コラム
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2003年 1月分 vol. 8
ストレスフリーにくらすための「閉鎖実験」
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

 閉鎖実験をコントロールルームからモニターするNASDAの井上夏彦さん。専門は心理学。井上さん自身もロシアの閉鎖実験で1週間滞在した経験をもつ。 大型バス2台ぐらいの広さに3人で6泊7日。外出禁止。7時半起床、11時就寝。スケジュールどおりにくらし、モニターカメラがあなたたちの様子を見続けている・・・。こんな「閉鎖実験」が2003年1月17日~24日までNASDA筑波宇宙センターで行われた。

 国際宇宙ステーションで3人の宇宙飛行士が数ヶ月交代で暮らし始めてから2年以上がたち、今は6チーム目。宇宙飛行士の精神的なストレスやクルー同士の相性が、ミッションの成功に大きな影響を与えることがわかってきた。しかし宇宙飛行士はなかなか弱音をはかない。ストレスを感じているかどうかも地上からはわかりにくいし、何がストレスの原因になるかもつかみにくい。そこでストレスの原因をさぐり、感じているストレスの度合いを客観的に見つける手法をさがすための実験が今回日本で行われた、というわけ。

 この実験は5回計画の1回目。まずは「閉鎖的な環境」が与えるストレスとその影響を調べる。約200名の応募者から書類審査と面接で30歳前後の男性3名が選ばれた。いずれも宇宙飛行士になりたいなど宇宙に興味があり「モチベーションの非常に高い人たち」だ。

 試験最終日の1月24日、実験の様子を見せていただいた。ちょうど私が訪れた午前10時ごろは共同作業の時間。3人は500ピースのジグソーパズル3種をごっちゃにまぜて挑戦中。その様子はカメラとマイクで、コントロールルームからNASDA職員、医師たちが24時間モニターしている。午前11時過ぎにパズルは完成。「やったー」という歓声とともに、私物のカメラで記念撮影。集中とリラックス。なかなかイイ雰囲気のよう。

 午後には毎日約2時間、ぶっ通しで単純な計算をし続けるなどの精神的な作業負荷を与えて、その後のパフォーマンスがどう落ちるか、心理状態にどのような変化が生じるかについてのテストを行う。実験期間中にはおなかをこわす人や寝つきが悪くなる人もいて、ストレスの影響? ととれることもあったが、3人は楽しく和気あいあいとすごしていたようだ。

 今年の実験成果をひきつぎ来年は「ストレスをどんなふうに解消しようとする人がストレスの影響を受けにくいか、閉鎖環境でストレスを感じたときに、まわりからどんなサポートを与えるとストレスの悪影響を抑えられるかを調べたい」とNASDA井上夏彦さん。5年後には1ヶ月ぐらいの閉鎖実験も行いたいという。

 NASAもここ数年、宇宙飛行士のチームワークや協調性を特に重視し、海中に沈めたモジュールで宇宙飛行士が数日間、共同作業を行う訓練を実施している。またこの1月末にはカナダの雪山でNASA・カナダ6名の宇宙飛行士が3日間ビバークする訓練を行う予定。

 宇宙飛行士も有能で自己主張が強いだけじゃダメってこと。他のどの職業でもそうだけどね。