コラム
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2004年 10月分 vol.4
まいど1号・青木豊彦さんインタビュー(その1)
衛星作りはフットワークや。
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ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


青木豊彦さん。東大阪宇宙開発協同組合<SOHLA(そーら)>理事長。ボーイング社認定の航空部品メーカー(株)アオキ代表取締役。2002年12月にSOHLA設立。「まいど1号」打ち上げは来年度の打ち上げめざし、JAXAで10月に構造モデル試験を行った。  1平方キロあたりの工場数が日本一、東大阪の町工場の職人達が専門家や学生達と共に汗を流して人工衛星を作っている。その中心人物・青木豊彦さんはテレビCMでもパワフルなオーラを発散する人物。お会いしてみたいと思い続けていたら、そのチャンスがついにやってきた! 2004年8月中旬、東大阪宇宙開発協同組合<アストロテクノロジー SOHLA(そーら)>の事務所を訪ねた。本物の青木社長の大きな手で「まいど!」と握手され、興奮気味のスタート。

― お会いできてホントに嬉しいです。このコラムでは宇宙に関るおもしろい人を(と説明に入ろうとしたところ・・・)

O
もとい!「おもしろい人」やのうて、「いい人」ね(笑)。ま、食べて。

― さっき持ってきたお土産のお菓子が、もう出てる!

O
うちは飢えてますから。ハハハ。

― (もっと大きい箱を持ってくればよかったと後悔しつつ)、衛星はいつ打ち上がるんですか?

O
来年度中。2006年の頭になるかもしれない。まだまだクリアしないといけないところはいっぱいあるけど、みなさんのご協力のお陰で衛星はなんとか大丈夫。あとはロケット。サポーターズクラブに1600名もの人が入って応援してくれてて、打ち上げを見に行きたいという声がすごく強いから、日本で打ち上げたい。

― まいど1号はどんな衛星になるんですか?

O
今悩んでるところ。我々は衛星を作ったことがないから、まずは打ち上げることに意味がありますやんか。何に使うかなんていうのはおこがましいとも言えるし、一方では何言うてまんねんと。すぐ商売できるようにしまっせと。じゃあ二通りやろうかと。二つ考えといて途中でぱちっと決めていく。中小企業の一番の特徴はフットワークがいいこと。悪かったらやめたらいいし、よかったらいくと。臨機応変。軽いとも言うけどね(笑)。

― でも来年度打ち上げですよね? 時間は大丈夫なんですか?

O
概念設計のアイデアをすぐモノにするのは、私ら強いから。うちの工場は思いついたらすぐ形になる。とりあえず形にしてから議論しようと。それがもしうまくいかんでも、作ったという技術は残る。書類上でこれがいいか悪いかというのは我々苦手なところだし、避けたいところ。衛星作るのでも、こういう作り方もありますよ、というのをやってみたい。

 実は、青木さんの言う「こういう作り方」が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究テーマ(「高度製造技術と革新的設計の融合による汎用小型衛星の研究開発」)に選ばれ、5年間で7億円の助成金を受けることになっている。革新的設計を試行錯誤しながら実現するのが町工場流というわけ。NEDO事業のリーダーは東京大学で学生の手作り衛星プロジェクトを進める中須賀真一先生(大阪出身)。JAXAの協力も得て2機の実証衛星を打ち上げる。そして最終的には2008年以降に小型衛星PETSAT(ペットサット)()を打ち上げて、本格的なビジネスを始めたいと狙う。

― PETSATがゴールですか?

O
そう。まいど1号と2号はその実証衛星。1号機は八角柱で、基本はJAXAのマイクロラブサットの技術移転。見よう見まねで勉強させてもらってPETSATの実験機器を載せる。設計まではJAXAと大阪府大にやってもらうけど、作るのは自分らで。まずは無から有にするという段階。でも2号機ではPETSATができることの確信を得て、スポンサーをつかむためにぱちっとPRしていかなあかん。僕らは今まで宇宙にはまってなかったから見えるところもあるし、それを大事にしたいと思てます。

― 実際にやってみて、どうですか?

O
中小企業にもってこい。だって一品一品やもん。大量生産やったら大手企業に負けるけど、一品勝負やったらもってこいですよ。これは向いてるわと。最終的には宇宙から雷を予知できる衛星を作ろうと。それも、大阪大学の先生のところに行ったら「予知できる機器を作れる企業を探してる」と聞いて「ほな、私とこで作りますわ」と。そういう話がいっぱいある。宇宙のどこ行っても面白い。好奇心つよいほうなんでね。

 このバイタリティー、どこから生まれてきたのか。そしてこんな青木さんが毎日カルチャーショックを受けていることとは!?


・・・・・・・・・・・・・・次回に続く。

PETSATは衛星の様々な機能ごとにパネルを製作、ミッションごとに必要なパネルを組み合わせて打ち上げ、宇宙で展開する。パネルを大量生産できれば安く早く人工衛星を実現できる。第10回衛星設計コンテストで設計大賞を受賞した東大中須賀研究室・中村友哉さんの作品。

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東大阪宇宙開発協同組合<Astro-Technology SOHLA>
http://www.sohla.com/

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