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かまどごはんに似た懐かしい香りと甘み(宮城県産ササニシキを試食)

宮城県登米市 米農家

木村 忠義 さん

米どころである宮城県登米市で代々農家を営む、米づくりの名人。
昔ながらの米づくりを目指し、先代の知恵を継承する一方で、三男・友優さんとともに新しい試みにも挑戦。
子どもの頃に食べていた籾殻(ぬかがら)炊きのかまどごはんが、おいしいごはんの原点。

木村さんのお米はおいしいと評判です

うれしいね。うまいササニシキづくりにはこだわってますから。でもこの土地で育ったお米は、昔からおいしいんですよ。北上川に育まれた泥炭層は稲作に向いているし、気候も温暖で雨や雪の被害も少ない。伊達の時代からずっと米どころとして知られていたんです。うちは、その頃から代々米をつくってきました。私が目指しているのは、昔ながらのササニシキの味。鮭ひと切れでもごはんを何杯もおいしく食べられるような、おかずのうまみをより引き立たせてくれる米。子どもの頃に食べたあのごはんの味を再現できるよう、早刈りや天日干しなど昔の手法を採り入れながら、米づくりに精進しています。

子どもの頃のごはんの想い出は?

やっぱり、かまどごはんだね。炊き上がりの匂いといい、おこげの香ばしさといい、ごはんが炊けるたびにわくわくしたものです。当時うちでは薪ではなく、精米時に取り除いた籾殻を使って炊いていた。籾殻は火がつきやすく、しかも最適なタイミングで沸騰して、火が収まる頃合いちょうどいい。つまり一度火をつけたら、放っておいても炊飯にぴったりの火加減になってくれるんです。米と籾殻はそういうところでも相性がいい。子どもの頃はずっとかまどを眺めていて、沸騰中に釜の蓋からぶくぶくと噴いてくる湯気や、蓋を開けたときのむせかえるような米の香りを楽しんでました。

木村さんのササニシキを「本炭釜」で炊いてみました。

ああ、懐かしい香りがするね。口に入れたときに、昔かまど炊いたごはんを食べたときのような香りが立ちのぼってきた。それに、歯ごたえはしっかりあるのに、どこかおかゆのような甘みがある。うまみもうんと増していて、昨日まで食べていた同じお米とは思えないね。炊きたてのごはんもおいしいけれど、湯気が抜けてくるとまたおいしくなるのがササニシキなんだよね。おにぎりも、冷めたほうが米が落ち着いて、さらにうまくなってますね。米が甘く炊けてるから、塩味ともよく合う。この「塩がおいしい」って感じられるのが、正しいごはんのあり方。ごはんだけが際立ってもダメなんですよ。いいごはんは、むしろおかずが食べたくなるものなんですよ。

このごはんは何と合わせたいですか?

刺身でも漬物でも、なんでも合うと思いますよ。でも究極の食べ方は、卵がけごはんかな。うちは鶏を飼っていてね、その卵を使うんだけど、私が好きなのは若い雌鳥の卵。卵自体は小さいものの、黄身が締まっていてコクがあるんですよ。この卵を器で溶いて、炊きたてのごはんにサッとかける。このとき、卵とごはんと混ぜてはいけません。そのまま一気にかきこんで、冷たい卵と熱々ごはんを口の中で絡ませて食べるのがうまいんです。でも、それには米がハッキリしてなければいけない。「本炭釜」で炊いたごはんは、粒がよく立ってるから、米と米の間に卵がすっと流れ込みやすい。いつもの卵がけごはんが、見違えるようにおいしくなるはずですよ。

卵かけごはん RECOMMEND

木村さんが考えるこのごはんの一番おいしい食べ方は?

やはり卵がけごはんですね。軽く溶いた卵を熱々のごはんにサッとかければ、湯気も引いてごはんの持ち味をより楽しめる。同じ理由で納豆ごはんとの相性も抜群だと思います。