コラム
星空の散歩道 国立天文台 准教授 渡部潤一
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vol.33
夏の夜明けの月没帯食

 夏休みは、夜更かしができるのと共に、夜でもそれほど寒くないので、星の観察にも最適である。特に、明け方まで起きて、星空を眺めていると、夏の夜に多い流れ星もたくさん見ることができる。昨年も紹介したように、8月中旬にはペルセウス座流星群が活動する。年間の三大流星群の一つで、その流星の数の多さは折り紙付きである。とりわけ毎年8月11日から14日頃には最も活発となり、空が暗く、星がよく見えるところでは、1時間に50個、場合によっては100個近い流れ星を数えることができる。今年のペルセウス座流星群の極大日は8月12日夕方とされている。今年は夜半前には月明かりが邪魔をしているが、明け方近くには沈んでしまうので、12日明け方か、13日の明け方には多くの流れ星が期待できる。今年も、国立天文台では、ペルセウス座流星群にあわせてキャンペーンを行うので、そちらも参考にしながら、ぜひ明け方の夜空の流星の乱舞を楽しんでほ しい。

2008年8月17日の夜明け前に見られる各地の「月没帯食」。月没時刻が遅い沖縄では、食が最大となる頃に月が地平線に沈む様子が見られる。(提供:アストロアーツ)

 また、今年の夏はちょっと変わった現象もある。月没帯食である。8月17日の夜明け前、月が欠けたまま西の地平線へ沈んでいく現象である。月食の状態で、欠けたままのぼってくるのを月出帯食、欠けたまま沈むのを月没帯食と呼んでいるが、今回は後者である。世界的に見ると、西アジア、ヨーロッパ、アフリカなどでは8割ほど欠けた部分月食が見られる。昨年のように完全に地球の影に入り込んでしまう皆既月食とはならないが、これらの地域では食の始まりから終わりまで見ることができる。しかし、日本では月食が始まってすぐに月が沈んでしまう地域が多い。しかし、なんとか欠けた月が地平線に沈む様子を眺めることができる。食(本影食)のはじまりは、明け方の4時40分ごろとなる。

 実は、この時刻には東日本では、月が殆ど沈みかけている。札幌の月没は4時42分なので、北海道では欠けた月は殆ど眺められないだろう。西に行くほど月没時刻が延びるので、欠けた月を眺める確率は高くなる。仙台での月没時刻は4時53分で、月がどの程度欠けたかを示す数値である食分が0.22、東京では月没時刻5時02分で食分0.33、京都では月没時刻5時19分で食分0.52、福岡では月没時刻5時44分で食分0.73、そして那覇では月没時刻6時05分で食分0.81となる。今回の最大食分は0.81なので、沖縄ではほとんど食が最大になった頃に月が地平線に沈むことになる。

 一般に言えば、近畿よりも西の地方でないと、月食を観察するのは難しいかもしれない。しかし、すでに明るくなった夜空で白く残った月がかけ始めて、同時に沈んでいく月没を眺めてみるのも悪くないだろう。明けていく夜空では、月のコントラストも低くなっていくので、双眼鏡で眺めるのが最適である。もともと皆さんは月没というのを眺めたことは少ないのではないだろうか。太陽が沈む日没はよく眺めた経験はあるだろうが、月が沈むのを眺めるチャンスはそれほどなかったはずだ。こういう機会でもなければ、なかなか眺めることもないかもしれないので、挑戦してみるのもおもしろいだろう。さらにいえば、九州や沖縄では、わずかの間ではあるが、月没直前に東から太陽が昇ってくる。そう、東の太陽と西の欠けた月とを同時に見ることができるかもしれないのである。月食とは、太陽-地球-月と、一直線に並んで起きる現象である。そういう意味では、うまくいけば、この並びを体感できるかもしれない。

 17日は、ちょうどお盆の日曜日でもある。ペルセウス座流星群を眺めたついでに、明け方まで粘って、この月没帯食を眺めてみてもいいし、あるいは夏の夜明けに早起きして眺めてみてもいいだろう。