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REALで堪能する「京の彩り」REALで堪能する
「京の彩り」

季節のうつろいで様々な表情を見せる古都京都。
その『彩り』を京都に生まれ京都を知り尽くしたフォトエッセイスト 星野佑佳氏がご紹介します。

フォトエッセイスト /
星野佑佳

フォトエッセイスト / 星野佑佳

京都市生まれ、在住の女性フォトエッセイスト
00年 海外放浪の撮影旅へ出発、帰国後は日本の自然風景を求め、全国を旅しながら撮影。05年頃から、旅のかたわら、地元である京都の風景や祭を撮影、現在に至る。
写真を担当した一般書は「京都12ヶ月 年中行事の楽しみ方」「京暦365日」他多数。全国の風景写真はクラレグループの企業カレンダーやJR北海道のキャンペーンポスターなどにも起用されている。

春がゆく春がゆく

鮮烈な朱色が目の前に現れる。
数日前まで淡色の桜に夢見心地だった私を目覚めさせてくれたのは、長岡天満宮に咲く霧島ツツジのビビットな色だった。

春から初夏、京都は色とりどりの花で艶やか(あでやか)に飾られる。
カラフルな赤や黄色に慣れた頃、涼やかな青をまとう花が次々と姿を現す。杜若、菖蒲、桔梗・・・なかでも紫陽花は、幾種類もの青の絵具に水滴を落とし滲ませたような、濃淡豊かな青い世界を作りだす。

その色を存分に味わいたくて、もう十数年も前になるだろうか、紫陽花の咲く、あるお寺に足を運んだ。広い山内を歩いていると、花の根元に隠れるように、小さなお地蔵さんが佇んでいる。笑みを含んだ口元のほんのり赤い紅が、紫陽花の青によく映える。思いがけない宝物をみつけた嬉しさに小躍りしながら写真を撮り、「また来るからね」とお寺をあとにした。

ところが、次に訪ねた時、お地蔵さんは姿を消していた。
お寺の方に行方を問うても、その存在すら知らない様子。
「あの時、お地蔵さんもきれいな花を眺めにきていたのかもしれない。」
そう思うことにして、再会を諦めた。
やがて青い花に誘われて、京都に梅雨がやってきた。

そんなある日、牛若丸が修行したという鞍馬山を訪れた。
緑に覆われた参道を登っていると、急に辺りが真っ暗になり、頭上の木々がザワザワと騒ぎ出す。
鞍馬天狗の出現を思わせる怪しい気配に不安を覚え、足をとめたその時、
ぽっ・・・とオレンジ色の明かりが灯った。
参道の朱灯篭が、暗さに反応して自動点灯したのだ。 

「大丈夫。」

京都には鞍馬天狗もいるし、お地蔵さんもたまには歩いたりするけれど、大丈夫。
迷わず歩いてゆける道を、先人たちが作ってくれているから。
そんな危うさと安堵感が、京都にはある。
ストンと納得した私は、昼と夜が混じり合う階段をゆっくりと上がりはじめた。
降り出した大粒の雨に、夏の匂いを感じながら・・・

  • 霧島ツツジ(長岡天満宮 4月下旬撮影

    4月下旬、真っ赤な霧島ツツジが長岡天満宮参道に溢れんばかりに咲く。ピンクや白いツツジは、京都のあちらこちらで見られるが、朱色のツツジの群生は意外と少ない。

  • 桔梗(智積院 6月中旬撮影

    桔梗が寺紋の智積院。参道の脇に桔梗が咲き揃い、間近で鑑賞できるのが魅力。梅、桜、紫陽花、蓮など、隠れた花の名所でもある。他に桔梗の名所としては、廬山寺、天得院(東福寺塔頭)などが有名。

  • 紫陽花(丹州観音寺 6月下旬撮影

    福知山市にある丹州観音寺。100種一万株の紫陽花が咲き乱れる様は圧巻で必見。広い境内の中でも、仁王門周辺が特に見事。他に紫陽花の名所として、三室戸寺、岩船寺、善峯寺、藤森神社、三千院などがある。

  • 新緑(鞍馬寺 5月下旬撮影

    紅葉の名所は新緑の名所。京都には数えきれないほど、新緑の美しい場所がある。朱灯篭の続く鞍馬寺や貴船神社、苔の美しい祇王寺や宝厳院、山門から新緑の参道を見下ろせる南禅寺は、特にお薦め。

鮮烈な朱色が目の前に現れる。
数日前まで淡色の桜に夢見心地だった私を目覚めさせてくれたのは、長岡天満宮に咲く霧島ツツジのビビットな色だった。

春から初夏、京都は色とりどりの花で艶やか(あでやか)に飾られる。
カラフルな赤や黄色に慣れた頃、涼やかな青をまとう花が次々と姿を現す。杜若、菖蒲、桔梗・・・なかでも紫陽花は、幾種類もの青の絵具に水滴を落とし滲ませたような、濃淡豊かな青い世界を作りだす。

その色を存分に味わいたくて、もう十数年も前になるだろうか、紫陽花の咲く、あるお寺に足を運んだ。広い山内を歩いていると、花の根元に隠れるように、小さなお地蔵さんが佇んでいる。笑みを含んだ口元のほんのり赤い紅が、紫陽花の青によく映える。思いがけない宝物をみつけた嬉しさに小躍りしながら写真を撮り、「また来るからね」とお寺をあとにした。

ところが、次に訪ねた時、お地蔵さんは姿を消していた。
お寺の方に行方を問うても、その存在すら知らない様子。
「あの時、お地蔵さんもきれいな花を眺めにきていたのかもしれない。」
そう思うことにして、再会を諦めた。
やがて青い花に誘われて、京都に梅雨がやってきた。

そんなある日、牛若丸が修行したという鞍馬山を訪れた。
緑に覆われた参道を登っていると、急に辺りが真っ暗になり、頭上の木々がザワザワと騒ぎ出す。
鞍馬天狗の出現を思わせる怪しい気配に不安を覚え、足をとめたその時、
ぽっ・・・とオレンジ色の明かりが灯った。
参道の朱灯篭が、暗さに反応して自動点灯したのだ。

「大丈夫。」

京都には鞍馬天狗もいるし、お地蔵さんもたまには歩いたりするけれど、大丈夫。
迷わず歩いてゆける道を、先人たちが作ってくれているから。
そんな危うさと安堵感が、京都にはある。
ストンと納得した私は、昼と夜が混じり合う階段をゆっくりと上がりはじめた。
降り出した大粒の雨に、夏の匂いを感じながら・・・

REAL 開発者による技術解説REAL 開発者による技術解説

京都製作所
AVディスプレイ製造部
技術第2グループ
志水 浩二

春から夏への移ろいを知らせるように長岡天満宮に咲き誇る霧島ツツジの鮮やかな赤はREALの大画面で鑑賞するといっそうその美しさを堪能する事ができます。

また、レーザーバックライト技術の色彩美で、新緑の緑の中に光の当たり方や葉の重なりによって生まれるきめ細かな階調など、小さい画面やプリントでは気付きにくいディテールを味わうのも面白いでしょう。

見るだけでなく、写真を撮る事がもっと楽しくなりますよ。

  • 春がゆく
  • 夏の夜の夢
  • 実り色
  • 紅の記憶
  • 今年もよい年
  • 溢れ