コラム
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2004年 11月分 vol.3
まいど1号・青木豊彦さんインタビュー(その2)
「職人+若者」が宇宙を拓く
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ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


まいど1号イメージ。1号機、2号機は実証衛星だが、一般の人が参加できる仕掛けを考えたいと検討中。2機の実証衛星の後、2008年以降にCMや実験など様々な用途に使える小型衛星のビジネス化をめざす。  「東大阪から宇宙へ」。町工場の職人達+若者+専門家が一体となった人工衛星「まいど1号」作りが2005年度の打ち上げを目ざして進行中。その中心人物・青木豊彦さんは(株)アオキ代表取締役。1961年創業時は農機具の製造が中心だったが、後継ぎの豊彦さんがロボットなど新規分野に拡大、航空機ボーイングの認定工場に。なんで人工衛星を?

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子どもの頃から宇宙が好きやったし、数年前から不況で地元が真っ暗やった。製造業があかん。おまけに後継者不足。当時18歳から25歳の失業率が14%。なのに東大阪は人手不足。これはえらいこっちゃなと思いますわな。何かやらんと。

― で衛星を?

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そう。最初はロケットと思ったけど、大阪府大の東先生に聞いたら人工衛星がいいと。それで宇宙の専門家の先生たちと知り合って、学生さんや若い人も集まってくれた。余計燃えますわな。来年は赤いちゃんちゃんこを着る年やけど、まだ40歳ぐらいのつもりで頑張ってます。若い人の話聞くだけで、ぼくらにしたら毎日がカルチャーショック。

― 青木さんが? どんなカルチャーショックを?

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羨ましいぐらいパソコン使って世界に発信してる。「まいど1号」は皆に少しずつ知ってもらってきてますけど、それも隣にいる小林さんらの努力。海外の学会でも英語で発表してもらった。

 青木さんの横には統括マネージャーの小林千里さんが座っている。東大阪出身。大阪府大で航空宇宙を学び、卒業後は海外に移住する予定だったが、地元のプロジェクトに参加。

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ドイツのブレーメンの学会で、「まいど1号」のCM流したら、ずいぶん盛り上がりました。日本語で伝わってたと思う。通訳しなくても青木の気持ちがそのまま伝わるんです。

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イギリスのサリー大学のベンチャー企業で小型衛星メーカーで唯一ビジネスとして成り立ってる会社の社長にも、彼女がアタックして交流してる。熱意とパソコンやね。

― すごい・・・。小林さんは、なぜ「まいど1号」に?

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東大阪出身じゃなかったら、やってなかった(笑)。大学卒業後はスイスで友人と牧場経営するつもりだったんです。でも大阪府大の東久雄先生からこの話を聞いて「書類を作る人いるんですか?」って聞いたら誰もいないと。宇宙業界とか学会の雰囲気はある程度知ってたから、浪花節が通じないのは目に見えてわかった。だから書類書きしましょうかと。

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我々匠はものづくりは得意やけど、感性で生きてるから理論のほうは弱い。ひらめいた時に頭の中に浮かんだ図面を形にして見せられたら、若い人に継承できるしね。理論と感性がドッキングできれば、新しい産業が起きると思う。

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職人さんが昼休みにちょこちょこって作ってしまう、あの感覚ってすごい大事。でも職人さんたちの試行錯誤が無駄になることだってある。既存のシステムのいいところも取り入れて、システマティックに試行錯誤するといいんじゃないかな。

― 最強のコンビですね。ところで東大阪に活気はもどってきましたか?

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去年と今年、若い人がかなりの人数、工場に就職したと聞いてます。一番嬉しかったのは今年の春、市民病院に入院したんですけど(小林さん『静かな日々やった・・・』と呟く)看護婦さんが「青木さんのおかげで東大阪に住んでるって言えるようになった」と言うてくれた。町工場の東大阪とは言えなかったけど、人工衛星作ってる街だと。嬉しいがな。

― いい話・・・。これから大変でしょうけど、打ち上げが楽しみですね。

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ここまで来るのに、正直言って大分頭打ったけど、若い人や友だちに助けられた。我々の予算は5年間に2機の衛星を打ち上げ費用も込みで7億円。衛星一つ1億円以下で作らなあかん。チャレンジがなかったらどうにもならん。自分では、日本で初めて鉄道が新橋から横浜まで走った時に「汽笛一斉新橋を行く」という歌が流れて大きいイベントがあって、日本がいっぺんに近代文化になったように、宇宙を開拓していきたい。子ども達に夢を与えたい。純粋に少年みたいな気持ち。見とってよ。あなたも記事書くだけやのうて、もう参画してんねんで。さ、食べて(笑)。



携帯電話(ボーダフォン)で青木社長の声が着信ボイスに!「まいど!」「メールやで!」「電話やで!」と、こてこての大阪弁。2週間に1回更新のコラム、壁紙ダウンロードもあり(すべて無料)。「関西(or地域)メニュー→What'sNew→SPECIAL企画→みんなで人工衛星を打ち上げよう」
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