コラム
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2004年 6月分 vol.3
南極、氷河の下から狙う宇宙
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


「実際に行ってみた。」2003年12月、南極点に経つ千葉大学の吉田滋助教授。IceCube(アイスキューブ)基地はここから歩いて約10分。  南極点から歩いて約10分。氷原の地下深く、1立方km に約5000個の光電子増倍管を埋める「IceCube(アイスキューブ)」望遠鏡の建設が2004年末から始まる。ターゲットは、遠い宇宙からやってくる高エネルギーニュートリノ。未だ世界で誰もキャッチしたことがない。この野心的な国際計画に、千葉大学の吉田滋助教授たちが参加している。

 ニュートリノと言えば超新星から飛んできたニュートリノを岐阜県神岡鉱山地下のスーパーカミオカンデがキャッチ、小柴昌俊氏がノーベル賞を受賞している。しかし、IceCubeが狙うのはもっとエネルギーの高いニュートリノ。実は1993年から「とてつもない」高エネルギー宇宙線が観測されている。人類が加速器で創ることができるエネルギーの1000万倍以上。だが宇宙のどこでどうやって生まれるのかがわからない。ある人は遠くの銀河中心のブラックホールが吹き出すジェットが成因だと考え、またある人はビッグバン直後の現象が珍しい粒子の形となって生き残っていると考え、その正体はナゾに包まれている。

 解明が進まない理由の一つは、宇宙線が飛んでくる間に磁場の影響を受けて曲がってしまい、「あの方向から飛んできた」と発生源を指させないこと。それなら磁場の影響を受けず、エネルギーを保ったまま飛んでくるニュートリノで調べよう、ということになった。

 スーパーカミオカンデは、ニュートリノが純水を走る時に微かに放つチェレンコフ光をとらえるために、5万トンの純水をタンクにたたえ1万本以上の光電子増倍菅が見守る。一方、高エネルギーニュートリノは強い光を放つと考えられるが、飛来する数が少ない。だから光電子増倍管の数を多くするより、なるべく広い範囲でとらえることが重要になる。

南極点の米国アムンゼンスコット基地内にある「AMANDA(アマンダ)」ハウス。IceCubeの約20分の1規模で既に観測を始めている。南極でも半そでなんですね  そこでIceCubeは、純粋で透明な南極の氷に注目した。氷原下1400m〜2400mの1立方kmの広大な範囲に4800本の光電子増倍管を埋めていく。80度の温水ジェットで半径0.5m、深さ2.4kmの穴を開け、60個の光電子増倍管を取り付けた電気ケーブルをおろす。6年間かけて80本おろしていく計画で2009年完成予定。実はIceCubeの約20分の1の規模をもつ「AMANDA(アマンダ)」実験は2000年に完成、既に観測を始めている。

 このIceCubeは米国を中心に7カ国が参加する国際計画。総費用は約300億円で85%を米国が負担する。千葉大学の吉田滋助教授は、東京大学の大学院生だった1993年、山梨県明野村にある観測所AGASAで人類の想像を超える高エネルギー宇宙線が初めて観測され、博士論文にまとめた。それ以来「宇宙にはどれくらいエネルギーの高いものが存在するか」をテーマにしてきた実績が評価され、IceCube計画に声がかかった。

 データ収集は2005年2月頃に始まる予定。年間に数個〜数十個の高エネルギーニュートリノが観測できると期待される。吉田助教授は「世界初」に意欲を燃やしている。


「IceCube(アイスキューブ)計画」(日本語)
http://www.ppl.phys.chiba-u.jp/research/IceCube/docs/index_j.html

吉田滋助教授のページ(英語)Trip to South Poleで南極の写真が見られます。
http://www.ppl.phys.chiba-u.jp/~syoshida/

「猿でも生き残れる南極点」吉田さん執筆(日本語)南極生活の実態がわかって楽しい!
http://www.ppl.phys.chiba-u.jp/pole_survive.html