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2005年 11月分 vol.3
「はやぶさ」小惑星のかけら採取へ。ライブ中継に注目。
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


 地球から約3億キロ彼方の小さな星「イトカワ」の周りで、探査機「はやぶさ」が虎視眈々と獲物を狙っている。ほら、下の写真で小惑星の右端にうつるのが「はやぶさ」の影。リボンを縦にしたように見えるのは、大きな太陽電池。史上初の試みが成功するか、最大のクライマックスは、この週末。ライブ中継もあるので、是非注目を。
11月12日、「はやぶさ」が上空60~75m上空から撮影した小惑星「イトカワ」。右端に移る、「はやぶさ」の影、こんなちっちゃな探査機が、こんな高解像度の画像を送ってくるなんて、感動物ものです。(提供:JAXA)
 何度か書いているとおり、日本の小惑星探査機「はやぶさ」は世界最先端の技術がつまった、野心的で非常にチャレンジングなミッションだ。高性能エンジンで小惑星まで往復、小惑星にタッチダウンしてその「かけら」をとり、地球に持ち帰る。世界初の挑戦が目白押し。研究者達は少ない予算のなかで一からアイデアを絞ってきた。その想いが、業務用冷蔵庫の一回り大きいぐらいで、重さは軽自動車以下という4年の長旅でぎっちり仕事をするにはかなり小ぶりな「はやぶさ」につまっている。(「肉屋のように」グラム単位でそぎ落とす重量制限のために、泣く泣く諦めた機器多数だそう)。研究者達は祈りに似た気持ちで、今も「はやぶさ」にコマンドを打ち、見守っているに違いない。不眠不休で。

 さて、「はやぶさ」は11月19日(土)21時(日本時間)、「イトカワ」に向けて降下を開始する。20日(日)午前3時半ごろ、高度600mに到達。午前5時、タッチダウンをするかどうかの「Go/No Go」判断。午前6時ごろ、88万人の名前を搭載したターゲットマーカーを放出。そしていよいよ「イトカワ」に降り立ち、約1秒で獲物をとる!

 その場所は写真の、Point-Aの丸で囲った場所。JAXAの解説文で見ると、「ミューゼスの海」の波打ち際にあたり、砂利のサイズも細かい場所ということになっている。(ちなみにこの写真は「史上最も詳しい小惑星の写真」。)JAXAの的川泰宜先生が日本惑星協会に書かれているメールマガジンによると、「動いているグランドキャニオンにジャンボ機で着陸するより難しく、アメリカもやったことのないような、技術的チャレンジになる」らしい。逆に言えばこれに成功すれば、ものすごい快挙ってことだ。

 ただ、無理してお土産をとって、「はやぶさ」が地球に帰ってこられないのも困ってしまう。たとえば、「はやぶさ」は大きな太陽電池パネルを羽のように広げていて、羽がどこかにぶつかってしまうと、壊れる危険性もある。 障害物を調べるセンサーがあり、本体が30度以上傾くと上昇するようになっているとのこと。聞けば聞くほど、ハラハラするなぁ。

 「はやぶさ」が「イトカワ」にタッチする歴史的瞬間、管制室の様子をライブで見られる予定。ドキドキの瞬間を共有できるのも、このミッションの大きな成果だろう。


「はやぶさ」ウェブ情報 11月19日午後9時から
http://www.isas.jaxa.jp/home/hayabusa-live/

「はやぶさ」管制室のライブ中継(20日午前2時~9時)音声なし
http://jaxa.tv/