もし地球以外で生命が発見されたら? 21世紀最大の発見に違いないし、その日が楽しみでたまらない。もちろん知的な隣人なら興奮は絶好調に高まるが、現実的にはコミュニケーションしえない原始的生命である可能性が高いだろう。それでも地球以外の生物は、「生物がいかに多様か」教えてくれるだろうし、何より2つあれば他にもたくさんあるはず。我々はこの宇宙で孤独ではない」という事実が地球文明にもたらす意味は限りなく大きい。
東京・お台場にある日本科学未来館で話題の「エイリアン展」の関連イベントとして3月20日に行われた長沼毅さん(生物学者。彼の名刺の肩書きは『吟遊科学者』。北極、南極、深海、砂漠と辺境の地の極限生物を研究している)と佐々木晶さん(惑星科学者)のトークライブは、太陽系内に生命が存在する可能性が、想像以上に大きいことがわかって刺激的な内容に満ちていた。
たとえば、長沼氏が「生物が生まれた確率は100%」と言い切るのは、木星の衛星エウロパだ。木星のエウロパって、太陽からかなり遠いはずなのに生命が生きられるの? と一瞬、疑問に思うかもしれない。確かに生命に必須と思われる「液体の水」が存在するためには、地球ぐらいの位置がちょうどいい。だがそれは「天体の表面」の話。「天体の中」を考えると、もっと温度が高くなるので意外に範囲が広がるという。
エウロパは表面は氷に覆われているが、その下には液体の水の海があり、海の下の火山活動が海を温めていると考えられている。太陽光は地球の4%しか射さないので光合成を行うような生物はいないはずだが、火山活動のエネルギーで生きる生物がいると考えられる。実際、地球でも約30年前に光が届かない深海(深さ約2700m)に熱水が吹き出し、その回りに生きる生物が発見されている。エウロパでも同じことが起こっていることは十分ありえるではないか!
佐々木氏は「昔、凍っていた時代の地球はエウロパに似ていたかもしれない」という。過去に地球は何度も全部凍ってしまった時代があり、地球表面の生き物は死に絶えたが、氷の下の海で生命たちが生き延びていたかもしれないと。そこには、水のもつ「不思議な性質」が深く関与している。たいていの物質は固体のほうが液体より重い。だが、水は逆に固体(氷)が液体(水)より軽いために、氷が水の上に浮く。もしこれが逆で、氷が下に沈むとしたら、液体の海は存在できずにすべて凍りつき、地球の生命は絶滅しただろう。つまり私たちは今ここにいないことになる。長沼氏曰く「水って本当にありふれた物質なのに、この宇宙で一番奇妙なんだよね」。水の奇妙さのおかげで私たちが生きてるって、なんとも不思議な気がしますね。
エウロパや木星の探査を、ヨーロッパや日本が協力して行おうという探査計画ラプラスが10年か15年後の実現を目ざしているらしいので、期待しましょう。 太陽系の仲間にぜひお目にかかりたいものです。
エウロパのほかには、土星の衛星タイタンもかなり面白い。こちらは液体の水でなく「液体のメタン」がある。長沼氏が言うには、メタンは水と違ってどちらかと言えば油っぽいので、地球生命とかなり異なる生命体があり得るという。油の海で生きる生物ってどんな形でしょうね。考えるだけで楽しくありませんか? エイリアンって、どこか遠くにいるイメージだったけど、案外近くで、発見されるのを待っているかもしれませんよ。
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