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木炭釜10年目ものがたり Homsumigama ~A History of Ten Years~

Episode.1 炭釜との出会い

毎日の食卓に欠かせない、ごはん。そのおいしさづくりを担う炊飯器。理想のごはんを目指して進化を続ける炊飯器のうらには、炊飯器の更なる進化を信じてやまない技術者のこだわりがありました。これは、その技術者が、「本炭釜 KAMADO」にたどり着くまでの10年の物語です。炊飯器の進化とは、“ごはんを今よりもっとおいしく炊く”こと。そしてその鍵は、米のひと粒ひと粒にまで火を通す「熱の伝わり」にありました。

とはいえ、電気という熱源には限界があります。それを打ち破るためには、熱を伝える釜にこだわってみる必要がある。そう考えていた矢先、あるテレビ番組がヒントを与えてくれました。そこで紹介されていたのは、炭の鍋。沸騰中に恐ろしいほど激しく泡を発生させるその映像を見て、ハッと閃いたのです。炭で内釜をつくってみよう──!炭がもたらす気泡を米粒の間に行き渡らせることができれば、熱がすみずみにまで伝わるはずだ。

それを確かめるため、まずは炭素材の扱いに長けた業者探しから始めました。内釜開発のことは伏せ、「サッカーボールを半分に割ったような球状のものが成形できないか」と何十社にも問い合わせた末、ついにぴったりの業者に出会います。「ガス炊き用の炊飯釜をつくったことがある」という関西の町工場でした。さっそく試作釜を取り寄せ、炊飯実験をしたところ、見たことのないような「激沸騰」を確認。予想したよりはるかに多くのカニ穴が生まれ、直感が正しかったことが証明されました。

大阪府高槻市にある高級焼肉店「一寸法師」。そこは、件の工場が炭釜を卸しているお店でした。自慢の白米は、1.5合で1000円。炭釜で炊きあげ、木蓋がされたままの状態で運ばれてきます。目の前で蒸らすこと約10分。蓋を開けると豊かな香りと湯気が立ち上り、中から艶やかなお米が。口に含むとほどよい弾力があり、やがてふんわりとほぐれて甘みが広がっていきます。これだ! このおいしさをIHジャー炊飯器で実現したい──!後に「本炭釜」と呼ばれる、炭の内釜開発はこの瞬間から大きく動き出しました。

Episode.2 炭素材と向き合う

炊飯器史上初の炭釜をつくる──。そう決意したものの、そこには多くの課題が待っていました。炭を内釜として成型するためには、不純物をなくし、強度をより高める必要があります。それにはとても長い時間をかけて炭を高温焼成することが不可欠です。また炭は原価が高いうえ、プレス加工ができず成型も手作業。とても量産には向きません。

しかし開発陣は、その欠点を差し引いても余りある価値を炭釜に見出していました。炭釜の魅力。それは、他の素材とは比較にならないほどの高い発熱力と泡の発生力です。またIHの磁力線が釜に浸透する深さは約10ミリと、ステンレスの約40倍※1。釜全体が一気に発熱するため、かまどに匹敵する対流を釜内部で引き起こせるのです。※1 参考文献:ステンレス協会発行「ステンレスの初歩」、理科年表(三菱電機調べ)

炭の良さを、なんとしてでも炊飯に生かしたい。その思いから、さまざまな実験と解析、品質確保の実証を繰り返し、ようやく量産体制を確立。といっても、基本は手づくりであり、釜の完成までには多くの時間を要しました。まず炭は1250℃のガス炉で30日間の焼成を2回繰り返したのち、最高3000℃の電気炉で30日間焼成。計90日かけて円柱状に焼き締めた炭素材を手で釜の形にくり抜きます。このとき、釜底を凸型にすることでカニ穴を生む力強い泡を発生させる工夫を施しました。これも削り出しだからこそ生まれた技術とアイディアといえるでしょう。

Episode.3 初代「本炭釜」、誕生

発案から2年の歳月をかけて生まれた、純度99.9%※2 の「本炭釜」。開発には成功したものの、まだまだ困難は続きます。※2 木炭や竹炭とは異なる炭素材料(純度99.9%)を使用。

「本炭釜」は1個つくり上げるまでに約100日も要するうえ、当初は日産50個が限界。工業製品というよりむしろ“工芸品”に近く、当然コストも高くつきます。「本炭釜」の価格設定は11万5500円。最高級品でも約5万円という当時の炊飯器市場においては異例のことでした。それでも「食べてもらえば絶対売れる」という確信のもと、関係者を招いて試食会を実施。結果、「この味なら納得の価格」と販売のプロからもお墨付きをいただきました。

そうして、初代「本炭釜」が発売されたのは、2006年3月のこと。供給に限度があることをふまえ、一切の広告なしでの静かなリリースとなりました。そんな状況での発売であったにもかかわらず、その評判は口コミで広まり、半年で1万台を突破。急遽増産体制を整え、10ヶ月で2万台を超える大ヒット商品となり、数々の賞を受賞しました。その後10年にわたる「本炭釜」の歴史は、こうして幕を開けたのです。

Episode.4 「現代のかまどごはん」へ

いいものは変えない。その信念のもと基本設計を貫き続けた「本炭釜」。10年目を迎えて、これまでの特長は活かしつつ、ついにフルモデルチェンジに着手します。目指したのは、炊飯の原点である「かまどごはん」への挑戦──。

そもそも、かまどごはんのおいしさってなんだろう。そのメカニズムは?その真実を解明するために、全国のかまど炊き現場を訪ね、徹底的に調査しました。かまどごはんの特徴は、表面はかたくしっかりとした弾力があり、一方で中はやわらかくみずみずさがある、食感。そこに至るまでの釜内部温度の推移や重量変化、米の含水量などを科学的に分析し、同じ状態を再現できるよう、「本炭釜」を一から見直します。ポイントは、どれだけ火力を強化し、その熱を逃さずに炊けるか。答えは、内釜と炊飯器本体の“かたち”にありました。

大火力でも吹きこぼれを起こさず、同時に十分な沸騰を可能にするために上部に広い空間をもたせた羽釜のような内釜と、厚みのある空気層でそれを包み込む、かまど構造を実現した新形状の本体。今までとは大きくイメージの異なる新「本炭釜」の登場です。「本炭釜」は10年をかけて、さらなるおいしさの高みへとたどり着きました。それは、かまどごはんを知る人には懐かしく、知らない人には新しい感動をもたらす一膳。2015年、三菱電機は、自信を持って「現代のかまどごはん」をご家庭にお届けします。

Honsumigama A Story of Ten Years 「本炭釜」十年の軌跡

今年十年目を迎えた、三菱「本炭釜」。おいしさを追求し続け、理想のごはんといわれる「かまどごはん」についに、たどりつきました。

  • 初代「本炭釜」。おいしさにこだわった、業界初のプレミアム炊飯器誕生。
  • 特許技術“連続沸騰”で、さらにふっくらしたごはんへ。
  • 「本炭釜」小容量タイプ(3.5合炊き)誕生。
  • 業界初、釜底トリプルリングIHを採用。底面の火力を強化し加熱ムラを抑制。
  • 業界最厚10mmの内釜で、高火力の連続沸騰を強化。
  • 「本炭釜 KAMADO」の誕生。かまどごはんのおいしさを再現。

※3 2006年3月21日発売。 ※4 2015年8月現在(当社調べ) ※5 釜底中央部の暑さ。2015年8月時点(当社調べ)。

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