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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.123

環が大きく開いた土星を眺めよう

9月15日は、土星に注目が集まった。以前にも紹介したが、土星探査機カッシーニが最終ミッションであるグランド・フィナーレを終え、土星本体に突入して役目を終えたからである。打ち上げから20年もの歳月、活躍し続けて、様々な発見を届けてくれた探査機に対し、一研究者としても、一天文ファンとしても感謝の気持ちを込めて、心の中で見送った。読者の中にも、同様の感慨を持たれた方も多かったのではないだろうか。

その土星、実はいま最も見頃といってもよいかもしれない。なにしろ土星の最大の”売り”である、環が大きく開いているからである。土星の環は、土星本体の赤道面に沿って広がっている。一方、土星の自転軸は、その軌道面に対して26.7度ほど傾いている。その傾きを保ったまま、太陽を周回するので、ある時には太陽に対して環が水平になったり、ある時には大きく傾いたりするわけである。地球は土星から見ると、ほとんど太陽方向に見えるので、逆に言えば地球から見て土星の環の傾きは徐々に変化していき、やはり水平になってほとんど見えなくなったり、大きく開いて迫力のある姿になったりを繰り返すわけである。土星の軌道周期は、29年半なので、その半分である約15年弱ごとに、環が大きく、開いて見える時期がある。計算では10月17日、日本時間で02時57分に最大となる。傾きはほぼ27度に達するのだ。もちろん、これは数値的なもので、この日だけ特別というわけでは無い。前後1年ほどは、環の傾き加減は見た目ではそれほど変化はわからないので、来年の夏でもまだ楽しめるだろう。大きく傾くと言うことは、環の縦(南北)の幅が広がると言うことで、その短径は16秒角を超える。今回は土星の北極側が地球を向いているのだが、その北極の上に、環の向こう側の一部がはみ出して見えるほどである。ちなみに天体望遠鏡で眺められる環の長径は約36秒角である。

土星探査機カッシーニが撮影した、環が大きく開いた土星。(提供:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

環が大きく開くのもそうだが、逆に環が水平になって消えたように見える時期も約15年ごとにしか起こらない。環は本体に対して非常に大きく広がっているが、その厚さは数百から数十mと極端に薄い。やはり地球は約15年弱毎に環を真横から見る事になって、地球からはほとんど見えなくなってしまう。土星までは13億kmも離れているので、数百mの厚さというのは、限りなく無限小に近い。これを地上でたとえてみると、ちょうど東京都心から100kmほど離れた富士山頂の0.1mmの紙よりも薄いことになる。これでは、どんなにいい望遠鏡を使ってもよく見えるはずはない。大望遠鏡でも、本当に環が消えたように見えるのだ。その前後に眺めると、なんだか土星が串刺しの団子のように見えてユニークではある。1996年前後に環が消えたように見え、その後、2002年頃には、土星の南極側が大きく傾いて、環が開いて見えた。その後、2009年から2010年にかけて、やはり環は水平となり、今回は北極側が大きく傾き、環が開いて見えているわけである。そう思うと、今回もなかなか貴重な機会である。

土星は、日没後、南西の夜空に約0等級で輝いている。都会でも肉眼で簡単に見つけるはずなのだが、なにしろ夏の星座である、へびつかい座にあるので、数時間もたたないうちに沈んでしまう。そのため空が暗くなったら早めに観察したい。また、環を眺めるには、ある程度の天体望遠鏡が必要となるので、望遠鏡を持っていない人は科学館などの観察会に参加したりして、今シーズンは、ぜひとも眺めておいて欲しい。