森内九段インタビュー 大一番で“勝つ”“カレー”の真実 将棋の森内俊之九段による、あの竜王戦での伝説の注文「カツカレー」。本人が語る、勝利のカレーに潜んでいた秘密。そして勝者になるためのメンタリティとは……。

森内九段 PROFILE

PROFILE

森内 俊之(もりうち としゆき)九段

1970年生まれ。将棋棋士。十八世名人資格保持者。同学年の羽生善治三冠(十九世名人資格保持者)とは小学生当時からしのぎを削るライバル関係。2013年の竜王戦における「不敗のカツカレー」はネット上などで話題に。今回の企画を受けて自ら台所でカレーを試作するなど、入念な準備に定評がある。好きな駒は飛車。実家のカレーはチキンカレー。

2013年11月29日、激闘の竜王戦を制した棋士の森内俊之さん。
9年ぶりの竜王位奪還を圧勝で決め、ネット上は「強すぎる」「もう神レベル」と賞賛の嵐に。しかも勝利した第1、2、4局目の昼食にカツカレーを、そして竜王への復位を決めた5局目にはウインナーつきのビーフカレーを選択し、見事竜王に返り咲いた ──。

カレーへの期待にも、できる限り応えていきたい(笑)───

― 本日の企画ではあの竜王戦で盛り上がった「カツ」、そして「ビーフカレー」についていたウインナー(winner)をモチーフにした「もっと勝つカレー」を召し上がっていただきました。ずばり、お味はいかがでしたか。

森内カツの部分がとても印象的でした。ふつう、豚のヒレやロースで来るところ、加工品のウインナーで来るとは。なるほど! と妙手に感心させられました。すごく食べやすくておいしかったですね。こんなふうにメーカーさんの商品に関係するお仕事はあまりなかったので、最初、お話をいただいたときにはびっくりしましたけど(笑)。

― 森内さんのカレー好きは将棋ファンにはおなじみです。とりわけあの竜王戦は「必勝のカツカレー定跡!」と、ネットもずいぶん盛り上がりました。

森内最近のタイトル戦はニコニコ生放送で配信されるなど、ファンの方の反応に直接触れられる機会も増えました。ありがたいことです。

― 書き込まれたコメントなどを見ると、カレーにも期待されているのは……

森内ひしひしと感じますし、できる限り応えていきたいですね(笑)。あのカツカレーは、私としては特にゲンを担ごうというつもりはなかったんです。当時「カツカレーを頼んだ対局は勝つ」という結果に気づいていたら、ビーフカレーを選んだ第5局も頼んでいたかもしれません。落とした第3局で「カレーライス」を頼んだのは、その日、カツカレーがメニューになかったという理由でしたし。

― そもそも、対局時になぜカレーを注文されるのでしょう。

森内単純にカレーが好きだというのがひとつ。それとどこで食べてもはずさないという理由も大きいですね。食べるのが大変な食事はやっぱり困ります。カレーはサッと食べられるし、スパイスで脳に刺激を与えた……ような気分になりますから(笑)。

すべての「勝負」は準備で決まる ───

― 竜王戦は7番勝負(先に4勝したほうの勝利)で、1局に2日かかる長丁場です。森内さんがカレーを召し上がるのは、各局2日目のお昼ですよね。初日と2日目では食事に対するアプローチは変わりますか。

森内初日はまだ持ち時間も潤沢に残っていますし、昼食をゆっくり食べて再開時間に遅れても、大勢に影響はないんです。しかし2日目となると、勝負が佳境にさしかかり、持ち時間も減ってくる。このあたりから将棋に対する集中力がより必要になってくる。ですから、2日目の昼はシンプルなものがいいですね。

― 2日間の長丁場となると、ペース配分などはどう考えるのでしょう。

森内タイトル戦ともなると、みな百戦錬磨ですから、なかなか自分の思い通りにはなりません。序盤から根を詰めすぎると終盤に疲れが出てしまうこともあるので、勝負どころできちんと力を発揮できるようにとは、心がけていますね。そのためには食事も大切。空腹だと力が出ないこともありますから、昼はもちろんですが、朝もきちんと食べて対局に臨みます。

― 大一番の勝負に臨むとき、どんなことを心がけていますか。

森内まず、自分で「やり尽くした」と実感できるまで準備をします。将棋は先の先を読む変化のゲームですから、すべて予測し尽くして対局に臨むことはできない。それでも準備をやりきったという実感があれば、心にゆとりが出てきます。実際、準備をしっかりすれば、その分対応できる引き出しも増えます。準備ですべてが決まると言っても言い過ぎではありません。これは将棋だけじゃなくて、受験などあらゆる「勝負」に共通していることではないでしょうか。

少しずつでも前進するしかない。
すべての経験はつながっている ───

― 「いざ勝負!」の現場でできることは?

森内まず出だしでいい流れを作ること。特に私の棋風は「先行逃げ切り」なので、いかに序盤から自分の型に持ち込むかが重要です。たとえばテストでも、わかる問題から解いてテンポをつくる、自分で自分をノセていくのは大切ですよね。あとルール上、想定しうるマイナス要素を排除する。

― というと?

森内対局中に最悪なのが大事な場面でトイレに行きたくなること。将棋では最後、持ち時間がなくなると1手1分未満で指さなければならないんですが、囲碁と違ってトイレ休憩が別枠で設定されているわけではありません。ですから対局中、冷たいものをガブガブ飲むのではなく、温かい飲み物を少しずついただきます。1分将棋になったら、対局室からトイレの場所が遠くて1分で戻ってこられないと負けですから、対局前にトイレの場所は必ず確認します。まあ、1分将棋になるような対局にしないことが大切なんですが。

― タイトル戦などの大きな対局は、やはり緊張感が伴うものですよね。

森内この年になると緊張感が身体に出るということはあまりありませんが、勝負事において緊張とかプレッシャーというものはとても大事なものだと思いますし、ゼロにすることはできない。受け止めて、少しずつ経験を重ねながら進んでいくしかないんです。

― 心身ともコントロールできる部分はコントロールし、コントロールできない部分とも上手につきあっていく。

森内そうですね。事前の準備にしても、対局の前日には、ナマモノを口にしないように心がけています。99%何もないとしても、いつか残り1%を引いて体調を崩してしまうかもしれない。将棋は指した1手の先にある無限をすくい取るような競技です。その1手が次なる1手につながるように、何気ない決断がひとつの勝負の行方を左右することもあるはずです。私は運勢のようなものはあまり信じませんし、特にゲンを担ぐようなこともしません。それでも勝負事につきものの調子のバイオリズムのようなものはあると感じています。そうした波をコントロールできるなら「勝つカレー」の力だって借りますよ(笑)。

2016.9.某日 取材

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