コラム
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2003年 2月分 vol. 2
メダカの赤ちゃん コロンビア号でふ化
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

STARSプログラムに参加した世界の学生たち。右端がメダカの実験を行ったお茶の水女子大学の新堀真希さん。(提供:JUSTSAP) 1月17日に打ち上げられたコロンビア号。たくさんの実験装置の片すみに、メダカの卵4個が積み込まれていた。お茶の水女子大学の大学院生・新堀真希さんが、宇宙生まれのメダカの行動を見ようと3年近く準備を重ねてきた実験だ。なかなかふ化せず気をもんでいたけれど、飛行9日目になってやっと1匹がふ化。どんな行動をとるか、注目していた。

 新堀さんは、1994年に向井千秋さんが宇宙で行ったメダカの実験を見て感動。大学生のときに、学生が宇宙実験に参加できる「JUSTSAP STARSプログラム」に応募し、選ばれた。向井さんの実験では、「宇宙よい」をしない親メダカを選び宇宙で交尾・産卵させたが、新堀さんはごくフツーのメダカの卵をもっていき、稚魚の行動を見ることにした。

 飼育装置もユニーク。完全閉鎖された水槽の中に藻やミジンコ、タニシ、ゾウリムシなどを入れて川の環境を再現。これはアメリカ・アリゾナ州のパラゴン社が開発した「エコシステム」で、ロシアの宇宙ステーション・ミールでも長期間使っている。新堀さんはパラゴン社で2ヶ月間、エコシステムを学んだ。

 STARSプログラムには世界の学生が参加していた。オーストラリアは「クモの巣作り」、リヒテンシュタインは「ハチ」、中国は「かいこ」、アメリカは「あり」の行動観察など。みなチームで参加していたが、新堀さんは一人。お茶の水大学の指導教官・最上善広教授は「最初は英語にも慣れず実験の知識もなくて苦労していたが、アメリカに行くたびに自信がついていった。外国の学生たちとも交流し刺激を受けていた」と成長ぶりに目をみはる。

 新堀さんはコロンビア号の帰還後、装置を開封しメダカの赤ちゃんと対面する予定だった。だから事故には本当にびっくりし、ショックを受けたようだ。しかし、自分たちの実験のために訓練をつみ、作業を行ってくれた宇宙飛行士の努力に報いるためにも「メダカの実験を最後までやりたい」とコメントで伝えている。

 コロンビア号には日本の高校生のタンパク質実験装置も積み込まれていた。参加6校のうち浦和第一女子高は追悼実験を行い、つくば市の茗渓学園は感謝と追悼のメッセージをNASAに送った。NASDAの吉富進氏は、受験前の学生も多く事故でショックを受けることを心配していたが、逆に彼らの前向きな反応に感銘を受けたそうだ。「彼らの宇宙への夢をつぶすことがないように、ロシアのロケット等を使った宇宙実験を検討していきたい」と吉冨氏。「宇宙開発見直し」に入る前に学生たちの声に耳を傾けてほしいと思う。



メダカ実験(JUSTSAP STARS)のページ
http://www.justsap-me.org/stars/research/experiment.html


注:JUSTSAPは日米科学技術宇宙応用プログラム(共同議長:東京工業大学小田原修教授)。STARSはSPACEHAB社の教育プログラム。JUSTSAP STARSは新堀さんを主研究者に、地上実験などを行う副研究者2校、協力校7校が参加している。