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超高速エレベーターを支える技術

分速1,000mを超える高速走行でも快適な乗り心地を実現。

第66回電機工業技術功績者表彰 最優秀賞を受賞しました。

先進モーター制御技術により、世界最高速エレベーターの高品質な乗り心地を実現したことが、高く評価されました。


技術紹介

世界最高※1分速1,230mの超高速走行と快適性を両立。

エレベーターの性能は速さだけでなく、乗る人にとっての快適性が不可欠です。超高速エレベーターにおいて快適性を保つ上で課題となったのが「横揺れ」と「騒音」でした。今回開発した「新型アクティブローラーガイドシステム」は独自の制振技術により超高速走行で起きる横揺れを大幅に抑え、乗客が揺れを感じることはほとんどありません。また「超高速向け低騒音化技術」は分速1,000m超でありながら、一般のエレベーター並みの静かさを実現しました。この技術は中国上海市の中国最高層ビル「上海中心大厦(地上632m)」に納入した三菱電機の技術の粋を集めた分速1,230mの世界最高速※1エレベーターに搭載されました。世界一の速さと快適な乗り心地を両立した最新鋭のエレベーターのデビューです。

  • ※12016年10月現在(当社調べ)。

超高速走行による「横揺れ」と「騒音」を大幅に低減。

エレベーターにおいて、なぜ横揺れは起きるのか。その原因のひとつは、エレベーターのかごが走行する際の軌道となるレールです。レールの小さな曲がりやつなぎ目のわずかなズレが超高速走行時には大きな振動となってかご室内に伝わるのです。さらに超高速走行では、かご同士がすれ違う時の風圧も横揺れの原因になります。「新型アクティブローラーガイドシステム」はそれらの振動をセンサーで検知し、上部・下部計4箇所のアクティブ制振ガイドによって、横揺れを大幅に低減します。また高速になるほど、昇降路内を走行するかごの周囲で強い気流が生じ、気流やその乱れによって騒音が発生します。「超高速向け低騒音化技術」は新開発の流線型整風カバーなどにより、気流をコントロールして騒音を大幅に低減しました。三菱電機は豊富な経験に基づく独自の技術をさらに進化させ、分速1,000m超という新たな世界で起こる「横揺れ」と「騒音」という難問を解決しました。

超高速エレベーターを支える技術
なぜ?横揺れは起きるのか

開発NOTE

先端技術総合研究所 
宇都宮 健児 
秋吉 雅夫
先端技術総合研究所
宇都宮 健児
秋吉 雅夫

分速1,000m超の世界では何が起きるのか、
それを知ることから開発は始まりました。

「新型アクティブローラーガイドシステム」の開発にあたり、まず最初に課題となったのが"分速1,000m超の世界では何が起きるのか"。それを知るため、開発したシミュレーションモデルを用いて、いままでの速度では起きなかったかご室の揺れが生じることを確認したのです。レールに起因する横揺れの場合、従来の速度では人が乗るかご室とそれを支えるかご枠は同一方向に揺れていたのですが、分速1,000m超ではかご室とかご枠が例えば逆方向にも揺れるなど、別々に揺れることがわかりました。またかご同士がすれ違った時も、やはりかご室とかご枠が別々に揺れるのです。分速300~540mを対象とする高速エレベーター向けの従来のアクティブローラーガイドシステムでは、振動を検知するセンサーがかご枠だけに付いています。しかし超高速走行に対応するには、異なる方向に揺れるかご室とかご枠それぞれにセンサーを設置しなければなりません。同一方向の揺れを抑える、同時に起きる別々の方向の揺れを抑える。この2つの制御は意味合いがまったく異なり、難易度が数段高くなるのです。さらに、同じエレベーターでも走行条件は一定ではありません。またエレベーターは長年使用するものです。乗車人数でかごの重量は変わり、微小な揺れを抑える防振ゴムは経年変化するなど、様変わりする条件の中で常に安定した制振性能を発揮する制御プログラムを開発する必要もありました。このように、様々な実験やシミュレーションを繰り返して日々積み重ね、開発は試行錯誤の連続でした。


騒音を減らす、騒音をかご室に入れない。2つのアプローチで開発に取り組みました。

自動車でトンネルを通ると「ゴー」という風切り音が聞こえます。エレベーターも昇降路という狭いトンネルを高速で走るものなので、かごの周囲に気流の乱れが生じ、騒音を引き起こします。気流により発生する騒音は走行速度の6乗に比例して増加することが知られており、分速1,000m超ともなると従来の速度とは比較にならないほど騒音対策が重要になります。今回の「超高速向け低騒音化技術」のコアとなるのは流線型整風カバーです。風をできるだけスムーズに流して騒音の発生を抑えるよう、かご上の形状を設計しました。風で発生する騒音を減らす、騒音をかご室に入れない、この2つのアプローチによって一般のエレベーター並みの静かさを実現しました。開発当初から低騒音化の目標値はあったのですが、正直ハードルが高い値でした。対策をし尽くしたと思っても、あと一歩、目標に届かない。その時、突破口となったのが風洞実験による音源探査でした。精密なかごの模型と、ダクトの外から音源をピンポイントで特定できる特殊な装置を作り実験をしました。それまではかご上部の形状に目がいきがちだったのですが、音源探査によって新たな騒音源が見つかったのです。また、今回の開発では騒音源となる気流の発見に、いままでエレベーター開発では用いられたことのない新しいシミュレーション技術を採用するなど、分速1,000m超という未経験の速度に挑むにあたり、さまざまな新しい試みを行ってきました。

超高速エレベーターを支える技術

世界一のエレベーターをつくるという夢の実現へ

超高速エレベーターを支える技術
■上海中心大厦(イメージ図)

「新型アクティブローラーガイドシステム」と「超高速向け低騒音化技術」に共通して言えるのは、当社ではこれまで分速1,000m超で走行するエレベーターを製品として製造していなかったので、テスト・評価のための環境づくりに苦心した、ということです。「新型アクティブローラーガイドシステム」に関しては、円盤をレールに見立てて分速1,000m超での揺れを再現したり加揺器で風圧による揺れを再現する「振動模擬試験装置」を新たに開発しました。また当社稲沢製作所の世界最高レベルのエレベーター試験塔「SOLAÉ(ソラエ)」でも、実際の昇降路を用いて数多くのテストを行っています。エレベーターに限らずさまざまな分野で培ってきたシミュレーション技術、「SOLAÉ(ソラエ)」をはじめとする最先端の研究・開発施設など、当社の総合力が、今回の開発を成功に導いています。私は今回「新型アクティブローラーガイドシステム」を担当しましたが、入社以来エレベーターの開発にずっと携わってきました。入社の時、世界一のエレベーターを自分の手でつくることが夢でしたが、今回の開発で夢が実現しました。


表彰実績

第66回電機工業技術功績者表彰 最優秀賞を受賞

第66回電機工業技術功績者表彰 最優秀賞を受賞

「世界最高速エレベータの高品質な乗り心地を実現した先進モータ制御技術の開発」にて、第66回電機工業技術功績者表彰 最優秀賞を受賞しました。


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