コラム
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2006年 7月分 vol.1
地上400kmの「はしご乗り」。船外活動の妙技
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


全長約30mのロボットアームの先で、足場がどのくらい揺れるか等試験中の飛行士達。(NASA)  7月4日午後(日本時間7月5日未明)、打ち上げられたスペースシャトル・ディスカバリー号。飛行3日目に国際宇宙ステーションにドッキングし、5日目には第一回の船外活動(EVA)が行われた。やはりEVAは宇宙飛行の華ですね~。延長ブームのついたロボットアーム(全長約30m)の先端に宇宙飛行士が乗って、足場のゆれ具合を確かめたのだが、「イナバウアー」のようにのけぞったり、かがんでみたり、片足になったり、二人でぶら下がってみたり。まるで江戸の火消しの「はしご乗り」の技を見ているようだった。

 シャトルのロボットアームには、コロンビア号の事故を受けて、検査用のセンサー付ロボットアーム(OBSS)が取り付けられている。(OBSSの開発にはNASAのロボットアームの第一人者、若田飛行士も参加している。)アームの先端にはテレビカメラと2基のレーザーセンサーが取り付けられて、機体の翼やおなかの部分に亀裂や損傷している場所がないか詳しく検査する。今回のミッションでも飛行2日目と4日目に検査を実施した。その結果、耐熱シールドは全体的に「きれい」で問題なし、と判断されたようだ。よかった。

ロボットアームの先に、検査用のブーム(OBSS)を 
つけた状態。上の写真ではこの先端に宇宙飛行士が乗っている。(NASA)  だが、もしこの検査で「傷があり修理が必要」と判断された場合には、宇宙飛行士がロボットアームに乗って、傷のある場所まで移動し修理するケースも考えられる。その場合に備えて、30mもの長さのあるアームの先端に宇宙飛行士が乗って作業しても大丈夫なの? ということを確認したわけ。船外活動を行ったピアーズ・セラーズ飛行士と、マイケル・フォッサム飛行士は、最初は慎重に動いていたものの、どんどん動きが大胆に。バックには丸く弧を描く地球。なんたって地上400km。「はしご乗り」以上のスリルだ。実際にはなるべく行わないですむほうがよい作業なのですけどね。

 飛行6日目には記者会見が行われたが、クルー達は終始にこやかで楽しそう。会見の後半はヨーロッパと結んで、ドイツ人飛行士で国際宇宙ステーション(ISS)の長期滞在に入るトーマス・ライター飛行士への質問コーナー。「得意のギターはいつひくの?」「あなた自身の船外活動は?」など質問が次々に。今は忙しいけど、ギターはひきたいとか、シャトルミッションが終わったらISSクルーとして船外活動の準備に入る、と答えたライター氏は、記者会見の最後に宙返りの大サービス。

 1年に1回の「七夕」ミッションとなっていたシャトルも、この飛行を無事に終了させて、早くISSの建設を再開させてほしいものだ。「きぼう」打ち上げが待っている。


JAXA 国際宇宙ステーション利用補給フライト
http://iss.sfo.jaxa.jp/iss/ulf1.1/index.html

NASA STS-121
http://www.nasa.gov/mission_pages/shuttle/main/index.html