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光アクセスシステム

双方向10Gbpsの超高速伝送を実現する10G-EPON。


技術紹介

10G-EPONシステムの開発にいち早く成功。

電話線によるADSLサービスを抜き、いまや国内におけるブロードバンドサービスの主役となったFTTH(Fiber To The Home)。FTTHが急速に広まった要因のひとつに1本の光ファイバーを複数のユーザで共有し、安価でシステム構築ができるPON(Passive Optical Network)技術があります。1990年代のSTM(Synchronous Transfer Mode)-PONから現在の主流であるGE(Gigabit Ethernet)-PONまで、三菱電機はPON技術の開発に永年取り組み、業界トップベンダーとしての地位を築いてきました。新しいアプリケーションやコンテンツが次々と登場し、ますますインターネットトラフィックが増加するであろうこれからの社会を見据え、三菱電機ではこの度GE-PONの10倍、10Gbpsの伝送速度を実現する10G-EPONシステムの開発に成功。電話局などとユーザを結ぶアクセス・ネットワークのさらなる高速化を目指し、開発を続けています。

システムイメージ図
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GE-PONが導入された環境で、
既存設備を活かしたシステム構築が可能。

10G-EPONの特長は双方向(上り/下り)10Gbpsの伝送速度に加え、既存のGE-PONが混在する環境でも導入できる点にあります。10G-EPONのベースとなるPONとは、局舎用装置(OLT)につながる1本の光ファイバーを光カプラで分岐し、複数の加入者宅用装置(ONU)につなげ、光ファイバー網を構築する方式のことです。今回のシステムでは例えば、加入者Aが10G-EPON、加入者Bが既存のGE-PONであっても、1台のOLTで対応が可能です。商用化に向けて、この特長はとても重要です。なぜならGE-PONによる光ファイバーなどの既存システムを活用しつつ、10G-EPONにスムーズに低コストでシフトできるからです。また今回のシステムは世界標準規格であるIEEE 802.3-2012に準拠しています。


開発NOTE

情報技術総合研究所 
名倉 健一 
吉間 聡

情報技術総合研究所
名倉 健一
吉間 聡

光信号を高速かつ高感度で認識し、処理できる新型ICを開発しました。

開発のキーとなったのがOLTに使用する新型ICの開発でした。光通信は光の点滅が速いほど一定の時間内に多くのデータを送信でき、伝送速度が向上します。GE-PONに比べ、10G-EPONは高速で点滅するため、ひとつひとつの光はとても小さいのです。新しいICには、その小さな光をとらえる優れた感度が要求されます。また遠くの光は小さく、近い光は大きく見えるのと同じで、長い距離の光ファイバーから届いた光は弱く、短いと強くなります。距離の異なる加入者宅からの光を正確に識別するためには、IC側で弱い信号は大きく増幅し、強い信号は小さく増幅し、均一にする必要があります。またGE-PON・10G-EPONの混在もIC開発にとって難問でした。つまり10G-EPON の光、GE-PONの光、それぞれの点滅速度の信号の強さを瞬時に判断し、処理する必要があるのです。10G-EPON専用のICとGE-PON専用のICをOLTに組み込めば、解決は簡単にできますが、2つのICを使用したのではコストが高くなります。当社では、この複雑な処理を1つのICで実現し、OLTの低コスト化を可能にしました。

光アクセスシステム
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高速化に対応するためにすべてを再構築しました。

10G-EPONは既存のGE-PONと基本的なアーキテクチャは同じですが、速度を10倍速くするためには、ICだけでなく当然、システム側もすべてを再構築する必要がありました。例えばPON方式では局舎側から加入者宅側にデータ送信のタイミングを指示するのですが、速度が10倍になればタイミングの計算も変わってきます。特に今回のシステムは1Gbpsと10Gbpsが混在しているため、計算がとても複雑でした。またデータ送信のタイミングを設定する上で、1Gbpsユーザと10Gbpsユーザの公平性も課題のひとつでした。同じ容量のデータを送った場合、1Gbpsユーザの方が速度が遅いぶん、回線を占有する時間が長くなってしまい、公平だとは言えません。すべてのユーザが不公平なく、より速く快適に利用できるシステムを設計することは、光ファイバーや機器を共有する、つまりコストをユーザ同士でシェアするPON方式にとってとても大切なことです。

10Gbps通信の今後の普及にとって、大きなブレークスルーだと自負しています。

開発をスタートしたのは今からおよそ10年前。当時はGE-PONの商用サービスがやっと始まったばかりで、10G-EPONの規格標準はまったくの白紙でした。当社では10G-EPON標準化に向けた提案活動と平行して、技術開発を進めてきました。局舎側・加入者宅側一対一での10Gbps通信はすでに実用化されていますが、PON方式で実現したことは、今後の10Gbps通信の普及にとって大きなブレークスルーだと思っています。既存のGE-PONがベースになっているとは言え、いままでにない新しいICの設計など、開発はゼロからのスタートといっても過言ではありませんでした。開発は試行錯誤の繰り返しでしたが、PON技術における当社の開発実績や開発資産が大きなチカラとなりました。さらなる低コスト化・低消費電力化など、課題は残されていますが確実に訪れるであろう10G-EPON時代に向け、スピードを緩めることなく今後も開発に邁進していきます。


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