DSPACE

DSPACEメニュー

星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.128

銀河系外にも惑星はある

これまで系外惑星が発見されたと言えば、我々太陽がある銀河系の中、それもせいぜい数千光年から1万光年の範囲であった。最近では検出された系外惑星の数が数千個にも上っているので、なんだか簡単に見つかるような雰囲気があるが、けっしてそうではない。なにしろ、恒星と惑星の明るさの差はあまりにも大きい。喩えるなら、富士山頂に強力なライトを点灯させ、そのまわりをまわっているショウジョウバエを東京から捉えるような困難さである。(ちゃんと計算すると、もっと遠いのだが)したがって、そういった小さな天体の兆候を捉えるのは近ければ近いほど有利である。ところが、桁違いの遠方で系外惑星に相当する質量の天体が存在することが、この2月にアメリカ・オクラホマ大学の研究チームが発表した。その距離はなんと38億光年彼方の銀河。従来の方法ではありえない検出である。といっても、実際にひとつひとつの系外惑星が見つかったわけではない。

約2000個の惑星が検出された銀河(中央)と、その重力の影響で四つあるように見えるクエーサー像(重力レンズ)(提供:アメリカ・オクラホマ大学)

この銀河は南天のコップ座にあるのだが、実は、同じ方向、約61億光年の彼方にクエーサーと呼ばれる銀河が並んでいる。クエーサーは銀河と言っても、その中心核が極めて明るく輝いているもので、発見当時は準恒星状天体と呼ばれていたものである。その中心核には巨大なブラックホールがあって、周りの物質を吸い込みつつ様々な現象を起こしていて点状に輝いている。しかし、地球とこのクエーサーRXJ 1131–1231 との間に、ちょうど銀河が並んでいるため、銀河の重力によってクエーサーの光が曲げられ、その像がリング状となって、銀河を取り囲んで見えている。いわゆる重力レンズ現象である。そのリングも一様ではない。手前の銀河が恒星のように点源なら対称になるはずだが、リングの途中に明るい部分が4つほど塊になって見えている。こうした形状から、銀河の中の質量分布が一様ではないことがわかる。ちなみに銀河系の中では、恒星が起こす重力レンズ現象を用いて、(形ではなく、この場合は時間変化なのだが)非対称を示すことから、多くの系外惑星が発見されている。

彼らは、この重力レンズ現象に注目した。非対称性や、あるいは光の微妙な波長のずれなどがあれば、なにかわかるはずだと考え、X線観測衛星のデータに現れるX線の波長の微妙な差が、こうした惑星クラスの天体によるものと考えたのである。彼らのモデルによれば、月から木星ぐらいまでの重さの惑星が少なくとも約2000個あるという。しかも、それらは太陽のような恒星のまわりではなく、恒星間に存在しているという。つまり浮遊惑星である。我々の銀河系でも、こうした天体は存在しているが、銀河系の外の銀河でこうした惑星クラスの質量を持つ天体の存在が示唆されたのははじめてである。もちろん、銀河系で存在するのだから、他の銀河でもあるはず、というのは容易に想像できるのだが、それを実際に証明するのは別問題だ。

重力によって光が曲げられたりする現象は距離に依存しない。そのため、この方法は他のクエーサーや銀河の重力レンズ現象にも適用できる可能性がある。もしかすると、このような方法で、続々と他の銀河の惑星クラスの天体が検出されていけば、銀河の種類で惑星の多寡があるか、など極めて新しい学問につながる可能性もある。斬新な成果である事は間違いない。