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星空の散歩道

2011年2月28日 vol.63

系外惑星の大量発見時代へ

想像図:ケプラー宇宙望遠鏡によって恒星「ケプラー11」の 周りに6つの惑星が発見された。(提供:NASA/Tim Pyle)

想像図:ケプラー宇宙望遠鏡によって恒星「ケプラー11」の 周りに6つの惑星が発見された。(提供:NASA/Tim Pyle)

 2月はじめ、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、ケプラー宇宙望遠鏡によって発見された、系外惑星の新しい候補天体が1200個を超えることを明らかにした。木星のような大型の惑星だけでなく、地球のようなサイズの惑星も300個近く見つかった。また、同じ恒星のまわりに、6つもの惑星が巡っている惑星系も発見された。まさに人類は系外惑星の大量発見時代に突入したのである。

 太陽以外の恒星の周りに、太陽系と同じように惑星があるはずだ、と天文学者は皆、かなり以前から思っていたが、その発見は極めて困難と思われていた。星はなにしろ、遠い。しかも惑星は恒星に比べて小さく、また自らは輝かずに、星の光を反射しているだけである。その光の量の差は太陽系の場合、一千万倍以上にも上る。精度のよい天体望遠鏡で眺めても、恒星の光がまぶしくて、惑星のかすかな光はかき消されてしまうことは容易に想像できる。例えば、富士山の山頂に500Wの電球を灯したとしよう。この電球の明かりは、東京都心からでも、ある程度の天体望遠鏡を使えば見ることができる。しかし、惑星は、いってみれば電球の周りを飛んでいる蚊のようなものである。さすがにどんなに精度の良い大きな望遠鏡でも、富士山頂の蚊は見えない。

 そんな困難な系外惑星の発見が報じられたのは1995年のことだった。木星のような惑星が、ペガスス座51番星のまわりを周回していることがわかった。どうしてわかったのか。もちろん、直接見たわけではない。実は電球と蚊の場合とは異なり、惑星が恒星の周りを周回すると、その惑星の重力によって、恒星の方もごく僅かに揺れ動く。恒星の光は明るいので、そのわずかな揺れ動きを捉えることができる。これによって、間接的に恒星のまわりに惑星があることがわかる。

 これは二つの意味で衝撃的な発見だった。ひとつは既存のテクノロジーで惑星発見が可能であることを示したこと。もうひとつは、発見された木星のような巨大な惑星が、太陽系で言えば水星の軌道のずっと内側を、周期わずか4.2日の周期で公転していたことである。惑星と言えば、太陽系のように小さな惑星が内側に、巨大な惑星が外側にある、という偏見はもろくも崩れ去ったのだ。実際、他の研究グループが、それまでのデータを解析したところ、同じような惑星が続々と発見された。偏見によって、みすみす発見を見逃していた、といえるだろう。

 いずれにしろ、この方法で次第に発見される惑星は増えていく。そして21世紀 になると、この方法以外でも、系外惑星が発見されるようになる。星の前を惑星 が横切るときに、わずかに星の明るさが減る「トランジット」と呼ばれる現象を利用する方法である。こちらはわかりやすいかもしれない。富士山頂にある500Wの電球の前を、蚊が横切れば、その蚊の面積分、光が遮られる。もちろん、これもごく僅かな量だ。しかし、もし惑星の軌道が恒星の前を横切るという条件にあるものを、精度良く星の光の強さを監視していれば、いつかは起こるはずである。たくさんの星を精度良く監視すれば、こういった条件の系外惑星は発見できる。そして、このトランジットには大きなメリットがある。地球型のような小さな惑星は、重力が弱いので前者の方法での検出は困難だが、トランジットなら精度次第で検出が可能なのである。

 精度良く、たくさんの星を監視し、系外惑星を発見しよう。そのために2009年に宇宙に打ち上げられたのが、ケプラー宇宙望遠鏡である。その目は225万画素のCCD、実に42個。合計9500万画素のCCDカメラが、はくちょう座からこと座にまたがる領域の10万個以上の恒星をじっと見つめ続けている。そして、今回のニュースにつながったわけだ。

 ニュースが流れる前までの系外惑星の発見数は500個ほどだった。15年かけて500個のペースだったわけだ。それが、今回のケプラーの活躍によって、一挙に1700個となった。まさに系外惑星大量発見の時代に入ったと言えるだろう。なかでも、地球サイズの惑星は288個。そのうち恒星からの距離が適切で、その表面に液体の水が存在できる可能性があるものが、5つも発見されている。その意味では、地球外生命の発見にも確実に近づいている、といえるだろう。実にわくわくする時代である。