技術紹介

海水アンテナという
ユニークなアイデアを実現した
「絶縁ノズル」。

海水アンテナというユニークなアイデアを実現した「絶縁ノズル」。

アンテナにはいろいろな形状のものがありますが、一般的な垂直型アンテナの場合、その高さを電波の波長の1/4程度にすると効率的に電波を送受信できます。今回受信に成功した地上デジタル放送の場合、10~15cmの高さが必要になります。この高さに水柱を噴き上げることは容易でも、アンテナとしての性能を確保するにはいくつもの難題を解決する必要がありました。海水は3~4%程度の塩分を含む導体で、電気を通す性質をもっています。導体だからこそアンテナになる一方で、導体だから起きる問題もあります。

噴き上がる水柱をアンテナとして動作させるには、高周波電流を流す必要があります。しかし水柱に電流を流そうとしても、電流が海中に逃げてしまうのです。それがひとつめの課題でした。これを解決したのが「絶縁ノズル」です。一見、ごくシンプルな金属製の筒のように見えますが、「絶縁ノズル」には高周波電流の特性を利用した独自のアイデアが詰まっています。ノズルの長さを波長の1/4程度にすることで、海中への電流の流れを断ち切り、水柱に効率的に電流を流すことができるのです。

絶縁ノズル断面図

電流の流れ方の比較

海水の導電率の低さを解決するキーは水柱の太さにあった。

ふたつめの課題は、海水の導電率です。海水は導体と言っても、金属に比べ導電率が低い媒体です。その導電率の低さを補う必要があります。その答えは水柱の太さにありました。徹底してシミュレーションで検討し、高いアンテナ性能を実現する最適な水柱の太さを割り出すことに成功しました。

携帯端末などの小形アンテナのアンテナ効率が30~80%であるのに対し、「シーエアリアル®」のアンテナ効率は70%です。実用レベルの高いアンテナ性能を実現しました。今後、海水を噴き上げる高さを変えることで数メガから数ギガ周波数帯への対応も可能だと考えています。海水を利用する「シーエアリアル®」は海に囲まれた日本にとって、実用性が高い有効な技術だと言えます。

アンテナ効率