コラム
前のコラム 「ケーキ」発「梅干し」着
次のコラム 「きつねの嫁入り」が…
2003年 1月分 vol. 3
ダイニングテーブルを囲んで──ISSの食事スタイル
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

ダイニングテーブルを囲んだ食事タイムは大事なコミュニケーションの時間。(提供:NASA) ロシア料理と言えばボルシチにピロシキ、肉や野菜がつぼ焼きに入っていたりして、とっても美味。ロシアの宇宙食にはボルシチやカーシャというお粥のようなものもあるらしく、ロシアで宇宙飛行訓練を受けた野口飛行士は「なかなか美味しかったですよ」と言っていた。しかし問題は見た目。昔風のチューブや缶詰が中心で、よろしくない。

 宇宙ステーションの居住スペース「ズヴェズダ」は、ロシアの旧宇宙ステーション・ミールと基本的に同じものだから、食事もロシアンスタイルになるはず。その特徴は大きなダイニングテーブル。テーブルにいくつものふたがついていて、空けると缶詰やチューブを入れるヒーターがある。でもあのロシアの旧式な宇宙食にアメリカ人が満足できるの? と思っていたら、案の定、スペースシャトルで使っていた調理台「ギャレー」が、ズヴエズダに持ち込まれた。このギャレーでNASAの飛行士はNASA製宇宙食を調理し、食べているようだ。ロシア人飛行士はどうしているんだろう。このあたりのビミョーなところは、3月に宇宙に行く野口飛行士にじっくり聞いてみたいなー。

 NASAの宇宙食は180種類以上のメニューがあり、ISS用にさらにメニューが追加されている。たとえば、パン。1998年3月のNASAの資料によると、シナモンロールやワッフル、フレンチトーストが選べて朝食が豊かに。卵料理もオムレツ、スクランブルドエッグ、キッシュがあり、さらにオムレツもハム、野菜、チーズなどに分かれ「食事を充実させよう」感がメニューからあふれている。スープにはワンタンスープや味噌汁も発見。(ちなみに「わかめがストローに詰まった」という若田飛行士の経験から、味噌汁の「具」の開発が日本で始まったそうだ。)

 ただしメニューは増えても、数ヶ月毎日違う料理を食べられるわけではない。現在は8日間のローテーション。「月曜はシチュー、火曜はボルシチ…」などと繰り返している。フランス人飛行士はローテーションを30日に、と要求しているらしい。さすが食通の国。

 ところで以前、毛利さんたちと食事をしていたら、毛利さんが私より小食なので驚いたことがある。食べ続ける私を見て毛利さんは「効率の悪い体だね」と笑った。ガーン。宇宙でくらすには「少ない食料でたくさんの仕事をする」体が必要? そんなこと考えたこともなかった。やっぱ宇宙に行く人は違う、と実感した一言でした。