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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.121

早朝の部分月食を眺めてみよう

今年は天文現象がやや少なめで、いささか寂しい状態が続いているが、夏休みに合わせるように、久しぶりにちょっと大きなイベントが起こる。8月8日の早朝の部分月食である。

今回の部分月食での地球の影に対する月の動き。(提供:国立天文台)

月食は、地球の影が月に落ちる現象だ。地球の影には本影と半影とがある。本影は太陽が完全に隠された領域で、半影は太陽の一部が地球で隠されている領域である。月の距離では、地球の本影は月の直径より大きいのでタイミングによっては月全体を隠してしまうこともある。この場合は皆既月食となるのだが、今回は、図のように地球の本影が月全体を隠すことはない。月の一部をかすめるように地球の本影が通り過ぎるのである。これによって月の一部だけが欠けたように見える状態となる。部分的に欠けるので、部分月食というわけである。今回は、最大で月の直径の4分の1ほどが欠けることになる。それほど深い部分月食ではない。それでも、日本全国で観察することができるので、ぜひ眺めて欲しい。

東京での部分月食の経過。(提供:国立天文台)

ただ、月食が起こる時間帯を考えると、必ずしも見やすいとは言えない。なにしろ、月食の開始は午前2時22分、終了が午前4時19分。すでに深夜と言うよりも早朝といった方が適切な時間帯だ。それでも、やはり一見の価値はあるだろう。真夏の満月は高度が低い。そのせいで満月そのものが色がついて見えたりするからだ。赤い色の月が欠けるというのは、冬の月食ではなかなか見られない。月食開始時には、すでに南西に傾き始めた月の高度は東京では30度を切っている。そして、次第に高度を下げながら、どんどん欠けていく。最も大きく欠けるのは午前3時21分である。その後、月は西南西の地平線に向かって下がり続けながら、欠けた部分が次第に小さくなっていき、午前4時19分に元の丸い満月に戻る。もともと夏の満月は高度が低い。東京では、最大に欠けた時でも、地平線からの高度は20度を切っており、終了時刻には、満月の地平線からの高度は10度を切っている。その意味では、かなり低い満月、そしておそらく赤みがかった色の部分月食となるだろう。

月の高度は、日本では南西に行くほど高くなる。また、夜明けも遅いので、空がまだ暗いうちに部分月食の観察ができる。ところが、北東の地域ほど月の高さは低くなり、また夜明けも早くなる。例えば、北海道では、最大に欠ける頃には空が明るくなってしまい、月食が終わると間もなく日の出を迎えてしまう。

こういった地平線に近い月食だと、天体写真を撮影する人にとっては別の楽しみもある。地上風景と一緒に写しこむことができるからだ。関東の特定の地域から眺めると、欠けた月と富士山が一緒に撮影できるかもしれない。あるいはスカイツリーや東京タワーといったランドマークを狙ってもいいだろう。地方によっては、ターゲットになる山やランドマークも違ってくると思うが、通常の満ち欠けと異なる月と一緒に写しこむのは面白い挑戦になるだろう。平日ではあるが、夏休みと言うこともあるので、ぜひ工夫しながら楽しんで欲しい。