コラム
前のコラム 宇宙に戻ろう。NAS…
次のコラム ライト兄弟100年後…
世界宇宙飛行士会議開催記念コラム
ヨーロッパ 2029年に火星着陸!?
2003年 12月分 vol.2
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


2029年に火星着陸を目指すESAのイメージ。(ESA)  各国の探査機が火星にぐんぐん近づいている。ヨーロッパの火星探査機「マーズ・エクスプレス」のランダー「ビーグル2」は今年のクリスマスに火星に着陸する予定。(着陸時、地球に送られてくるコールサインは英ロックバンド、ブラーの曲「ビーグル2」。TV中継を見る時は耳をすましてね)

 この着陸はヨーロッパ宇宙機関(European Space Agency=ESA)の火星着陸へのプロローグだ。10月に行われた世界宇宙飛行士会議で、ESAのクロード・ニコリエ飛行士が発表した内容によると、その後は2009~15年には火星から人工衛星でサンプルを持ち帰る「サンプルリターンミッション」を計画、そして最終的には2029年に火星に人間を送りたいという。

 しかし、いきなり有人火星飛行を行おうというわけではない。ESAはこれまでロシアともNASAともうま~く協力し、飛行経験を積んできた。シャトルの運行がストップしている現在も、国際宇宙ステーション(ISS)の緊急帰還船ソユーズを半年毎に交換する機会をとらえ、2003年10月にスペインのペドロ・デュケ飛行士がISSで約1週間の宇宙実験を行っているし、2004年春にはオランダ人飛行士が同様のフライトを行う。

 さらに、ニコリエ氏はESAの計画として大型ロケット「アリアン5」での有人飛行を実現するために、数年以内にリハーサルを行うことも発表。アリアンロケットの発射場は南米ギアナにあるが、そこでまず2005年に無人のソユーズロケットを打ち上げ、そして2007年ごろ3人の飛行士を乗せたソユーズロケットをISSに向けて打ち上げる予定。自分達の発射場で実際に宇宙飛行士を乗せたロケットを打ち上げることで、有人飛行の経験を積むためだ。その後にはきっとアリアン5で宇宙飛行士を打ち上げるはず(宇宙食はスペイン料理かフランス料理かドイツ料理か・・・気になります)。

ハッブル宇宙望遠鏡の修理を行うクロード・ニコリエ飛行士(NASA)  飛行士会議期間中、4回のプレゼンテーションを行ったクロード・ニコリエ飛行士はスイス人。ハッブル宇宙望遠鏡修理ミッションなど4回の飛行経験をもつベテラン飛行士だ。ESAには現在16人の宇宙飛行士がいる。少ない飛行チャンスをめぐって熾烈な争いがあるとも聞く(チーム力を強めるために山岳地帯で頂上に向かう訓練なども行っているらしい)が、ニコリエ飛行士はあくまでソフトでその目は限りなく優しい。宇宙では「人間とは一体なんだろう、何故ここにいるのだろう」と深く考えさせられたそうだ。

 ビーグル2は火星で生命の痕跡を見つけ、私達の根源の問いにヒントをくれるかもしれない。まずは無事に着陸してクリスマスを祝うことができますように。

英アーティスト 火星ミッションに参加(2003年 7月コラム)

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)
http://www.esa.int/export/esaCP/index.html