開発NOTE

失敗を恐れずに挑戦する、そんな姿勢が大切だと思う。

海水アンテナ「シーエアリアル<sup>&reg;</sup>」

この研究を始めたきっかけは、アイデアミーティングの後のお酒の席で「海水は電流が流れますよね」、そんなひと言からでした。「シーエアリアル®」ができた理由のひとつは、当社の気風にあります。「海水をアンテナにする」という大胆なアイデアも「面白いからやってみろ」と、後押ししてくれる環境があってこそ、生まれた技術だといえます。研究にGoサインが出たときはアイデアを出した本人の私でさえ、驚いたほどです。アンテナ技術は成熟した分野です。だからこそ既成概念にとらわれない柔軟な発想が必要なのです。当社には失敗を恐れず新しいことに挑戦できる、若い研究者にとって恵まれた環境があります。

今回、テレビの受信実験に成功しましたが、なぜテレビだったのか。それには理由があります。テレビを受信するには高いアンテナ性能が必要になります。私と同じ分野の方々にはこのアンテナの性能の高さを証明でき、また一般の方々には「海水アンテナでテレビが映る」というのはインパクトがあり、この技術をより広く理解してもらえると思ったからです。

この技術に「シーエアリアル®」という名前をつけましたが、私には入社した時からの目標があります。それは自分の名前のついたアンテナをつくることです。一般に使われているテレビ用アンテナは開発者の名前から八木宇田アンテナと呼ばれています。私も何十年経っても名前が残る技術、社会に残る技術をつくりたい、それが私の最終目標です。

さまざまな方の知恵を借りながら、実用化というゴールを目指していきます。

「シーエアリアル®」をどう社会に役立てていくか。用途についてはアイデアを広く募っています。ひとつは災害時の利用を考えています。地震をはじめ自然災害が起きた際、通信手段をいかに確保するかは極めて重要です。普段は使わなくても、必要なときに必要な場所で利用できるこの技術は、災害時の備えに最適だと思います。

今後の課題はアンテナ性能をより一層高めていくことです。水柱の太さだけでなく、どういう形状で海水を噴き出せば性能が向上するかなど、さまざまな角度からアプローチしていきたいと思っています。またこの装置は屋外での使用がメインになります。そのため風や雨などの対策も検討していく必要があります。

この技術はまだまだこれからです。海水を噴出する方法ひとつにしても改良の余地があり、それには専門的な知識が必要になります。当社には各分野に一流の技術者がいます。海水を噴出する技術に限らず、今後も多くの方たちの知恵を借りつつ、実用化というゴールに向かっていきたいと思います。

「シーエアリアル」「SeaAerial」は三菱電機の登録商標です。