コラム
前のコラム 締め切り迫る! 彗星…
次のコラム 遠くの銀河ベスト10…
2004年 2月分 vol. 1
変わり続ける「宇宙の駅」
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


レーガン元大統領が発表した1986年当時の宇宙ステーションの形。横にしたら漢字の「中」!フリーダムと呼ばれていました。(NASA)  宇宙ステーションの話が最初に盛り上がったのは1986年ごろだった。米レーガン大統領(当時)が一般教書演説で宇宙ステーションの建設を行うことを発表。「10年以内の完成をめざす」と言っていたから、うまくいっていたらとっくにできているはずだった。1986年作成の(旧)宇宙開発事業団が作ったパンフレットには宇宙ステーションの謳い文句に「地球軌道上の実験室」「結晶や新材料などの製造施設」「衛星などの修理を行うサービス施設」と並んで、「宇宙輸送の中継点(月・惑星への航行のための中継点)」と書かれている。だから文字通り遠い宇宙へ出て行くための「駅」だったんですね。

 しかしその後、1993年にはクリントン大統領(当時)がコスト削減のために大幅な見直しを指示。再設計チームは約3ヶ月間をかけて3つの見直し案を作成。また、ロシアが宇宙ステーション計画に参加することも決まり、NASAの飛行士がロシアに行ってロシア語を学びながら訓練するなど、それまでには考えられなかったような協力プロジェクトが進行していきます。

1961年にタイヤメーカーのグッドイヤー社が作った宇宙ステーション。当時のNASA長官も視察した。(NASA)  そして最初の宇宙ステーションの打ち上げは、なんとロシアからでした。1998年11月。2000年11月からは宇宙飛行士がくらしています。今のチームが8チーム目。今、宇宙ステーションの大よそ4割ができあがっています。宇宙ステーションの目的は各国とも変わってきています。アメリカは火星飛行など宇宙での長期滞在のための研究の場、ヨーロッパは学術研究の場、日本は研究や観測、教育など多目的スペース。これからも変更はあるでしょうが、完成後10年はNASAも含めて宇宙ステーションの運用をみんなで行うことが国際間の「お約束」として取り決められているのだから「いちぬ~けた」なんて言わせないぞ!

 さて、宇宙ステーションのアイデア自体は、かなり古くからあった。ロシアの「宇宙旅行の父」と言われるコンスタンチン・ツィオルコフスキーは1920年代に円筒型の宇宙ステーションのアイデアを発表。また、アポロ計画を敢行したフォン・ブラウンは1950年代に宇宙ステーションの構想を提案している。まだ最初の人工衛星も飛んでいない頃。フォン・ブラウンは宇宙ステーションで月着陸宇宙船を組み立てようと考えていたのだ。

1962年ごろ、NASAが検討していた宇宙ステーションの形あれこれ。(NASA)  アイデアだけじゃない。1962年にタイヤメーカーのグッドイヤー社はプラスチックとゴムで作り、宇宙で膨らませて作る宇宙ステーションを実際に作り、NASAに提案している!(左の写真)。楽しい~。

 古くから人類が憧れ続けた宇宙ステーション。まずは実際に作ってみて、いろんな人 たちが利用し、様々なカルチャーと出会い、新しい発見のある場所になればと思う。 駅って「出会いの場」だものね。