コラム
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2003年 5月分 vol. 3
向井万起男さんインタビュー その1
「松井はホームラン30本を目標に!」
林 公代 Kimiyo Hayashi profile

向井万起男さん。この写真を見てご本人曰く「疲れ気味のテロリスト」。現在は隔週水曜にサンケイ新聞で「数字イロイロ」連載中。  3月のある日、向井万起男さんからメールが届いた。 「・・・私の新刊書『ハードボイルドに生きるのだ』が発売されます。初のエッセイ集です・・・」。

 本屋で表紙を見て驚いた。トレンチコートに帽子、ビルの谷間にたたずむ「ハードボイルド」な男は万起男さん。「宇宙飛行士の夫」本でないことは明らかだ。週刊文春「私の読書日記」に新聞・雑誌に載った原稿、書下ろしを加えたエッセイ集だが、話題は宇宙、野球、医学、文学と幅広い。そして独特のこだわりとユーモア。ゲラゲラ笑って一気に読むと、久しぶりに「万起男さんとお話したいな~」とたまらなくなった。で、4月初旬、万起男さんファンのDSPACEプロデューサーI女史と、慶應義塾大学病院に向かった・・・。

― 「私の読書日記」の連載は、もう終了してしまったんですね。
マキオさん顔イラスト
降りさせてもらったんですよ。忙しいから。力入れすぎて疲弊しきっちゃった。毎回テーマを決めて書くんだけど、テーマを決めるために実際に紙面で扱っている本の10倍は読んでますからね。でもね、あの欄は5人が交代で書いていて、他の方が紹介した本は扱っちゃいけないんですよ。誰かに先に書かれちゃうと「あぁー、やられた、困っちゃった」って。(笑)それが2回ぐらいありましたよ。だから本を紹介してないのが時々あるでしょ。

― ふふふふ、ありますね。
  でもこれまでの「夫」のイメージからずいぶん変わりましたね。
マキオさん顔イラスト
「読書日記」っていうのが今までの僕のイメージと違うかな。
読書だけが趣味だから。

― 分析も、ですよね?
マキオさん顔イラスト
(力を込めて)すんごい大好きなの。こだわっちゃって。

― いつごろからですか?
マキオさん顔イラスト
中学からかな。野球の打率とか。
アメリカ大リーグがめちゃくちゃ好きだったから。

― どんなお子さんだったんですか?
マキオさん顔イラスト
本ばっかり読んでたの。小学校から岩波文庫とか読んで中学校でアメリカのウォルター・リップマンっていう政治ジャーナリストの本でノンフィクションに興味持ったんですよ。

― 中学から慶應でしたっけ
マキオさん顔イラスト
そう。13歳で慶應中学に入って43年間ずっといるんだもん。
歩くシーラカンスと呼ばれてる(笑)。一度も出たことないの。

― 大リーグを見て、野球をやるのではなく、分析のほうに行ってしまったんですか?
マキオさん顔イラスト
野球やってましたよ。
慶應高校軟式野球部の部員ですから。セカンドで。

― 中学は?
マキオさん顔イラスト
サッカー部。

― えっ?
マキオさん顔イラスト
ほんとですよ。中学サッカー、高校軟式野球部、大学は演劇部。
節操ないでしょ。(笑)

 アメリカ大リーグは中学以来の大ファンで「日本屈指の大リーグ通」。本書には「イチロー」がやたら出てくる。(イチローのコース別打率まで分析している!)では「ゴジラ」は?

― 松井選手にはどんなご意見を? 
マキオさん顔イラスト
イチローが天才だとすると、松井は秀才。応援はしてるけど、松井がどんなに逆立ちしても、タイトルは永久に取れない。

― 断言しますか?
マキオさん顔イラスト
とれるわけないじゃない。冷静に考えても。アレックス・ロドリゲスがいるからホームランも打点もとれないし、打率はイチローがいる。だから松井の目標は「打率3割、本塁打30本、100打点。」タイトルには結びつかないけど、同時に達成すればすごいですよ。でも今年は絶対無理。どれか一つ達成すればいい。となると3割が一番可能性があるだろうけど。でも僕の予想は2割8分。ホームランは二十数本。

― うーん、厳しいですねぇ。
マキオさん顔イラスト
甘くないのよ、大リーグって。何がすごいってピッチャーがすごい。ボールが全然ちがうの。ほんとに。それでも首位打者とっちゃうイチローは天才。2年目だって打率4位で200本安打打ってるんだから。それを松井に求めるのは無理。松井がイチローにないものって言ったらホームランなんですよね。だからホームランに徹したほうがいいと思うけどね。

― イチローはもっと伸びますか?
マキオさん顔イラスト
伸びます。今年は首位打者なんて当たり前と思ってるの。
行くぞー、みたいな。

 4月始めに既にイチローの活躍を予想していた万起男さん、恐るべし・・・(つづく)
 
向井万起男 著「ハードボイルドに生きるのだ」 講談社 本体1500円(税別)
※ 奥さまは宇宙飛行士、向井千秋さん。