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読む宇宙旅行

2011年6月 vol.01

古川さん ようやくバッターボックスに。宇宙滞在開始。

2011年6月8日、バイコヌール宇宙基地のガガーリン発射台から打ち上げられたソユーズロケット(JAXA/NASA/Carla Cioffi)

2011年6月8日、バイコヌール宇宙基地のガガーリン発射台から打ち上げられたソユーズロケット(JAXA/NASA/Carla Cioffi)

 2011年6月8日5時12分(日本時間)、古川聡宇宙飛行士がカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。約2日後の6月10日に国際宇宙ステーション(ISS)にドッキング、10時34分にISSに入室した。47歳。初飛行の年齢としてはJAXA宇宙飛行士の中で最高齢。12年粘り続けてようやく宇宙にたどり着いた!

 モスクワ郊外コロリョフにあるツープ管制センターでは古川さんのご家族らがドッキングの様子を見守った。宇宙と地上との会話は昔懐かしい固定電話で行うのがロシア流。奥様の言葉が素敵だった。「やっとバッターボックスに立ちましたね。ホームランは必要ないのでチームワークで塁を進めてホームに戻ってきて下さい」。野球少年だった古川さんにぴったりの言葉だ。古川さん心境を語るとき常々野球を例に出す。飛行に任命されたときは「ずっとベンチ裏で素振りをしていたが、ようやくレギュラーの背番号をもらえた気持ち」。任命後の訓練中も「練習の中で課題を見つけて、試合当日にベストのポジションにしたい」と話していた。

管制センターで宇宙飛行士と話すときの電話。ダイヤルはない。なかなか可愛い(2007年に撮影)

管制センターで宇宙飛行士と話すときの電話。ダイヤルはない。なかなか可愛い(2007年に撮影)

 ISS滞在中の医学実験については前回書いたので、今回は別の見どころを少し。ガガーリンの宇宙飛行から半世紀の節目となる今年、二つの宇宙船の交代劇が見られるかもしれない。まずスペースシャトル・アトランティス号のドッキングが7月初旬に予定されている。1981年から30年間にわたって宇宙に大量の人間を送り続けてきたシャトルの最後となる歴史的な宇宙飛行は、大きな注目を集めるはずだ。

 そしてシャトルと入れ替わるのがスペースX社が開発中のドラゴン。11月にISSとの初ドッキングを目指しており、古川さんたち宇宙飛行士は訓練も行っている。無人貨物船のドラゴンは日本の貨物船「こうのとり」と同様に、宇宙飛行士がロボットアームで捕獲する。「『こうのとり』は捕獲前、ISSからみてぴたっと静止し、高い技術力を見せましたが『ドラゴン』は少しゆれるんじゃないかと皆で話してます」と古川さんは2月の記者会見で本音を話してくれた。古川さんの滞在中に間に合うかどうかギリギリのところだが要注目だ。

ISSに入る古川聡宇宙飛行士(JAXA/NASA)

ISSに入る古川聡宇宙飛行士(JAXA/NASA)

 滞在中のイベントで医師の古川さんらしく目新しいのが、お年寄りとの交信イベント。JAXA宇宙ステーション広報担当の松尾尚子さんによると、今、転倒防止予防などのご当地体操(牛久のかっぱ体操などが有名)を行っている地方自治体などの団体が全国にけっこうあるらしい。宇宙から地上に帰還した宇宙飛行士も筋力が衰えるため、転倒しないために訓練する。宇宙飛行士の健康管理を高齢者の健康増進に役立ててもらえるのではないかと、関心の高い高齢者の団体を募集し宇宙の古川飛行士との対話などを行う。これまで宇宙との交信イベントは子供達が主役だったが、お年寄りがどんな反応を見せてくれるか期待したい。

 古川さんの野球でのポジションは主にキャッチャー。「全体を見て指示を出しなさいと強く教えられてきた」そう。どっしりと構えつつ、待ち望んだ宇宙でのプレイを楽しんで欲しい。