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X線吸収効果を利用したRoHS指令対象物質高速除去技術

臭素系難燃剤を含有するプラスチック破砕片を
高速検知・除去。


技術紹介

X線吸収効果を利用したRoHS指令対象物質高速除去技術

プラスチックの自己循環リサイクルを推進する技術を開発

三菱電機は、地球の環境保全や資源の有効活用を目的とし、使用済み家電製品から回収されるプラスチックを自社製品に再利用する自己循環リサイクルに積極的に取り組んでいます。手解体後の複合部品を破砕選別して回収される混合プラスチック(微小金属や複数種類のプラスチック等の混合物)を選別回収する比重選別、静電選別技術を既に開発しています。この技術を用いて、家電製品に使用されている主要3大プラスチックであるPP、PS、ABS※1の自己循環リサイクル量の増大を進めてきました。これらの技術に加え、X線透過像方式を用いたRoHS指令対象物質※2を高速検知・除去する技術を開発し、プラスチックの自己循環リサイクル量のさらなる増大を実現しました。

第45回 市村産業賞 功績賞を受賞しました。
使用済みの家電プラスチックの高度回収・再生技術を業界で初めて開発し、「自己循環リサイクル」を大幅に拡大するリサイクル技術を確立したことが評価されました。
  •  参考 : プラスチックマテリアルリサイクル
  • ※1PP : ポリプロピレン、PS : ポリスチレン、ABS : アクリロニトリルーブタジエンースチレン
  • ※2電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令。鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルの6種類の有害物質使用を制限。

システム概念図
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大量の破砕片の臭素含有有無全数検査を実現

回収されたプラスチックを家電製品へ自己循環リサイクルするためには、RoHS指令対象物質が規制値以下であることを保証しなければなりません。RoHS指令対象物質の中でも、臭素系難燃剤を含むプラスチック破砕片の除去はリサイクル量増大への大きな壁となっていました。「RoHS指令対象物質除去技術」は臭素系難燃剤に含まれる臭素に着目し、PP、PS、ABSそれぞれの破砕片の中からX線透過像方式により臭素を含む破砕片、つまりは臭素系難燃剤を含むであろう破砕片を一つ一つ検出し、エアガンでピンポイントに除去します。この技術を比重選別・静電選別技術と組み合わせることで、RoHS指令適合化のために制限していた比重範囲を拡大することが可能になり、本技術適用前と比較し、RoHS指令適合のリサイクルプラスチック回収率が約1.3倍※3にアップしました。X線透過像方式は高速で臭素を検出できるため、量産レベルの大量処理にも対応できました。

開発NOTE

先端技術総合研究所
中 慈朗
平野 則子
先端技術総合研究所
中 慈朗
平野 則子

数千の破砕片の詳細調査からスタート

比重・静電選別後の回収PP、PS、ABS破砕片を原料にした再生ペレットについて、従来よりRoHS指令対象物質の含有評価を行ってきました。回収量を増大させるために比重選別の上限値を上げて比重差による臭素系難燃剤の排除を緩和すると、多大な時間と費用をかけて、検出された臭素が規制対象の難燃剤由来ではないことを証明するための詳細な分析が必要となります。そこで開発に先立ち、臭素の混入経緯を明らかにするため、再生前の破砕片の詳細調査を実施しました。数千個の破砕片すべてを調査した結果、(1)大部分の破砕片には臭素は含まれておらず、ごくわずかの破砕片に含まれている数%レベルの高濃度の臭素が再生ペレットの臭素濃度を押し上げていること、(2)高濃度臭素含有破砕片についてのさらなる調査の結果、RoHS規制対象の臭素系難燃剤はほとんど含まれていないこと、また、(3)RoHS指令対象物質のうち、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの4物質についてはまったく問題がないこともわかりました。つまり高濃度の臭素を含むごくわずかの破砕片を比重差に依らない別の何らかの方法で取り除くことができれば、非含有を証明するための多大な時間と費用をかけることなくRoHS指令に十分対応できる再生ペレットを大量に生産することができるのです。「高濃度臭素含有破砕片だけを検出・除去すればよい」という、詳細な調査結果から得られた発想が、この技術の開発の原点になっています。


写真上段左から混合破砕片、比重・静電選別後のPP・ABS・PS破砕片、PP再生ペレット
写真上段左から混合破砕片、比重・静電選別後のPP・ABS・PS破砕片、PP再生ペレット

多くの関係者の協力で完成できたシステム

臭素の検出方法としては、蛍光X線分析が一般的に利用されています。この方法は数ppmレベルの低濃度の臭素も検出できる反面、検出に時間を要するため大量(量産レベル)の破砕片処理には適しません。

高濃度臭素含有破砕片のみが検出対象であるため、蛍光X線分析と比較し感度は低いですが、X線透過像方式(レントゲン撮影)でも検出できるのではないかと考えました。X線透過像方式は臭素検出に使われた例がなかったため、リサイクルの現場から種々のサンプルの提供を受けながら多くのデータを積み重ね、高速処理に最適なX線源や検出器の選定と条件調整に辿りつくことができました。また、検出した臭素含有破砕片の除去には、多くの装置技術者の協力により、小さな破砕片を瞬時に吹き飛ばすことのできるエアガン方式を採用した高精度除去装置を作り上げることができました。まさに、さまざまな関係者の協力があってこそ完成できたシステムです。

X線吸収効果を利用したRoHS指令対象物質高速除去技術

プラントでの運用開始

スケールアップと検出・除去精度改善を盛り込んだ、より大量の破砕片を高精度で処理できるシステムを、2010年にはPP選別ラインに、また2011年にはPS、ABS選別ラインに導入し、大規模プラスチックリサイクル工場((株)グリーンサイクルシステムズ)での運用を開始しました。環境保護が重要な課題である昨今、「RoHS指令対象物質除去技術」の実用化は当社だけでなく、社会にとっても大きな意義があります。この技術は当社が開発を続けてきたさまざまなプラスチックマテリアルリサイクル技術の土台があってこそ生きる技術です。すなわち、比重選別・静電選別技術があるからこそ、検知・除去対象を臭素系難燃剤に特化して技術開発を行うことができました。またプラスチックを均一な大きさに破砕できる技術があるからこそ、エアガンで破砕片を除去する際の軌道計算が容易になり、ピンポイント除去が可能になりました。
今後も自己循環リサイクルの更なる拡大、選別精度の高度化を目指して、改善を続けていきます。


表彰実績

第45回 市村産業賞 功績賞を受賞

「循環型社会を創生する家電プラスチックの高度選別回収・再生技術」にて第45回 市村産業賞 功績賞を受賞しました。

環境賞 環境大臣賞・優秀賞を受賞

「使用済み家電プラスチックの高度回収・再生技術」にて(財)日立環境財団 日刊工業新聞社 第37回 環境賞 環境大臣賞・優秀賞を受賞しました。

エネルギー資源学会 技術賞を受賞

「使用済み家電のプラスチックマテリアルリサイクル技術の開発」にて、(社)エネルギー資源学会 第23回 技術賞を受賞しました。

プラスチック成形加工学会「青木 固」技術賞を受賞

「使用済み家電 回収プラスチックの高純度選別・再生 素材化技術」にて、プラスチック成形加工学会 第21回 「青木 固」技術賞を受賞しました。


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