コラム
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2003年 10月分 vol. 2
やっと花嫁の元へ。
国際宇宙ステーション(ISS)クルー交代
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


ISS第7次クルー、キーボードを弾くのがエドワード・ルー飛行士。手前は宇宙結婚式をあげた新郎のユーリ・マレンチェンコ飛行士。(提供:NASA)  結婚したのは8月。新郎は宇宙で新婦はアメリカ。ハネムーンもお預けで宇宙と地球で離れ離れになっていた2人が10月末にやっと会える。4月末から国際宇宙ステーション(ISS)に滞在していたISS第7次クルー、マレンチェンコ飛行士とルー飛行士にようやく交代の時期がきたのだ。

 宇宙結婚式が行われたのは初めて。新郎はユーリ・マレンチェンコ飛行士、新婦はエカテリーナ・ドミトリエフさん。2人は約5年前にヒューストンで知り合い2002年末に婚約。宇宙結婚式が実現したのは2003年8月10日。NASAジョンソン宇宙センターでISSと衛星中継を結び、約200人の参列者の前にはウェディングドレス姿のエカテリーナさんとマレンチェンコ氏の等身大の写真。テキサス州法に基づき、新郎の代理人が新婦に指輪を渡した。ISSではエドワード・ルー飛行士が結婚行進曲を演奏。新婦が宇宙に投げキッスを送り式は終了。その後、二人は帰還の日を待ちわびていたはずだ。

 一方、ISS第8次クルーとして10月18日に打ち上げられるのは、ベテラン飛行士。コマンダーはマイケル・フォール。今回が6回目の飛行で168日間の宇宙滞在経験がある。1997年5月~9月に旧宇宙ステーション・ミールに滞在した時には、貨物船プログレスが衝突してミールに穴があくという非常事態が起こった。フォールらはミールが地上に落下し大惨事を招きかねない事態に冷静に対処。危機を救い、その後もミールに滞在を続けた。

ISS第8次クルー。マイケル・フォール(右)はイギリス・ケンブリッジ出身の宇宙物理学博士。アレクサンダー・カレリはラトビア生まれでRSCエネルギア社の宇宙飛行士。  フライトエンジニアはアレクサンダー・カレリ。こちらは4回目の飛行で416日の宇宙滞在がある。2001年3月に廃棄された宇宙ステーション・ミールに最後に滞在した経験をもつ。つまりこの2人は「どんな極限状態にも耐えられる飛行士」。逆に何があるわけ?と思ってNASAのプレスキットをざっと読んだところ、興味をひかれたのは2人がロシア製宇宙服を着て、ロシア側エアロック「ピアズ」から出て行う船外活動。(ISSの船外活動にはアメリカ式とロシア式の二通りのパターンがある)。来年、ヨーロッパ発の無人貨物船「ジュール・ヴエルヌ」のISSへの初飛行を計画しておりその準備作業を行う。

 ヨーロッパ、がんばってますね~。10月18日の打ち上げにはヨーロッパ宇宙機関(ESA)のペドロ・デューク飛行士も搭乗する。約8日間ISSに滞在して40時間の宇宙実験を行う。デューク飛行士は1998年に向井千秋飛行士らとシャトルに搭乗し宇宙実験の経験がある。ESAはISSに実験棟コロンバスを打ち上げる前にESA飛行士の経験を積もうとしている。

 中国初の宇宙飛行は10月15日ごろとの噂。こちらも目が離せませんね。