コラム
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2002年 7月分 vol. 2
3D・IMAX映画「スペース・ステーション」でみる宇宙生活の現実感
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

── 4月25日。南アフリカの28歳の青年実業家マーク・シャトルワース氏が二人目の宇宙旅行者として飛び立った。10日間の宇宙飛行のための費用は2000万ドル(約25億円)。あまりにゴージャスなゴールデンウィーク。

写真 宇宙旅行には行きたいけど、とても・・とため息をつく人たちにお勧めの映画がある。「スペース・ステーション」。偶然にもシャトルワース氏打ち上げの日、品川のアイマックスシアターで記者発表され、撮影を担当した25人の宇宙飛行士の一人、若田光一さんもかけつけた。

 IMAX映画と言えば、巨大スクリーンに投影される臨場感あふれる映像が特徴。これまでにNASAと協力し何本もの宇宙の記録映画を制作してきた。そのなかでもダントツにカッコいいのが一作目の「The Dream Is Alive」。1985年、つまりチャレンジャー事故の前年に公開された作品で、スペースシャトルプログラム前半の黄金時代が描かれている。宇宙飛行士の表情もシャトルの中での営みも地球の景色も、すべてが洗練されキラキラ輝いている。「ゼッタイ宇宙に行きたい!」そんな思いがこみ上げてくる映画だった。

 新作「スペース・ステーション」はおまけに初の3D。期待して見た私は少々がっかり。「かっこよさ」を感じなかったのだ。その理由は「国際協力」にあるような気がした。

  国際宇宙ステーション計画には16カ国が参加していて、その中心はアメリカとロシア。NASAの洗練されたイメージと対照的に、ロシアは信頼性のある技術を重んじる(つまり古臭い)。飛行士達が生活するのは「ズヴェズダ(ロシア語で星の意味)」モジュールで、ロシアの旧宇宙ステーション・ミールを改良したもの。調理台をかねた角張ったテーブルがドーンと置かれていて、やっぱり昔ながらの缶詰の宇宙食が浮かぶ。だけどズヴェズダの一番いいところは丸窓つきの個室があること。クルー達は家族の写真やペナントをはり巡らしたマイルームで、音楽を聴いたりお菓子をほおぼったりして自分の時間を楽しんでいる。

 3~4ヶ月滞在する間には、髪の毛も伸びてくる。クルー同士で散髪するのだが、切った髪が飛び散らないように掃除機のようなホースで吸い込んでいるシーンもあって、原始的というか・・。だけど、限られた物を使って生活する宇宙のくらしってこんなもんかもな、って妙に「現実感」を感じるのは、より宇宙が身近になったってことかもしれない。



映画「スペース・ステーション」
メルシャン品川アイマックスシアター(トム・クルーズがナレーションをつとめるオリジナルバージョンを、2002年 7月26日 ~ 2002年 8月30日、金曜の20:50から上映)、きらめきみなと館アイマックスシアター(福井県敦賀市)、サントリーミュージアム天保山アイマックスシアター(大阪市)他で上映中。


IMAX社
www.imax.com