コラム
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2003年 2月分 vol. 3
宇宙人に出した「乾杯」メッセージ
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

アルタイルは高速で自転する楕円形の星。乾杯メッセージに返信する生命はこの星の周りにいる?(提供:NASA/JPL/CALTECH/Steve Golden) もし「宇宙人からのメッセージを受信!」という日が訪れたら。私たちは宇宙で一人ぼっちじゃなかった。もう自分の星で戦争なんてしてる場合じゃない。宇宙の仲間にどう返信を送るべきか、地球の頭脳を結集して国際的な協議がくりひろげられる・・。そんな日が早く来ないかな、と連日のイラク報道を見ながらつい夢想してしまう今日この頃。

 電波を使った「宇宙人探し」は1960年から続けられている。最近では、400万人が自分のパソコンを使って参加している。直径305m、世界最大のアレシボ電波望遠鏡が観測した膨大な電波を、世界中のパソコンのスクリーンセイバーで解析する「SETI@home」だ。自分のパソコンが宇宙人のメッセージを解析してしまうかもしれない興奮。しかしまだ「その時」は訪れていない。

 今のところ、宇宙人との交信は「受け身」が中心。まだ電波を使い出して100年ほどしかたっていない地球人は宇宙文明ではまだまだ後進星。進んだ星からの電波を受信するほうがむやみに発信するよりコンタクトできる確率が高い。でも過去に2回だけ、メッセージを発したことがある。そのうち1回は日本の天文学者たちが送った、って知ってます?

 1回目は1973年、コーネル大学のカール・セーガン博士と電波による宇宙人探しの第一人者フランク・ドレイク博士が、アレシボ望遠鏡で3分間メッセージを発信。あて先は2万4光年先のM13球状星団という何万個もの星の集団。ゼロと1の数字の列で、DNAの二重らせん構造や人間の姿、太陽系などを1枚の絵に表現した。

 そして2回目は1983年8月15日。集英社が企画した子供たちのためのイベントで、米カリフォルニア州スタンフォードのアンテナから、わし座のアルタイルに向けて30分間送信。当時東京天文台・野辺山宇宙電波観測所の森本雅樹氏と平林久氏が「まじめに考えた」13枚の絵。ユニークなのは原始生物やクラゲ類、魚類、両生類、類人猿から人間まで地球上の生命の進化の歴史を絵で表現しているところ。そして13枚目はアルコールの分子式と漢字の「乾杯」、英語の「TOAST」。

 彦星の住人たちはこれをどう解釈するのだろう。アルタイルは地球から17光年。2000年には届いているはずだから、2017年には「ご一緒に」と返事が届いたりして。