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換気送風機用低騒音プロペラファン

ダブリュキューブファン

新形状ファンにより、大幅な低騒音化を達成。


技術紹介

5dB※1の低騒音化を実現した次世代のプロペラファン。

住宅から工場などの大規模施設まで、換気扇は快適な環境づくりに欠かせない設備です。換気扇開発にとって、最も重要なデバイスのひとつにプロペラファンがあります。三菱電機ではこの度、流体シミュレーションと音響ホログラフィ法という音源探査技術を適用し、当社従来比5dBの低騒音化を実現する換気送風機用プロペラファンの開発に成功しました。建築基準法の改正によって一般住宅でも24時間換気が義務化され、「常時回るファン」の音をいかに抑えるか、換気扇にとって大きなテーマとなっていました。最新の流体・音響技術を駆使して開発された今回のファンは、より静かな換気扇を求める声に応える次世代のプロペラファンです。三菱電機の産業用換気送風機は2011年、発売50周年を迎えました。いままでも、そしてこれからも時代に合った新しい"風"を三菱電機は提供していきます。

※1:当社産業用有圧換気扇低騒音形との比較。


音源となる風の渦を細分化・安定化する新形状ファンを開発。

今回開発されたファンの形状には、翼の先端部が湾曲した外周形状、曲率半径が変化する内周形状、滑らかな波型の前縁形状という、大きな特長があります。この3つの形状が、音の原因となる風の渦「逆流渦・剥離渦」を細分化・安定化し、低騒音化を達成しました。開発には翼のどの部分に風の渦が起きているのか、その渦がどれだけ音を出しているのか解析することが不可欠でした。それを実現したのが流体シミュレーションと音響ホログラフィ法です。この技術は従来は把握するのが困難であった風の渦と音の関係を可視化することができます。その結果わかったのが騒音の原因が翼外周部の逆流渦と翼前縁部の剥離渦にあるということです。いままで困難だった音の発生源の特定ができたことで、低騒音化するには翼のどこの部分の改良が必要か、ピンポイントでわかるようになりました。

換気送風用低騒音プロペラファン形状

開発NOTE

低騒音化が進んだ今、5dBは極めて大きな数値です。

先端技術総合研究所 
本間 直彦
先端技術総合研究所
本間 直彦

今回の開発をスタートするに当たり、5dBの低騒音化という目標を掲げました。この5dBという数字は、低騒音化が進んだ今では非常に大きな数字です。当社が50年前に産業用換気送風機の開発を始めた当時の騒音値は56.5dB、現在の製品※2が41dBです。つまり15.5dB下げるために50年かかっています。それを短い開発期間の中で5dB下げるのは非常に困難であると言えます。永年の開発ですでに低騒音化が進んだファンの音をさらに下げるには、既存の開発手法や技術だけでは困難でした。そこで導入したのが流体シミュレーション・音響ホログラフィ法です。音響ホログラフィ法は、自動車のエンジン音測定などに利用されるケースはありますが、ファンのように風の流れがある場合にはあまり適用されていません。音響ホログラフィ法は格子状に並べた複数のマイクをファンの近くに設置してファンのそれぞれの部分の音を測るのですが、風の流れがある中にマイクを複数設置すると、それにより風が乱されて、音の発生の仕方も変化する危険性があります。風を乱さずに測定するノウハウを構築するのには多くの時間を要しました。

※2:羽根径30cm機種


半世紀受け継がれてきた知識・経験・センスが大きなチカラとなりました。

騒音源を特定する技術が構築できたことはファン開発にとって画期的な一歩だと言えます。しかし開発の本番はここからです。風を制御して騒音を減らすためにはどんなファン形状にすればよいのか。前縁形状の波型のパターンも数限りなくありますし、外周形状の湾曲にしても少し角度が違うだけで効果は大きく異なります。無数にある可能性の中から、最適なものをどうチョイスするか。それには技術者の知識・経験・センス、すべての要素が求められます。中でも大きなチカラとなったのは半世紀の間、数多くの技術者によって蓄積され受け継がれてきた当社の持つ換気扇開発の知識・データだったと思います。多くの先輩技術者の経験・ノウハウと充実した開発環境、人・モノ両面での恵まれた環境が、今回の開発の成功につながったと思います。開発期間は3~4年を要しました。しかし近年の低騒音化のペースを考えれば、短期間で大きな成果が得られたと言えます。最新の流体シミュレーション・音源探査技術と永年受け継がれた知識・経験が融合したからこそ、短期間での大幅な低騒音化を実現できたのです。

流体シミュレーション/音響ホログラフィ法

製品ジャンルを超え、新しいファン開発手法を展開していきます。

新開発のファンは今後、産業用有圧換気扇などに適用される予定です。ファンと言えば、換気扇やエアコンの室外機などが思い浮かびますが、冷却の目的で実に多くの電気機器やパワーエレクトロニクス機器にファンは内蔵されてます。それぞれのファンは形状、風の流れ、音の発生源がすべて異なりますが、流体シミュレーションや音響ホログラフィ法、さらには今回の開発で得たノウハウは換気送風機用ファンに限らず、さまざまなファンの開発に適用できると考えています。製品ジャンルを超えて、新しいファン開発手法を展開していきたいと考えています。

新プロペラファンダブリュキューブファン命名の由来
ダブリュキューブファンは、低騒音化を実現するための3つの特徴である(1)翼の先端部が湾曲した外周形状(Winglet)、(2)曲率半径が変化する(Warp)内周形状、(3)滑らかな波型(Wave)の前縁形状のそれぞれの頭文字「W(ダブリュ)」を掛け合わせた(3乗:キューブ)ことを表現して命名(三菱の造語)。

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