コラム
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2004年 7月分 vol.4
アポロから35年。今も続く実験。
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


アポロ11号のときに運ばれた「レーザー反射鏡」。今もこの反射鏡は地球からレーザー光を受け、送り返してくれる。(Photo:NASA)  1969年7月21日。ニール・アームストロングとバズ・オルドリンは、「静かの海」でムーンウォーク残り約1時間というときに、幅60センチほどのプリズムを一つおいてきた。100枚の鏡に覆われた『レーザー反射鏡』。アームストロングとオルドリンが月面を離れて35年たった今も実験が続いている、ただ一つの実験装置だ。

 このレーザー反射鏡は、月−地球間の距離の測定に使われてきた。米国テキサス州にあるマクドナルド天文台の口径0.7m望遠鏡からレーザー光を月面上の反射鏡に送る。反射鏡はレーザー光を受けると光が来た方向に送り返すことができる。『ちょうどスカッシュコートの角にボールをあてたように』とアポロ計画当時、この実験の責任者だったメリーランド大学のキャロル・アウェイ教授は説明する。レーザー光が月まで往復する時間を計ることで、月と地球の間の正確な距離を求めることができるのだ。

 同様のレーザー反射光はアポロ14号が着陸したフラ・マウロ高地、15号のハドリー谷にもおかれている。地球から約38万キロも離れたスーツケース大の鏡を狙うことができるなんてオドロキだ。これまでの実験の結果、月は地球から1年間に約3.8cm離れていることがわかった。月と地球の関係も永遠に安定したものでなく、微妙に変わり続けているんですね。

 また、月の中心部付近に恐らく液体状に溶けた領域があるのでは? ということもわかってきた。ジェット推進研究所のチームが、月までの距離データを解析してみたところ、月の表面が約27日周期で10センチほど上下していることが突き止められた。地球の海も月や太陽の引力で引っ張られて海水面が変形し、およそ一日に二度ずつ上下している(海面だけでなく地面も上下している。感じたことあります?)。地球と同じように月の表面も上下しているというわけ。この事実とアポロ計画で測定された月の地震の結果などから、月の中心近くに液体状のものがあると考えられるそうだ。

 NASAと全米科学基金は、ニューメキシコ州のアパッチポイント天文台の口径3.5m望遠鏡を使って、このレーザー実験を10倍の精度で続けるための基金(実験名はAPPLLO)を提供している。澄んだ空の元、より大きな望遠鏡を使うことで、ミリメートル単位まで正確な距離を測ることができると期待されている。

 7月31日は今月2回目の満月。じわじわと離れ行く月を想いながら、夜空を仰いでみて下さいね。