBを講師に迎え、2回目となる「生物多様性活動講話会」を開催しました。講話は「三田周辺の自然」をテーマにしたもので、地域の豊かな自然と生きものの多様性を学ぶ機会になりました。製作所全体から参加希望を募ったところ、28名と多くの参加があり、構内での生物多様性への興味が高まっていることがうかがえました。後日参加者からは「自分が働いている地域の環境について知る良い機会になった」 「自分も三田市の活動に参加してみたい」という声が聞かれるなど、有意義な時間となりました。

今後も生きものに関する様々な情報発信を継続していきます。

三田周辺の自然について講話

三田周辺の自然について講話

三田周辺の自然について講話

三田周辺の自然について講話

担当者たちからのメッセージ変化する環境の中でも、
末永く取組を続けていきます

三田製作所の担当者
製造管理部 環境・施設管理課

三田製作所が生きもの観察を始めて、気がついたら10年目が目の前となりました。その間には当然、事業の状況も社会の情勢も変化しており、新型コロナウイルスの拡大で地域交流イベントが中止になるなど、生物多様性保全活動にも影響がありました。そうしたなかで取組を続けてこられたのは、無理をしない、手づくりの活動を貫いてきたからだと思っています。

観察と発信を続ける中で製作所内の空気も少しずつ変わり、最近は「あ、魚!」「カモが飛んできているぞ」などと人が集まっている光景もよく見られるようになりました。植物よりも動物に興味を示す従業員が多いため、今後はこうした従業員が参加したくなるような活動ももっと検討していきたいです。

マネジメントの声“定点での観測”を続けながら
活動の切り口を広げ、
停滞しないよう取り組みます

製造管理部 環境・施設管理課 課長 津田高弘 製造管理部 環境・施設管理課 課長 津田高弘 製造管理部 環境・施設管理課 課長 津田高弘 製造管理部 環境・施設管理課 課長 津田高弘 製造管理部 環境・施設管理課 課長 津田高弘

この活動にずっと関わってきて思うのは、「活動がなかったら、動植物に目を止めることはなかったかもしれない」ということです。「工場に生きものがいる」という素朴な驚きを他の従業員にも感じてほしい。それが生物多様性保全活動への入口になると思っています。

思い返せば、三田の気候もこの20年の間にずいぶんと変化しました。以前は雪深い場所だったのに、近年は冷えることこそあれ、めったに雪は降りません。イソヒヨドリなど暖かい地域の生きものもよく見られるようになっています。規模はささやかであっても、事業所という“定点”からそれを観察し続けること、そして発信していくことには、大きな意義があると思っていますし、これからも続けていく予定です。

もちろん、新たな取組も必要です。2022年度には従来の取組を一部切り上げ、在来種の苗を育てる取組を始めました。こうした新しい切り口は今後も検討していきます。例えば、職場からは緑が目に入りにくいので、もっと従業員の目に触れるところに植物を増やすような取組もいいでしょう。人通りの多いところに緑地を整備できればいいのですが、それには複雑な調整が必要ですので、悩ましいところです。ほかにも、メンバー以外の従業員による生きものの目撃情報を集約するような道筋をつくることも今後の課題と思っています。

各事業所の中でも「最も早くから、最も長く」活動しているという自負を胸に、今後も取組を続けていきます。

製造管理部 環境・施設管理課 課長 津田高弘

三田製作所の活動の方向性

以下は三菱電機グループの各事業所による生物多様性保全活動の方向性を示した一覧表です。
三田製作所の活動がどの方向性に当てはまるのかを、色で示しています。

地域の自然との共生に向けて様々な取組を実施

活動の方向性
  • A 生きものへの
    負の影響を低減する
  • 1.「開発圧※1」「外来種圧※2」の抑制  ※3
  • (1)生きものに対する影響把握
  • (2)外来種管理
  • 2.「希少種」「固有種」への注意喚起と保全
  • (1)構内生物リストの公開
  • (2)希少種、固有種の保全
  • (3)周辺の保全課題への協力
  • 3.農薬影響の管理や、緑地・天然資源の保全
  • (1)生きもの殺傷の抑制
  • (2)水や土壌等の天然資源への配慮
  • B 生きものとの
    より豊かな共生を目指す
  • 4.機能緑地の設定
  • (1)緑地管理の体制
  • (2)飛翔性生物の利用地の整備
  • (3)「みどり+生きもの」優先地の整備
  • (4)事業所周辺への「みどりの連続性」の提供
  • (5)事務所周辺の生物多様性保全活動への貢献
  • 5.緑地の単純化、特定化など、産業的志向からの
    脱却
  • (1)植生の多様化・多層化
  • (2)植物などの特性に合致した緑地管理
  • (3)地域への貢献・配慮
  • C 働く中で社員が
    自然との関係を取り戻す
  • 6.生態系サービスの職場での積極的享受
    (休憩所、フロア)
  • (1)文化的サービスの享受・場づくり
  • (2)供給サービスの享受・場づくり
  • 7.「無関心」「無関係」状態から、
    「全員が関係ある」状態へ
  • (1)理解と行動促進の教育
  • (2)職場・業務での関係創出

※1開発圧:棲みかの破壊。事業拠点を新たに建設することや、天然資源の採取などのために開発が行われること(サプライチェーンでの開発を含めて)、などが該当。操業による水の使用が周辺地域や水源、ひいては生きものの生息環境に影響を与える場合などもこれに含まれると考えられる。

※2外来種圧:その地域にもともと存在しない生きものが、外構や建物の脇の緑地、生垣などをつくる際に地域の外から樹木や草木を導入することがある。何気なく行われる生きものの移動が、地域固有の種の生息を脅かしたり、遺伝的な汚染の原因となることがある。

※3外来生物法の「特定外来生物の飼育、栽培、保管又は運搬」に関する規定に則り活動を実施。

フォトギャラリー

番外編:三田製作所の四季

春 桜

春 桜

(桜)

夏 緑葉

夏 緑葉

(緑葉)

秋 紅葉

秋 紅葉

(紅葉)

冬 雪化粧

冬 雪化粧

(雪化粧)

撮影時期:2014年~2015年