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読む宇宙旅行

2010年1月 vol.2

惑星探査機ボイジャー 星の世界で発見

太陽圏の果てを飛行中のボイジャーと今回発見された強い磁場(黄色い線)のイメージ。(提供:2009,The American Museum of Natural History)

太陽圏の果てを飛行中のボイジャーと今回発見された強い磁場(黄色い線)のイメージ。(提供:2009,The American Museum of Natural History)

 1997年に打ち上げられたNASAの惑星探査機ボイジャー。今、どこを飛んでいるかご存じだろうか。2010年1月現在、ボイジャー1号は太陽―地球間の距離(AU:天文単位。1AUは約1億5千万Km)の約113倍、2号は約92倍の地点を飛行中。ややリードしている1号は「おーい」と信号を送って15.65時間でやっと届くほどの距離。2機のボイジャーは木星、土星、天王星、海王星を観測後も旅を続け、電力源の原子力電池が機能する2020年頃までは通信できそうだという。

 太陽から吹き出すプラズマの風が届く範囲を「太陽圏」と呼び、その外側は別の恒星の風が吹く世界、「恒星間空間」だ。太陽圏の大きさは130~150AUと考えられていて、その大きさを突き止めること、初の恒星間飛行を達成することが、現在のボイジャーの最大のミッションだ。がんばれー!

 2009年12月末、ボイジャーの新発見が英科学雑誌ネイチャーで発表された。物理学者がこれまで存在不可能だとしていた「星間雲」が、存在しうることがボイジャーの観測で明らかになったという。NASAの記事によれば、ジョージ・メイソン大学のオファー博士は「ボイジャーのデータによって、太陽系のすぐ外側に強力な磁場を発見した。この磁場によって星間雲を一つにまとめることができる。長い間謎だったパズルが解けたのだ」と語っている。

 これまでは太陽圏近くで約1億年前に起こった超新星爆発で高圧力のガスが発生し、星間雲を取り囲んで押しつぶすか散り散りにするために、星間雲は存在できないと考えられていた。だから太陽圏近くにある幅30光年の星間雲の存在は謎だった。理論的に解明された今、この星間雲に接近中のボイジャーが、どんなデータを送ってくれるか楽しみである。

今はこのイラストより更に果てに近づいている。Heliosphereが「太陽圏」で、その大きさは星間ガスで圧縮されて変化する。(提供:NASA/Walt Feimer)

今はこのイラストより更に果てに近づいている。Heliosphereが「太陽圏」で、その大きさは星間ガスで圧縮されて変化する。(提供:NASA/Walt Feimer)

 それにしても、人類が作った人工物体がふるさと太陽圏を超えて恒星の旅に出ようとし、新事実を知らせてくれるとは刺激的な時代になったものだ。今回の「星間雲」についての発見は他にも同様の星間雲の存在を示唆し、太陽圏が今後そのような星間雲に突入する可能性があることを意味する。これが意外に私たちに影響をもたらすかもしれない。

 太陽圏は、太陽風で内側から膨らむと同時に恒星間ガスに押されて圧縮し、その大きさは変化し磁場の影響を受けている。太陽圏が星間雲に突入すると更に圧縮が進み、宇宙線が太陽系内に届いて天候や、宇宙を旅する宇宙飛行士の健康に影響を与えるかもしれないのだ。もっとも恒星間宇宙までの距離が近くなるから、宇宙旅行の時間は短くなるかもしれない、とNASAの記事に書かれている。ただし数十万年後のお話。その頃、人類はどこまで到達しているのだろうか。