コラム
星空の散歩道 国立天文台 准教授 渡部潤一
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vol.42
明け方の空に海王星を探そう

 今年は世界天文年である。ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を宇宙に向け、数々の発見を始めた1609年から数えて、ちょうど400年目を記念して設定されたものだ。世界天文年にちなんで、実際に当時と同じような小さな望遠鏡でガリレオの偉業を追体験しよう、というプログラムが実施されている。世界天文年日本委員会がすすめる、その名も「君もガリレオ」 。ホームページを見て頂くと(下記よりご参照ください)、季節ごとに様々な観察対象が選定され、観察方法が詳述されているだけでなく、スケッチ用紙やワークシートまで用意されている。それだけで自由研究になってしまうほどだが、今回はこのプロジェクトでは決して取り上げられそうにないガリレオの追体験裏プログラムをご紹介しておこう。それは海王星の観察である。

2009年5月27日深夜から明け方にかけて木星と海王星が大接近。(提供:ステラナビゲータ/株式会社アストロアーツ)  えっ、と思う方はかなりの天文通だろう。そう、海王星の発見は、1846年。ガリレオが活躍した17世紀初頭から100年以上もたってからである。ガリレオが海王星を見ていたことはないはずだ。そう思うのも無理はない。実際、1980年までは誰もがそう思っていた。

 ところが、実はガリレオは1612年12月28日と1613年1月28日に海王星を見ていたのである。彼のスケッチを詳細に分析していくと、それとは知らずに海王星を観測していたことが明らかになった。それも、彼が地動説を確信する重要な発見を成し遂げた木星の観測時に、そのそばに輝く恒星として記録されていた。海王星は、彼の望遠鏡でも見えるほど明るかったものの、その見かけの動きは木星に比べて遅かったことや、当然ながら星図などが整備されていなかったことから、偶然、観察した海王星を惑星と認識することができなかったのである。

 今年は、ガリレオが観察したように木星と海王星の接近が何度か起こる。その条件のよい接近は、5月27日明け方に起こる。実際の最接近は16時過ぎだが、これは昼なので、見えない。チャンスは27日の明け方になるだろう。接近距離は角度で30分を切っている。月のみかけの直径より近づくため、かなり倍率の高い双眼鏡や望遠鏡でも、海王星は木星と同じ視野に入るはずである。

 海王星の明るさは、約8等。肉眼ではもちろん見えないし、望遠鏡を使って星図を頼りに探そうとしても、8等程度の恒星になると、まわりにもやたらにたくさんあるので、よほどの年季の入ったマニアでなければ、海王星を探し出すのは難しい。しかし、今回は木星という極めつけの目印がある。木星は肉眼でもすぐにわかるほど明るいので、接近時には木星に望遠鏡を向けて、その回りを探せば、普段はなかなか見えない海王星を探し出せるというわけである。

 木星は、深夜過ぎには東の空から上ってきて、2時過ぎには南東の空に輝く。その夜空では東の低空に上ってくる金星を除けばもっとも明るいので、すぐにわかるだろう。まずは望遠鏡を木星に向けさえすれば、そのそばに輝く海王星を見つけることができるだろう。夜空の条件がよく、口径4-5cmほどの望遠鏡があれば、簡単に見えるはずである。なお、今年は7月9日から10日にかけてと12月21日にも木星と海王星が接近する。後者は夕方の低空で条件が悪く、前者は観測条件はよいものの、接近距離はやや大きい。いずれにしろ、ガリレオの気持ちになって、ぜひチャレンジしてほしい。

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