コラム
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2005年 12月分 vol.2
「1秒」プラス。2006年1月1日午前8時59分。
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


国際宇宙ステーションから撮影した月と地球(2005年2月)。宇宙では地球の周りを90分で一周してしまうから、時間の感覚も地上とはずいぶん違うはず。時間って不思議。縛られずに生きたいものです。(NASA)  師走の忙しい時期。「1日が24時間なんて短すぎる!」と思っているかたも多いのではありませんか? 実は1日の長さはちょっとずつのびているんですよ。

 かつては私たちの時間は地球の自転を一日24時間として、時計代わりに使っていた。1958年からはセシウム原子を利用した原子時計が登場。原子時計で計測すると、地球の自転の時間が遅れていることがわかってきた。(1958年に計測を始めてから今まででそのずれは33秒に達している!)だけど、私たち地球に生きる生物は、やっぱり日の出や夕焼けに時の流れを感じて 目覚めたり、夕食の支度を始めたりするわけで、いくら正確だからと言われても「原子」に時間を決められるというのは、ぴんと来ない。

 このまま原子時計にそった時間で生活すると、だんだん地球の自転の遅れとの「ずれ」が広がっていって、たとえば遠い将来、時計では昼近くになっても太陽が昇ってこない、なんて変な事態になりかねない・・・というわけで、原子時計と地球の自転を調整し、何年かに1回、原子時計に1秒加えるなどの「うるう秒」を実施することで、地球の自転と原子時計で決まる時刻の差がプラスマイナス0.9秒以内になるようにしている。

 1972年に「うるう秒」が実施されてから2003年7月まで22回の「うるう秒」が行われてきた。そして23回目が、7年ぶりに実施されることになった。日本時間で2006年1月1日午前8時59分59秒の次に「59分60秒」が挿入される。つまりこの1分間だけ「61秒」あることになる。なんだか元旦から、得した気分になりませんか?

 このままいくと、地球の自転ってどのくらい遅くなるんでしょうね。地球の自転が遅くなるのは、「潮汐摩擦」が原因と考えられているけれど、その他にもさまざまな要因が考えられ、自転は一定の割合で遅くなっているわけでもないらしい。

 地球が約46億年前にできたころには、1日は10時間代だったと考えられているし、今から100億年~200億年ぐらいたつと、地球の自転周期と月の公転周期は一致して、40日ぐらいかけて、互いに同じ面を向きながらゆっくり回るとも言われている。その状態が月と地球の落ち着きどころなんだそうだ。ちなみに、月は毎年約3.8センチ遠ざかっているから、その頃はかなり小さく見えるんでしょうね。

 もっとも、太陽の寿命はあと50億年ぐらいと言われているから、その前に地球も月も膨らんできた太陽に飲み込まれてしまうことになるでしょうけれど。


国立天文台アストロ・トピックス(167)「7年ぶりのうるう秒」
http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000167.html