コラム
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2003年 7月分 vol. 4
6畳空間で体験する4次元宇宙
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


 約10万個の岩粒の運動をスーパーコンピューターで計算。月が約1ヶ月で出来る様子が4次元シアターで見られる。(提供:国立天文台 4次元デジタル宇宙プロジェクト)  20人で6畳ほどの小部屋に入る。部屋と言ってもカーテンで仕切られているだけで丸いすが5つほど並び、屏風のように3枚のスクリーンがたっているだけのシンプルなスペース。ここが東京都三鷹市国立天文台にある「4次元デジタル宇宙シアター」。また試験的な公開だから仮スペース? でも手作りの隠れ家風な雰囲気がかえって新鮮。

 偏光眼鏡をかけると、製作者の1人、林満さんがコントローラーで操作しながら解説を始めた。これから約130億光年の彼方の宇宙の果てまで20分で往復すると言う。観測データをベースに、スーパーコンピューターを使ったシミュレーションを駆使。立体の3次元映像に時間の1次元をプラスした「4次元宇宙の旅」がこの小さな空間で体験できる。

 まずは「月」。原始地球に火星ほどの大きさの小惑星がぶつかって月ができたという「巨大衝突(ジャイアントインパクト)説」を表現。10万個の岩粒たちの運動をスーパーコンピューターで計算。巨大衝突後に岩粒が飛び散り一つの月にまとまるまでの時間はわずか1ヶ月~1年ほどだと言う。小惑星が原始地球に衝突する時には自分も「ぐるん」と振り回されるような感じが襲ってきた。自分も岩粒の一つとなって宇宙を漂っている感覚だ。

 太陽系を出て、恒星の世界、銀河系と遠い宇宙へ。ふしぎなのは銀河の分布。宇宙には銀河が集まっているところと、ほとんど存在しないところがある。宇宙初期の物質の分布にわずかな「ゆらぎ」があったことが原因らしい。こんな時はスーパーコンピューターの出番。130億年前の物質の運動と分布の変化を映像化すると・・・もやもやの中から、見事に銀河の集まりができてきた! まるで空から雪がふってくるようにダークマターの中から白く銀河が浮かび上がり、その雪が自分のところまで降ってくるようで映像としても美しい。

 見終わった後、横にいたおばさまは「細かいことにクヨクヨすることないねー」と笑ってた。そんな気分になりたい方は是非。ほぼ毎月1回公開されているが申し込み制。8月5日と7日は「ジュニア天文教室」で予約なしで見られる。


四次元デジタル宇宙プロジェクト
http://th.nao.ac.jp/~4d2u/